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輪廻を廻すソウルハーベスター  作者: ピュアラルラビット
原点回帰
1/11

根源を満たして満たす









「〜〜♪〜♪♪〜〜〜♪♪〜〜〜♪〜〜〜〜♪」


ポッカリと、大きな部屋にこれまた大きな大穴が開き遥か上から見守る月は大穴の縁で泣き腫らした少女をあやしながら歌を歌い慰めているその二人を、相も変わらず魅了する様な閑静な優しい月光で応援しながら二人を祝福する。



聞き手の月とまだ幼なげな少女、そして歌い手の女性とその女性の動き易いようになのか意識していないのか、背中が大きく出ている服の背中の肩甲骨ら辺に、三対の翼を模した純白のタトゥーが浮かび上がり、そこから天上の楽器の音色が流れ、それに女性の歌声が合わさり至極の歌となり()王の間に流れていた



「〜〜♪〜〜♪〜「う…アァ…」……」



女性から離れた場所、女性がいる部屋の中央に散らばっていた物の中から人の手が天に向かって伸びていた。



心地良く歌っていた女性は歌うのをやめ楽器の音も止まった、そして抱えられていた少女は突然歌が止まった為に目でどうしたのと女性に訴え掛ける。



「ごめんねミラ、もう一回だけ耳を塞いでも良い?」



此処からでは暗くて見えないが、背後で亡者の如き這い上がろうと蠢き呻き声を上げている物体を気配で感じながらミラという淡いピンクの髪をした可愛らしい少女の頭を愛おしげに撫でながら問い掛ける。



少女はその問いかけに対して小さく頷くと、腕を大きく広げて女性の豊満な胸に顔をうずめてしまった。



その行動に対して女性は困った顔を浮かべるが次には手に持っていた綿を捨てていた。



そして立ち上がった女性は死体の中で運良く生きていたらしい呻き声の主に向かって歩みを進める、そして謁見の間の中央部にある赤いレッドカーペットに散らばった肢体や肉片、更には大悪魔の死骸の上に左腕が肩から無くなり頭から夥しい程の出血をしているまだ若い男が立っていた。



「ヒュー…ヒュー」



息は浅く早く、少し離れて待てば肺に血が溜まって溺死するか喉に血が詰まって窒息死するか出血多量で死ぬかぐらいの虫の息、それを女性は沸々と燻る怒りを感じながらも、それを込めて睨め付ける。



男はグラグラと落ち着かない重心の状態でただ一点、私に向かい歩を進め、その右手に持っている持てた剣を振り上げる。が



バシャッ!!



突然その騎士の首が剛剣で叩き切られたように体から頭が穿ち飛ばされ完全に崩れ落ち、頭は未だに気付いてないのかぼんやりとした目をしていた。



しかし、倒れた事で首に掛けていた家族との絵を挟んだペンダントが、まだ動き続け心臓が送り出す血液が首からドクドクと流れ続け、大事なペンダントは持ち主の血の池に沈んで行った。



「ウィロウ、怒りは落ち着きましたか?」



今から片付けようとした物が死に、そして私の名前を呼ぶ愛しい女性、エレノアが所々に蒼い結晶が覗いている大鞭を引き摺りながら、しかしてその歩く姿は月明かりに照らされ、老若男女問わず魅了する。それは満月の光に照らされ神秘的な姿になっている。



「レア、暴れて落ち着いたよ、それと神殿はあったか?」



既に暴れても良くった所で暴れたとはいえ怒りに振り回され暴走してしまい我儘を聞いてくれた皆んなに感謝する。



そして次にエレノアに確認したのは神殿の有無、何故なら今から行う事で神殿が、神の像が壊れてしまったのなら破壊した原因である私に神罰や神呪が降りかかるだろう、最悪家族にも降りかかる可能性もある、それは絶対に避けねばならない事だ。



