2.姫と姫
テント跡を出発してから早1時間。目の前には村があった。
「……ありがとうございます」
食料を調達し、次の村へと向かう。
「……意外に困っている人がいないのね……」
「まさかここまでいないとは……確かにフリージス公国は大陸内で最も幸せな国と言われていますが……」
だがないものを求めてもらちが明かない。ソラリノたちは諦めて首都を目指すことにした。
「着きました。ここが、フリージス公国首都、フレトリアです」
国を追放されてから5日後、やっと首都に着いた。
「なんだか明るい感じの都ね」
「あそこに見える金色の屋根の建物が王宮です。大公殿下はそこにいらっしゃるのでしょう」
イーダリートは馬車の中で地図を広げる。
「さすがにすぐに謁見はできないでしょうから、今日はこの宿に泊まりましょう。謁見の許可は星巫女の権威でなんとかなります」
「じゃあ、謁見は明日になるかしら……」
その日は久しぶりに入浴し、ふかふかのベッドで眠れた。
「おはようございます。朝食はもう準備してあります」
「おはよ〜、白のお姉ちゃん♪」
「ソラリノよ。これからはそう呼んでね」
朝食をとりながら、今日のスケジュールを確認する。
「今日は大公殿下に謁見するのよね?許可が取れたらだけど」
「多分ですが、許可はすぐ降りるかと。星巫女はシンファタリア王国の有力者ですから」
支度を整えたあと、馬車に乗って宮殿へと向かった。
「こちらでお待ち下さい」
通されたのは大広間。
「ほんとに顔パスで通れた……」
「だから言ったでしょう?」
「星の目の力ってすごいんだね〜!衛士の人たちソラリノを見ただけで門を開けたもん」
「いささか不用心だと思うけど、これもこの国の特性ってことね」
しばらくすると王宮の衛士が現れ、準備ができたことを伝えに来た。
「行きましょうか」
大広間の更に奥に謁見のための部屋があった。
「お初にお目にかかります。シンファタリア王国より参った、ソラリノ=エアルーシェと申します」
「ソラリノの護衛、イーダリート=スジェヌにございます」
「面をお上げなさい」
頭を上げると、玉座の上にいたのは厳つい顔の大公、ではなく愛らしい顔立ちの少女だった。
(え……?大公殿下なの…?この子が?)
「ふふ、驚かれましたか?……勘違いなさらないでください。わたしはただの代理です。大公は諸事情あり皆様の前に姿を表すことができない旨、お詫びします」
玉座の少女が席を立って礼をする。
「いえ、わたしたちも気にしてはおりませんから。大丈夫です」
少女はほっとした表情で玉座に座る。
「申し遅れましたね。わたし、フリージス公国大公代理、ミアリナ=フトゥルオフと申します」
イーダリートが何かを言おうとしたが、口を噤む。ミアリナは少し訝しんだが、言葉を続けた。
「これはわたしの個人的な疑問なのですが、あなたがたがここに来た理由は、何なのですか?」
ミアリナはわざとらしく聞く。まるでこちらが"お願い"することを見越しているかのようだ。
「それは……」
素直に答えていいか分からず、一瞬だけイーダリートを見る。
彼が頷いたのを確認し、話の続きを始める。
「ミアリナ様もご存知でしょうが、我が母国、シンファタリア王国では革命が勃発し、わたしはこの国へと亡命いたしました」
「それが謁見を望んだこととなんの関係があるのですか?」
「単刀直入に申し上げます。母国でのほとぼりが冷めるまでの間、わたしたちをこの国に内密に留め置いてくださらないでしょうか?」
ソラリノはミアリナを真っすぐ見据える。それに負けじとミアリナも見つめ返す。
「………分かりました。受け入れましょう」
(こ、怖かった……)
「ですが、条件があります。現在北東部では不穏な動きがあり、反乱の兆しが見えています。ですので、ソラリノ様にはその阻止をお願いいたしますわ。勿論、その間の衣食住と御身の安全は確保いたします。」
どうやら、反乱の阻止が初めての「人助け」となるようだ。
(やってやろうじゃない……!)
「ええ、お受けいたします。必ず阻止してみせましょう」
そうして、初めての謁見は終わった。
宿屋に戻ったソラリノ達は夕食をとっている。
「イーダリート、なにか分かった?」
「はい、どうやら北東部というのは昔から大公に反抗的だったようで、現在はその傾向がさらに強くなっているようです」
「そう。ありがとう」
イーダリートは一礼して部屋を出ていった。
「ふふ。どうしたの?ミミ」
机の足を伝って登ってきたミミを抱えて撫でる。
「ねえ、ほんとにできるの?人の心、信条っていうのはそう簡単に変わらないものだよ」
「そう。それが問題なのよ。何を考えているかなんてわたしの魔法をもってしても分からないの」
ミミはソラリノの手をはねのけながら、純粋な子供のように問いかける。
「じゃあ、なんで話を受けたのさ。めんどくさいことならやらなくていいのに」
一瞬だけ、ソラリノの目に戸惑いが浮かんだ。それでも気丈に続ける。
「それが、必要だからよ。やるしかないの。どれだけ難しくて不可能に見えることでもね」
ミミはソラリノから飛び降りて自分のベッドに潜る。
(不可能なことでもやるの……?やっぱり人間の考えることはわからないな。ソラリノも、あいつも)
いつの間にか、ミミは寝息をたてていた。
ソラリノたちが寝泊まりしている宿に公国の馬車が停まった。
御者がうやうやしくお辞儀して、ドアを開ける。
「どうぞ、星巫女様。お付きの方もこちらに」
ソラリノたちが馬車に乗り込んだのを見て、御者がドアを閉める。しばらくすると馬車が動き出した。
「御者の話ですと、まずは街外れにある離宮に向かうということです……って、聞いているのですか?ソラリノ様?」
「ああ、ごめんなさい。少し、外の様子が気になっていただけよ」
ソラリノは窓に寄りかかっていた姿勢を正して、イーダリートのほうに向き直る。
「まあ、何も起こらないといいけどね……」
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ミアリナちゃん初登場です。以下は本文に入らなかったミアリナちゃんの設定です(作者の自己満足です、すみません)
•めちゃくちゃ長い金髪(足首くらい)
•身長145cm
•一応20歳
•黄色が好き
•聡明