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第十八話 白い朝

 ホワイトベティは一般市民八名を拷問の末に殺害。商業施設を氷漬けにして百三十人を虐殺。観光名所だった湖を氷漬けにして自然環境を滅茶苦茶にしたなどなど。判明しているだけでもこれだけの罪を犯し、さらに今は国際的なテロ組織【マタンブラン】の幹部として所属している。


 そんな奴がこんなところに、どうして……。


「ここは任せるぞ、ベティ」

「うんうん、さっさと行っていいよ~」


 ホワイトベティ以外の謎のテロリストは一斉に闘技場中に散らばって行った。


「っ、待て!」

「待ってよ~っ、君はウチと遊んでよ~ん」


 追おうとしたが、ホワイトベティに遮られた。


 闘技場のあちこちから悲鳴が上がり、一気に混乱状態になっている。幸いにもテロリストは観客にはほとんど目もくれず、一部の標的だけを狙っている様だった。


 しかしここは士官学校でまだ卒業していないとは言っても訓練兵がおり、実際に戦場を経験した教官もいる。対処は出来ている様だ。



 落ち着け。状況を把握しろ。


 マリー母様とサラも来ているが、ディアス父様がいる限りは大丈夫だ。かつては【戦鬼】と呼ばれて恐れられた剣豪だ。テロリストなんかに遅れは取らない。


 皇帝陛下の方は、王国最強の剣士である騎士団長が守護に付いている。だがほとんどのテロリストが向かった様で、五十人以上に囲まれていた。


 皇帝陛下以外にも皇后様と王女様もいる様だ。流石に帝国最強の剣士でも荷が重いかと思ったが、視界の隅にアレックス先輩とヴィクター先輩が走って行ったのが見えた。スタン先輩も“俊嵐鎧”を纏って飛んで行ったから、多分大丈夫だろう。


 俺は一度、深い溜息を吐いた後に、半身を氷漬けにされたベルウェスト兄様を、炎で溶かして動けるようにした。


(ファイア)――――、ベッカム!」

「え? おおっ!?」

「頼むぞ!」

「お、おう! 任せろ!」


 ちょうど良く、最前列にいたベッカムにベルウェスト兄様を預け、俺は落ちていた深蒼剣を拾って構えた。


「待ってくれたんだな。ありがとう」

「いいよ~っ! だって、どうせなら万全の君を喰いたいからねェ!」


 どういうわけか、剣すら持っていなかった俺を前にしても、ホワイトベティは動こうとしなかった。様子を伺いながらベルウェスト兄様を逃がしたが、その狂気染みた笑みが不気味だ。


「悪いけど俺彼女いるんだよ」

「ふふっ。私、寝取り趣味なんだ~」

「テロリストな上に変態かよ。救い様が無いな」


 俺は深蒼剣を握り、駆け出した。


 ホワイトベティもまた応戦する様に、氷の剣を握って接近戦が始まった。




 一方その頃、騎士団長ブラントは背中に皇帝と王妃、さらに王女までも護りながら五十人を超える刺客を相手に立ち回っていた。


「我も戦うぞ!」

「いいえ、その場で頭を低く!」


 光魔法の使い手であり、若かりし日々は【銀獅子】と呼ばれた皇帝が立ち上がろうとするが、ブラントはじっとしていてくれと言う。


 このたった数分の間で三人程を斬ったが、手応えから言えば刺客の一人一人が強かった。


 皇帝陛下が戦っても通用はするだろうが、連携が取れないのであれば、隙を突かれて王妃か王女が殺されるだろう。


 このまま耐え忍んでもいつかは限界が来て、対抗手段を持たない王妃や王女が倒れてしまうだろう。


 八方塞がりだ。


 仕方なしに【切り札】を切ろうとした時だった。


「“光剣(ブレイバー)”!」

「“一刀 刺突十閃(しとつじっせん)”!」


 ほぼ同時に、二人が舞い降りた。


 一方は輝き剣で敵を切り裂き、もう一方は十の刺突で容赦無く敵を屠る。


 まるで皇帝陛下と王妃様を思わせる、金髪と銀髪の青年だ。


「ヴィクター殿下、それにアレックス君だったな」

「父上、母上にクリスも大丈夫か?」

「他所は人手が足りていたので、皇帝陛下の護衛を手伝います」


 素直に助かった。


 そして切り札を使いそうになるまで追い詰められていただけに、援護が来た事に安心し、油断してしまった。


 刺客はまだ増える。


 三人の刺客が空から皇帝陛下達を狙ったのだ。


「しまっ」そう口に出しかけた。その時だ。


 ――――風が吹いた。


 いや、それは風なんて生易しいものでは無い。


 暴虐を振るう、嵐だ。


「“風魔流 三の太刀 乱風斬刃”!」


 荒れ狂う斬撃の嵐は空から来た刺客を斬り捨て、その場に着地した。


「助太刀するぜ」


 これで四人。それぞれが皇帝陛下達を囲う様に、四方に立った。


「助かるぞ、若者」


 吹き掛けていた笛を懐に入れ、ブラントもまた剣を握り直し、盾を構えた。


「皆、眼前の敵を討ち倒し、皇帝陛下を護りとおす事だけを考えよ! 死守だ!」

「「「応!」」」


 もう一つの闘いが始まった。



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