それ故に愛する家族の一人であるエレノアに確認を任せていた。



「フフッ、別に怒っていませんよ、それに神殿はありませんでした、それに黒龍神バラバドロの眷属も数人居ましたが納得してくれました。」



唯一の懸念材料である、神殿を破壊する可能性がそもそもない為、気にする必要が無くなったのは僥倖だった。

そして、凄惨な場所から離れ。



「なら…ミラ、もう起きて大丈夫だよ」



「…ンッ、ん〜ん〜、…お兄ちゃんどうしたの?あ!お姉ちゃん!」



未だに胸に頭を埋めていたミラが暖かくて眠ってしまっていたのか、寝ぼけ眼をパチパチさせているとやっとエレノアの存在に気づいたのか目を輝かせながら、抱っこした状態から抜け出しエレノアに飛びつく。



衰弱してるとはいえ徐々に回復しているのかエレノアに猪の子供ばりの突撃でエレノアの胸へ飛びつくが、エレノアは空中で怪我をしない様に勢いを失くさせながら受け止め抱擁する。



「ミラ、これが終わり次第説教です」



「っ、…うん、ごめんなさい」



エレノアは最初こそ嬉しげに撫でていたが、抱えていた思いを吐き出すように抱えているミラの顔を覗き込み、大人が子供に注意するように言い放つ。



その二つが一つの可能性でなくなってしまっていたかもしれない微笑ましい光景を横目に見ながらエレノアを微笑ましく思う、今ではミラは家族の中で居なくてはならない存在、この件は家族全員が怒った事なのだから。



この少しの間に心に傷をつけられたことがあるはずだった、それなのに逞しくなったように感じるようになったのはミラはが実に心根が強く優しい子なのだろう、当の本人は無邪気に幸せそうに笑っているが。



「さて、もう時間が迫ってきている………レア!」



「確かにもう時間でしたか、ミラ、お耳を貸して下さい」



久しぶりに再開した親友かのように戯れていたが、今やるべき事を思い出し。

私は次の段階に移る準備をするために、身体中に思考性を持たせ変質化を始めさせた魔力を爆発的に高め始めた。



するとすぐに身体中に変化が起き、身体の至る所に輝く夜を溶かし込んだような龍の黒鱗が覆い始め。

頭には、漆黒の龍角が一対に顎のところにも龍角が一対生え始め。

目は蒼の虹彩に黄金のような瞳孔に変質し。

背中には一対の黒翼が調子を確かめる為かバサッバサッと羽ばたき。

尾てい骨にはこれまた同じ龍の黒く長くしなやかな尻尾が生え始める。




「お姉ちゃんきれいー!!」



チラリと後ろを見るとミラがキラキラとした眼差しを向けてきていた、綺麗、と愛してる者に言われて悪い気はしないので少しばかり翼や尻尾を見せびらかしていたがエレノアからの微笑ましい笑顔で見られカァッと赤面すると、余計なことをしていた為流れが滞った魔力を焦りながら再び活性化させていく。




段々と身体のサイズは果てし無く大きくなっていき身体の姿形は歪み骨格から変形し、女性の身体で龍体化したからか男でするよりも筋骨逞しいとは言えずともスラリとした巨大ながらも羽根のように軽やかな印象を受ける。

急所を護るように関節部分に龍の外骨格が出来、その下には頑強な龍鱗がビッシリと敷き詰められている。




極め付けは、普通に見れば完全に身体の変形は完了したが最後の仕上げがまだであった、それは変化が完了しながらも皮膚の内から何かが溢れ出そうになっているからだ、身体中の龍殻が外からではなく内からの力に亀裂が入り、龍鱗の更に下の龍皮も悲鳴を上げる。




それを見ていたエレノアはそろそろと思い、肩車されているミラの耳を塞ぐ。



ミラはもう慣れたのか抵抗はしなかったが、何を思いついたのかニッコリと笑うと今度は目一杯体を使ってエレノアの両耳を塞いだ。



大変可愛らしい光景だが、その光景を私が見て堪能する事は叶わない、ミラが両耳を塞がれたのを充分に確認すると私は正真正銘最後の変化を迎える為に。



キラキラと月光を取り込んだ様に輝く翼を使い王城の遥か上空に向かって上昇し、魔力を活性化どころか爆発させ制御し、更に体内で炸裂させる、要するに気合いだ。



「ウォオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

                    

