逃走劇
〜巨木を離れてから数日後〜
「カッ、ぐっ…」
朝なのか夜なのか分からない霧の中で、いつあの肌が泡立つ程の呪いを纏った呪竜が襲って来るかわからない中、木にもたれ掛かり息を潜め気配を朧げにして潜み、あの虚脱感が今ではあの声が聞こえてから消し飛び、兎にも角にも必死に生きる為に来た道を戻っているが……
(しつこい、まだ追ってくるか!)
虚脱感が感じなくなったと言っても力が張っているという訳では無く、そして、身体を再生しているとはいえ毒の影響なのか再生が上手く出来ず加えて走る中、木の枝が頬を掠めるだけで剣で斬られたかのような傷ができ、再生しようとしてもそれよりも先にブヨブヨとした肉塊が出来、加えて至る所の皮膚も裂け、裂けたところから再生しようとしても肉塊に邪魔され全て無駄になってしまう。
「……っ!チッ!」
「グアアアァァァァ!!」
後ろを見ずに肌で感じるほどの気色の悪い気配を感じ舌打ちをすると共に咆吼が森中に響き、背後から迫って来ているのを感じ取ると同時に思い切り木の影から飛び出すと次の瞬間には直に受けた部分はバラバラと木片に変わり砕け散り倒れた。
(作らなければ、この状況を良い方向に向かわせるきっかけを。だが……)
「グオオオオォォォォ!!」
木を破壊して現れた、人の手と目がある呪竜が、方向転換をして突進してくるのを避けようとするが追尾され凄まじい勢いの質量に空中に打ち上げられる。
(あの気持ち悪い眼を見ていると、滅茶苦茶で笑えてくるな)
そんな考えと呪竜の背中にある軟体生物のようにグニャグニャと変形しながら此方を見る目玉を此方も睨みながら落下していた。
リアルがやっぱり辛い