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最終話

 クラスの阿鼻叫喚とともに、ボクは教卓から引きずり降ろされ、きつい叱責を受け、クラス全員から白い目で見られながら授業を受けた。


 愛泉手あいみては目も合わせてくれなかった。


 それでもボクの中に後悔はなかった。


 これでよかったんだ。

 辛い思いをするのはボク一人で十分だ。

 平和への願いのために、我が身を犠牲にしたことを誇らしく思った。


 愛泉手の裸はというと、一旦保留ということになった。


 理性的に話し合った所で、実際問題目の当たりにすると、やはり中学生にはあらゆる意味で刺激が強すぎるということが判明したからだ。


 これでいい。そうこれでよかった。


 ボクの行動は、今、クラスのみんなには理解されないだろう。


 しかしやがて時がたち、それぞれの人生でふとした拍子に思い出すはずだ。


 英雄はいつだって歴史の中で最も輝くのだ。


 授業が終わって、教室内が喧騒に包まれる。


 降り注ぐ、敵意というよりも殺意のこもった視線に耐え切れず、ボクは用もないのに廊下に出た。


 すると、ボクの袖がか弱く引っ張られた。


 振り向くと、そこには女子生徒がいた。


 彼女もまた、愛泉手のように引っ込み思案で恥ずかしがり屋な女子だった。


 明らかにボクに用がある感じなのに、俯いたまま何も言わない。

 ただ、ボクの袖をギュッと握り、耳を赤くしていた。


「どうした?」

「あの……鯉須町こいすちょうくん……良かったです」


 荘厳な鐘の音が頭の中で響いた。


 我が世の春、到来である。

 やはり見ている人は見ている。

 きっと誰かに通じるとは思っていた。


 女子生徒はボクの耳に口を寄せる。


「それで、あの……私も……夢があって。協力して欲しくて……」

「わかった。よくボクに打ち明けてくれた。力になろう。一体、どんな夢なの?」


 ボクはにこやかな笑顔でそう尋ねると女子は顔を上げた。


 笑顔だった。


 上を弧にした三日月のような目で、口の端を上げて言った。


「私……人が死ぬところが見たいの」



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