                


咆哮によって更に爆発し炸裂した力によって物質体(マテリアルボディ)

は限界を迎えて外骨格に完全に亀裂が入り、亀裂から

は蒼い焔が紅焔(プロミネンス)の如く吹き出し、龍鱗からも吹き荒れている。

完全な龍形態になったウィロウの姿は先程の姿より一段と風変わりしていた。



身体中に規則性のある亀裂が入りその亀裂からはゆったりした流れの蒼炎が吹き出し、蒼炎の灯りを艶やかな龍鱗が反射し、ただでさえ美しかった姿をより幻想的により、より鮮明に見るものに焼き付けていた。



しかし姿形が完全に変わり終えて尚も天に向かってありったけに咆哮する。

龍の咆哮に怯えぬ物体は居らず、大気は怯え眼前から逃げ、残ったとものは変わらず照らす月のみ。



雲一つ無くなった夜空を咆哮を止め限界まで眼を見開き視界一杯に月を写し収める、今この瞬間は美しい月をただ一人独占した気持ちになる、そして満足したので次の作業に移るために急降下し、王国を視界に充分に写すことにできる高高度で急停止して、先程の咆哮の数倍の空気を取り込み始める、それは可視することは出来ないが近くに近寄ろう者がいるなら捕まったが最後、あっという間に龍の口の中に収まるだろう。



それを遠巻きながら眺めていた今から龍がやる事の予測と事情を知る者はありったけの防御に使用できる能力(アビリティ)を発動し戦技や防御系魔法に死力を尽くし全力に今から遅い来る致死の咆哮を迎え撃つ。




「ウォオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!」



【グリム/ウィロウが龍の破滅(ドラゴニクス・)誘う咆哮(ルイバイトロア)を繰り出した】

【グリム/ウィロウが聖古源雷晩餐を繰り出した】



ーーー瞬間、その自らという決して無視することなど出来ぬ存在を世界に宣誓した。



【グリム/ウィロウが世界に対して宣誓しました】


【世界詩篇〔⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎〕の第八章【愛する者の楔】開示条件を満たしました】


【解放条件を満たした事により第一節【安寧を害する存在】 第二節【譲歩する野心】 第三節【怠慢の罰】 第四節【打ち砕かれた心】 第五節【滅国の家族を御招待】が解放されました】


【世界詩篇〔⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎〕 第八章【愛するという楔】は既に第六節【⬛︎⬛︎宣誓】まで進んでいます】


【報酬は最終章が完了され次第得られます】



世界の言葉が聞こえた気がしたがいつもの事だ、咆哮の威力は数分は経っていて尚も健在だったがこれ以上は無駄だと判断して咆哮するのをやめて眼下を見渡すと、既に散々破壊しておいた王国どころか城の姿は今や絶大な破壊力を宿した数えきれない万雷によって広範囲に大量の瓦礫を散布する結果になっていた。



ただ所々の瓦礫の下から這い上がって来るものがいた。



遠目からでも視認できる家族、メリッサにトゥラン、スィニーにアミッド、その他数人の愛する家族が瓦礫の山から出て来た。

土煙を被ってしまって汚れてはいるが傷は負っていなくて心寂しい残念さを感じながらも安心するという矛盾した心持ちの渦中、少しずつ降下して行く。



「アハハハハーー!!」

「あるじィィィィイ!?!?」



「ン!?」



突然上宮から声が聞こえて驚いて長い首を上に向けて視界に捉えた者は満面の笑顔のアミッドと、もろ涙目になっているノヴァが私の背中目掛けて垂直落下してきていた。



スタッッ

ガン!!



