第21話
なんとかHR内で決着を付けたかったが、結論は出せなそうだ。
しかし、このまま終わっていいわけがない。
幸い、二時間目は荒史先生の国語だ。
教卓の端で椅子に座って話を見守っていた荒史先生に目配せをすると、「なに?」とでも言いたそうなそっけない視線が帰ってきた。
いい先生であるのだけど、公私混同をしない厳しい先生でもあるので無理かもしれない。
ボクは山菓に挙手をして教卓の前に立った。
ざわつく教室内を見守る。
なにか言いたそうにしているのを感じたのか、やがて教室内は静かになり、ボクに注目した。
「最後に、もう一度先生の言ったことを思い出してくれ。ボクらはもうこの学級会を開く前には戻れない。知らなかったでは済まされない。パンドラの箱を開けてしまったんだ。誰も傷つかない方法があればいい、でもそんな方法はあるのか? だったら、たとえ傷ついたとしても立ち上がれる強さを求めた、人の幸せを求めた結論に手を伸ばしてはダメなのか? 残念ながら結論は出なかった。だけど、ボクはこんな中途半端なままで終わりにしたくない」
教室内のほとんどが、ボクに賛同するように頷いたが、それでも結構な数の生徒は顔をしかめて明らかに嫌そうな雰囲気を出す。
はじめからこの話し合いに乗り気じゃなく、面倒くさいことやってるなぁくらいの気持ちでいた生徒はいたわけで、その生徒にしてみれば、「やっと終わりかと思ったらまだ延長する気かよ」くらいうんざりしてるのだろう。
ボクの隣に担任の荒史先生が教壇に立つ。
「HRの時間はもう終わりです。どうします?」
教室内に反対の声が上がる。
「二時間目が私の時間だからって、ちゃっかり延長できると思ってるんじゃないでしょうね、そんなに甘くないよ。授業をきちんとやるのが私の役割です。ただし、教育という点において、このまま終わらせるわけにはいきませんね。だから最初の10分だけ延長します。決を採ってそれで決めましょう。休み時間の間に各自考えをまとめておくように」
先生がそう言い終わったのと同時に一時間目のHR終了のチャイムが鳴った。