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輪廻を廻すソウルハーベスター  作者: ピュアラルラビット
灰竜と精霊
7/11

死の一歩目





「あと三体…」



オオカミに囲まれたが苦戦することはなかった、何故なら一体一体の力も弱く素早くもなくカケラも連携が無かったのが理由だろう。



飛びかかってくるぐらいしか攻撃のパターンが無かった、飛びかかって来たなら大鎌の鈎柄の部分で首にタイミングを合わせて振り抜けば手応えは感じなかったが吹き飛び、しばらく痙攣したのち動かなくなり。



二体目と三体目は合わせた様には感じなかったが同時にかかってきて一匹は刃の部分で袈裟がけに切りもう一匹は間合いに入られてたのでオオカミを手放し素手で締め殺した。

そして残りの三匹も頭に超重量の大鎌を叩きつけたり切ったり吹き飛ばしたりして難なく倒せた。



「…………ふぅ」



オオカミを殺し終わり肺の中の空気を吐きながら残心を解きまた大樹に向かおうとするが、そこで視界の端に映る吹き飛ばされ木の幹に頭を打ち絶命したオオカミの死骸の元からパックリと開いていた腹部からキラリと輝くものを捉えた。



「……?なんだ」



興味と期待が心の渦中に渦巻くのを感じながら近寄ってオオカミの腹部を弄ると小さな、本当に小さな暗闇の中でも僅かに光を反射している結晶を取り出すと、それを観察してしまっていた。



(……少しだけなら…)



興味を持つのはいい、だがそれが許されるのは完璧に危機を脱し安全を確保できた場合のみでありここは安全では無い、つまりこの危機管理が出来ていない行為は死を近づける。



(月光がさしてきた)



結晶を見つめたまま立ち上がり月の光に翳そうとした時それは現れる。

決断を曲げた罰なのかはたまた偶然なのかも分からない、ただ巨大な蜂に今この時また出会い隙を見せてしまった、それだけで死の予感が脳裏を掠める。



「っ…」



完全に観察していたせいで警戒をしていなかった時の、いきなりの敵の出現で思考は止まる、巨大蜂が此方が気づいたことに気づき素早く行動に出る、六本の足で抱えている先程と同じような個体の、既に虫の息のオオカミを放り投げてくる。



「くぅっ!」



反射的に大鎌の側面を縦にしながらの回避行動をするが突然、オオカミが膨張したと認識した瞬間にオオカミが爆発しフードもマスクも外していた為に、その赤黒い色をしている液体をもろに被ってしまう。



顔にその液体が触れると途端に肌が泡立ち水蒸気が発生、反射的に瞼を閉じていた為眼球は無事だが顔にかかった液体を拭おうと手で拭う。



まだ残留している液体に触れたので手も溶け始めるが、溶け落ちた顔の皮膚の下にあった筋肉を直接乱暴拭っている為生じている激痛に比べれば無視できるレベルだ。



だが激痛に悶えている場合では無いことに気付く、脳内にフラッシュバックした先程の巨大蜂の威容、気づけば目を見開き眼球に液体が接触し視界がボヤけるが大鎌を筋肉が露出した手で握り狂乱した様に全方位の空間を斬りつけていた。



「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッッッッッ…………!?!?!?!?」



喉を潰し血泡を吐きながら絶叫を上げ肺の中の空気が無くなっても超重量の大鎌をぶん回し続け狂乱状態から帰ってきたの約5分後、ぶん回していた間の記憶は空白で、大鎌を両手でだらりと下げ映り込んできた光景は足元の付近の地面は掘り返され近くにあった木は倒木しているが何故か切り株と切られた所から上の部分に俺が挟まれているという不可思議な倒れ方をしている。



喉が潰れ肺も限界以上に酷使され使い物にならなくなり今は感じれないが手足だけでは無く身体中の筋肉が悲鳴を上げ鼻と口からは止めどなく血が流れ出ていて止まる様子は見られず、そして考えの一つでさえ纏めることが出来ない。



血が鼻から口から流れ出ていく毎に頭が冷たくなっていき思考が纏まってくるという危ない感覚に浸りながらまだ巨大蜂を倒せてない事が頭に雷が降って来たような鋭い頭痛と共に思い出し、歩を一歩進めた。がーー



ブツッ

「あ………」




ブツッ、という硬い皮に無理やり針を通した時を連想させる音を聞き自身のお腹を見下ろすと鳩尾に見えない拳の大きさの穴が背中から貫通させられていた。

大鎌から左手を離し鳩尾に手を添えようとすると未だ見えない物体が存在することが感触で伝わってくるが、沸々と身のうちから混乱とかではなく『怒り』が噴火した。



「~~~~~~~~~~ッッッ‼︎」



見えない棒状の、恐らくは長細い針に添えられていた左手が憎しみを、憎悪の限りを込めて握り締め、右手にぶら下げられていた大鎌に心中の怒りを全て乗せ、更には下半身に至るまで力が漲り装いは死傷者では済まされないが心身のポテンシャルを最大限に引き出せていた。



一歩

全ての行動に力が入り透明化している巨大蜂は空中で引き摺られ、踏み込んだ地面が細かくひび割れる。



二歩

恐れを本能で察知したのか巨大蜂は針を抜こうと上昇しようと抵抗するが成す術はなく針に指が突き刺さる。



三歩

焦り痺れを切らしたのか後頭部へとガチッガチッ、と俺の頭を噛み砕けると容易に想像できる音が聴こえるが今度は俺では無く巨大蜂が悪手を取ってくれた、凶悪な大顎が俺の頭を捉えるがどこまでも深く脱力し大きく深く三歩目を踏み込んだお陰で大顎という脅威を避け鳩尾の針も抜けて全身全霊の一撃を放てる体制を取れて、対して巨大蜂は頭を差し出した無防備な体制、結果は既に明白であろう。



一気に沈み込んだ体制から振り向き、深い深い脱力からの歯が砕ける程の力みが最高速度に瞬時に導き全力をあるだけ全て使い切る。



「キ…」

「~~~~~~‼︎‼︎‼︎」



空中に跳び身体を丸め大鎌に力を込めて更に更に身体を丸めその遠心力を注ぎ込み最高速度から更に勢いを増した大鎌での月の光を反射して満月を彷彿とさせ、巨大蜂を真っ二つにするだけでなく地面までも深く斬りつけた。



「…………」

ガランッ



既に体力は無く身体中大怪我をして唯一の武器である大鎌を捨て、正気が抜けた虚ろな眼で見たものはぼやける暗闇、どこを見たとしても同じ物、あれだけ意思が無くなり方向など分からないだろう、と思うかもしれないが大樹の方向に気づけば進んでいた。


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