一方は綺麗に着地しもう一方は受け身が取れずに見慣れない鎧が歪むほどの衝撃で背中に叩きつけられていた。



「グリム様ー!…ん?今はウィ「あああぁぁ!?アミッド!なんて事してくれたんだぁ!?」ちょちょちょ、なんでそんなに怒髪天を突く!て感じに怒ってんすか、言った通りに一緒に一着取れたじゃないすか」

「確かに言ったがあんなアタマオカシイ方法思いつかないし実行もせんわ!」

「…ん〜、確かに今回はダメだったっすね〜。いつもと違う鎧でとっても綺麗だったからもっと見ていたかったすねー、残念…」

「な!?そ、そんな哀しくなる顔しないでくれ、次、そう次アミッドが絶対気に入る鎧が手に入ったら一番に見せるから、な?元気出してくれ頼む!」

「うん!やっぱチョロ姉っす!」

「っ!?ま、また騙したのか!?ア、アミッド〜〜!!」



背中で突然降ってきて突如始まった痴話喧嘩は最終的に追いかけっこに発展し、こっちとしては観ててとっても楽しかったがそろそろ声を掛ける事にした。



「フフフ、仲が良いんだな」



アミッドの頭をグリグリしていたノヴァは「はっ!今気づきました!」といった顔でアミッドを最後に投げ捨てて頭を下げてきた。



「っ!!す、すみませんでした!」

「ふふふ、それよりもお前がだ〜い好きなアミッドに褒められて照れてたのは見ものだったぞ?」

「あんな悪戯好きな妹など知りません!!」

「そうか、で?本当は?」

「え、あ…ううぅ…」




ーーーここで言い返さない時点でな〜



私の更なる追求で返す言葉に詰まったノヴァは自分の両手の指をモジモジして黙り込んでしまった。


ここで言い返さないあたりもうほぼほぼ答え合わせは済んでるがここで!ノヴァの後方の私の視界の隅でサムズアップしていたアミッドがノヴァの背後に自然な気配で悟らせずに現れ、ノヴァの肩を掴んで前後を反転させると腰に手を回し赤くなっていた顔に息が掛かる程その蠱惑的な顔を近づけ、私でもドキッとしてしまう妖しく艶かしい声質で囁く。



「私がどうしたんですか?」

「ア、アミッド…違うんだ、こ…これはだな?」

「何が?何が違うんすか?」

「ひうぅ…」

「……そっか、私の事そんなに嫌いなんだね、今まで迷惑かけてごめんなさいっす…」

「違う!本当に違うんだ私はアミッドお前の事が大好きなんだホントだ信じてくれ頼む…ヒグッ、グスッ」


そう愛の告白とも捉えられる告白を無自覚に赤裸々に叫ぶとアミッドに泣いて縋りつき始めた。

また私は渦中の外からタイミングを測りながら眺めている、ノヴァの方は興奮七割後悔という名の背徳を三割合わせた笑っているが冷たい顔で見下ろししてノヴァの顎を上げて笑い掛ける。



「ヒッ」

「妹の笑顔みてそんなになるなんて情け無いお姉ちゃん、そうだ!その無様な顔を姉さんが私より愛してる主様に見てもらうっすか♪」



アミッドが声質だけ弾ませて誰に言うまでもなく言い放つとノヴァの縋り付くだけで脱力している身体を掴んで無造作に立たせ私の首に向けさせると片手で下からノヴァの顔を上げさせて両頬を挟む。



「嫌…嫌ぁ……」

「そんなに嫌?やめて欲しい?」

「やめて欲しい…です……お願い…します」

「そんなに言うなら、私の言う命令に従うなら許してあげるっすよ」

「命令………何…でも、何でも……します、だから赦してぇ」



ノヴァはアミッドの話術に完全に嵌って、アミッドの雰囲気からしても冗談めかして謝ってそれで終わりの会話を、アミッドや私とかに対してだけ嗜虐心を煽る弱々しい性格で煽り墓穴を掘っていた。



私に向けられたノヴァの顔は度々アミッドにこねくり回されているが変わらず美しく綺麗だし、少しこねくり回されただけでそう変わらないのでただノヴァが自分で大きくした負の渦の中で勝手に回ってるだけである。



「じゃあ最初の命令っすね♪愛しのグリムと私、どっちが好き?」

「へ?…………え?」



アミッドに予想外の命令をされたノヴァは凍りついた頭で私とアミッドの顔を暫く行き来すると、こう答えた。



「ど、どっちも好きです……」

「だ〜か〜ら〜……ハァ、もういいや、まだ分かんないんすね〜」

「な…なにをムグッ、んーんー!」



突然感情がストンッと抜け落ちた様に無表情になり、ノヴァの口と身体を拘束するとずっと着ていた鉄鎧に手をかけ始めた。



「ンッ!?んー!んー!」



ギ…ギギギバキッ

キキパキン



簡単に外せる場所はスルスルと外し素人目には複雑そうなのは力技で外していく、力技で外すと装備者に捩れて変形した鎧の端が肉に食い込み、それを引く事で皮膚が割かれていく痛みがノヴァに走っている事はアミッドも重々承知してるだろう。

だが微塵も気にした様子も無くただの鉄の破片に成り果てたのをポイポイと私の背中より外に放り投げていく。

そしてノヴァというと最初は弱々しくながらも抵抗の意は示していたが途中からは涙を流しながら私に恐怖とその他の感情でごちゃ混ぜになった目で助けを求めてくるが私はその目の奥を覗き込み観察するだけだがノヴァも私も互いの目から決して視線を外さない。



「まだ言う気にならないんすか、強情っすね」

「言わ…ない……」



ノヴァはアミッドに鎧ごと服をひん剥かれ下着姿になってしまっているが、一周回って気にならなくなったのか強気の姿勢を見せる。



「っっ!ふふん、強気でいられるのも私が優しい今のうちっすどわぁぁぁぁ!?!?」




ブワッ!!!



横腹から何かが当たった感触を感じたと同時にその何かが破裂して発生した突風が吹く、完全に自分の世界に入って油断していたアミッドは足元を救われて転がり落ちていくので空に投げ出されて空中で掴もうとしたが掴めず地面に真っ逆さまに落ちていってしまった、決してわざと掴まなかったわけではない。




背中でアミッドからの拘束が解けて突風が止むまで蹲って耐えていたノヴァは受け身の耐性を解くと真っ先に私を見つめてきた、無言で背中に手を回して爪先を近づけると無言で殴られた。

再トライ、思いっきり殴られた。

もう一回再トライ、爪を本気で折ろうとした。

もう一回再トライのトライをしようとしたら私の首を駆け上がり耳元で息を溜め始めた。




「ウィロウも!アミッドも!全員大好きだぁぁぁ!!」




ノヴァの大声が頭の中で大暴れするがあまり効果は無い、そして視界に映されたのはノヴァの勝ち誇った快心の笑みだった。



「もう一度言ってあげます、わ・た・し・は!ウィロウもアミッドも私達家族全員この上なく大事なんです!この言葉を疑うなら例えあるじでも許しませんよ?」

「…私がその想いを疑うなど絶対に有り得ない、だが試す様な言動で煩わせてすまない」

「フフン、分かれば良いんですよ」




自分でフフンとか言ってる、可愛い

それはそうと大幅にグダグダしてしまい、速攻で建てた計画も速攻で潰えた。

だがここからはもう計画なんて建てずに力技で終了する。




取り敢えず先程攻撃してきたであろう方向を向くと、生き残っている全ての冒険者の中の魔術師や魔法使いが数人の魔導士を取り囲み、即興で集団魔術を組み上げている、しかも既に完成直後。

しかしながら待つ理由も無いので、頭に乗っかっているノヴァを掌に乗っけると、【血中金溶】を使うと頭の上ら辺に生えている両角が純金に変質していき、追

加でもう一つの能力(アビリティ)を行使する、

衝圧犀(チャージライノセラス)角雷砲(・アーテラリ)】を限界以上に使い両角の間に雷の収束弾が生成され、それに加えて【圧縮超過】を使い過剰な能力の暴発を無理矢理圧縮する端からさらに圧縮させ準備が出来た。





モタモタしてる内にあちらも準備出来てしまい、同時に撃つ事になってしまったが逡巡する事もなく放つ。



地上からは空間ごと焼き切るような光系統の高速の熱線が、空からは純粋な雷を収束させた雷砲が互いに迫り弾速の速さでは熱線が勝っていたが雷砲の破壊力に勝てず僅かながらも威力が拮抗する事もなく真っ直ぐに直撃し、その破壊力を遺憾無く発揮し四方八方に足を広げるように拡がっていく。




「降りるから掴まれ」

「ふぇ?チョ待って待ってェェェェェェ!!」




脱力してから垂直落下の体勢を取り地面向かって真っ逆さまになるとノヴァは反射的に拘束から逃れようとするが抜け出せず絶叫を上げていた。




あっという間に地上が近づき爆心地になった場所に着地する。




「……この恨み、必ず受けてもらいますからね」

「ふっ」




顔面からの強風で荒れ放題になった髪をグシグシしながらの恨みの篭った目線を鼻で笑うと無言で更に恨みを込めて来た。



さて、じゃれあいで時間をロスしてしまったので早々に切り上げなくてはならないと思うかもしれないが、後は撤収すればいいだけだからまだ時間は有り余っている。



元々あった市街地を瓦礫の海にした場所に王国の外壁周辺に散らばらせ家族が戻って来るまで待つ事もなくすぐさま一人目と二人目が早速到着した。



「なんだ、一番じゃないとかつまんねー」

「カラカラカラ」



粗雑な口調とともに現れたのはまだ新鮮な血と脳漿らしき透明な液体で手袋を濡らしたメルキオールと頑丈な筈の骨を著しく損傷し元の骨の数が半分ぐらいまで失ったが学習したのか骨を組み替えて球状にしてるが、上手く組み上げれずに四苦八苦しているコールだった。

メルキオールは姉妹?姉弟?の中でもダントツで握力が強く、なんでも握ろうとする癖がある。

様子からも察するに人の頭でも握ってきたのだろう。




「メルお帰り、疲れてはいないか?」

「たでーまー、つーか犬っころの後釜とかダルすぎる姉ちゃんにもこき使われてるしいい加減に起きてくんねーかな」

「…後五分」



粗雑な口調のメルキオールに肩車されているのは家族の中では一番下のメルキオールの一つ上の姉のヴェロニカがメルに肩車させて眠っていた。



「ヤッホー!あ〜、やっぱり物集めてたら遅くなっちゃったか〜」

「ふ〜♪ふふ〜♪楽しかったです〜♪」

「ア゛ア゛ア゛ーー、づがれだ〜」



クァルンは大男が両腕で抱えようとしても腕が回らないであろう魔道具(マジックアイテム)の巨大なカバンを軽快な足取りでホクホク顔のルンルン歩きで背負い。

セイレンは適当な鼻歌だろうが思わず合わせて歌いたくなるリズムで歌い。

スィニーはバトルスタイルに合うよう動き易く多彩な武器道具を携帯出来るデザインにした黒装束に身を包み疲れ切った虚ろな目で歩くのが一人と。

一般の市民とは異彩を放つ面々が到着した。



「みんなおかえり、特にスィニー、お守りお疲れ様」

「おいおい、姉ちゃん御一行様が遅いじゃねーか」

「ワンワン五月蝿いんだよメルわー、もう疲れたーおぶってー」

「見てみて!こんなに沢山のお宝が取れたんだよ!」

「兄様♪新曲が出来ましたから、後日お時間がお有りでしたらご招待させて下さい♪」



口々から一斉に放たれた口撃を受け止めて、内で反芻して返す。



「紛れもないお宝を沢山見つけたなクァルン、だが帰ってから直ぐに整理する事。」

「セイレン、誘ってくれてとても嬉しい、是非聞かせて欲しい」

「お疲れ様、後は私に任せてゆっくりしてくれ」



背に乗せる為に五人の足元に手を差し伸ばすとそれぞれ乗り、手を背中に慎重に回し降りさせると各々寛ぎ始める。



〜〜数十分後〜〜


スィニー達3人が到着してから20〜30分後には一人を除き、全員集まることが出来た。




王城の中の資料を片っ端からから取捨選択して集めていたメリッサ、実戦でモーガンから教わった剣を自分のものにするといって駆けて行ったトゥランなど、城の何処かで厳重に守られている場所にあるだろう禁書や国庫などを漁っていたりと、その他にも好きな事をしでかしに行っていた姉妹達が満足して帰ってきた。




「見てよ見てよこのお宝!」「固有の特産物とか無いしこの土地痩せ気味ね」「次はもっと力を込める!!」「殆どが良品止まりじゃないの」「収穫はまあまあか」「すぅ……すぅ……」「もう帰ろ〜」「寒いの嫌なのは集まってー」「召喚魔法はやっぱり魔法陣だと残しやすさが」「危な!そもそも剣筋とか出鱈目じゃん!」




騒がしくも和気藹々と今回の収穫を話し合い精算していた時に、ミラを大事に抱っこしながらエレノアが帰ってきてくれた。




「ただいま帰りました、グリム」

「おかえり、ノア」




「おや、遅かったじゃあないかノアお姉ちゃんさま?」「よーす!おっかえりー!」「すぅ…おかえり…スヤァ…」「おっかえりー!心配したじゃんかよ!腹減っただろ?これ食おーぜ!」「お姉ちゃんおかえり!この変わった形の武器何の用途に使うのか当てっこしよ!」「お姉様おかえりなさいませ、教えて下さった曲の振り付けを更にアレンジしてみましたのてご覧になって下さい♪」「おかえり!面白い童話があったんだ、どう?読み聞かせしてあげよっか」「おっかえりー!とくと見よ!これが記念すべき61作目の渾身の出来の【ハッピーシリーズエディションバージョン1・7!夜の執務室でイチャイチャしてる時の二人!】」「お、おかえりなさい!あ、あのね?つ、疲れたよね?つ、作り置きだけどね?お、美味しいマフィンがあるから、み、みんなで食べよ?」「おかえり、どうだったかい?新薬の実戦運用の感じは、ふむふむ上々といった所か、聞くだけで次々とインスピレーションが湧き上がってくるではないか!」「おかえりなさいませです!え〜、その…お願いしていた鎧の件は…」「おかえり〜、スヤァ……」「遅かったじゃねーか、次は俺も連れて行けよな!はぁ?別に妬いてねーし!」







エレノアが帰ってきた途端に全員が矢継ぎ早に歓迎をする、そんな今では当たり前になった光景が私に大切だと再認識させてくれる。

昔はエレノアに恐怖していたというのに今ではこんなにも家族仲が良くなりとても微笑ましく、愛おしい、愛してる、そんな言葉を何千何万重ねても表しきれない想いがずっとずっと私を満たし続ける。




家族全員が私の背中から身を乗り出し祝福するが、私が少し長い首をエレノアに向かって動かした途端にみな静かに口を閉じる。




「ノア、それにミラお帰りなさい」

「ただいまグリム、それに妹達、ですがまだあと始末が残っている状態ではただいまとは言えませんよ」

「ははは、確かに安心するのは新しい家に戻るまでだなノア、さあ帰ろう」

「帰りましょう、そうですね…帰ったらまずみんなで新しい大きなお風呂に入りましょう」

「はっはは!ノアもすでに帰りの気分じゃないか!」

「ん、ん……」

「「……………………………………」」

「……ぷっふふ、さあみんなで帰るぞ」

「ふっふふ、帰りましょう、今日はもう寝かしませんよ」




家族としてみればたわいない、ありふれた会話だが商談の時の会話より楽しくてつい大声で笑ってしまいミラが起きてしまうところだった、危うく寝ている所を起こしてしまう所だった。




帰りたい、だが後始末をしなければ、生き残りがまだいて市街地や王都周辺にいた者達の口封じをしたノア達の顔を見た奴がいたら特徴が漏れ、こんな事をしたのだ周辺諸国に広がり活動がし辛くなる。




だからコレは仕方のない事、ただの迷惑のなにものでもないが知らない奴の事なんて知人友人、最愛の家族に比べたら塵芥に等しい、だから今からこの国の領土全てを半永久的に誰も立ち入ることの出来ない地にする。



「全員いるな?」

「はい、滞りなく」

「そうか」



エレノアに最後の確認を取り終わると同時に背中に備わった大翼が目に見える変化を始める。

最上級品のシルクのようにきめ細かく肌触りの良い皮膜が蒼炎を纏い、幻想的で他を魅了し誰も触れることのできない神秘性を放つ。




そして一回、一回だけ羽ばたいただけで重量も重力も感じさせることなくまるで空間を見えない手で掴むように飛び立った。




一回羽ばたくごとに上空に上がっていく、背中で落ちない様に乗っているみんなに余計な負担の急な重力をかけないように昇っているが僅か数十秒で王城の三倍の高度にまで達していた。



「……補助を、出来たら頼む」

「フフ、いつでも幾らでも任されました」



補助、なんてものではなく完全に助けてもらうのだが強く見せたい、と思ってしまい言葉に詰まり苦しい言葉を言ってしまったが私を立てられてしまい恥ずかしくなってしまったが、気づかないフリをして行動に移す。



「ーーーーーーーーーーーーーーー」



滞空しながら体内の魔力炉と魂のさらに深くにある根源から膨大な元素を捻出していく、その膨大な魔素を大きく開けた口に収束させて圧縮させていくと蒼い炎の玉ではなく透明で穏やかに、ゆらりゆらりと球状をしている薄く蒼みがかった炎になった。



「その恐ろしい純粋な元素弾をわたしが更に凶悪にすると思うと好奇心が抑えられないね!そうは思わないかいグリムくん?」



そんな軽口を叩きながら頭を下に向けている私の龍角を支えにして地面を見下ろして現れたのは、合成ダイヤモンドをレンズ状に加工した物を耳にかけ短パンとサイズの合っていない服を着たアイギスだった。



おしゃべりはしたいが軽口なんて言った瞬間上半身が消し飛ぶであろう物を扱っている所為で口周りの外骨格に亀裂が入ったところから砕け散っているので目で急かすのが精一杯だ。



「おーおーすまなかったよ、私もグリムくんが苦しんでるのは本望じゃないさ、すぐに取り掛かろう」



そう言い終わると、ふざけていた態度が演技だったと錯覚してしまいそうな程真剣な顔つきになり、手に一冊の魔導書を召喚した。




『我神代に座した恐怖の化身 我永久なる権能有する其に望む 其は幾星霜の時を彷徨い歩いた阿呆 ただ其の名は何者も知れず だが其は無知なる故に禁忌に触れた 今其の禁忌にふれし愚か者の名をもちて この世に其の身纏う権能の一片を呼び込もう 付与:霜の巨人』




瞬間アイギスの周りを取り囲む空間が全く別世界の物に変わった、アイギスを取り囲む絶対零度の空気は概念的なものなのか龍鱗を通しても激痛を与えてくる。

それよりもアイギスが心配だった。



「ッ、なかなかきついじゃ無いか、…泣いているのかい?なーに心配要らないさ、痛くも痒くも無いからねっ」



(ーーー泣きたくなる、みんな期待以上、そういつも期待以上に私の意思を汲み取り最良の選択をする、けど私が絶対に助けれる場所にいるから、と言って傷を甘んじて受け入れようとする、私も私だ……止める立場なのに嬉しく思ってるなんて)



なーんて逡巡している内にアイギスは既に準備を終え、アイギスが息を整えると絶対零度の空気が私の元素弾と混ざるが外見は変わったところはないがただでさえ危険なものが更に凶悪になっただけ、しかし不安定だった力場が安定したのは行幸であった。



「ウゥ…寒い寒い、あとは頼んだよ」



アイギスはそう言い残すとさっさとみんなの集まる場所に行ってしまった。



(アイギスのおかげで苦労が大幅になくなった、安定している今のうちに落とすに限る)



「終わりましたね、では最後の起爆は任せてください」



アイギスと入れ替わりでエレノアがそう申し出て、エレノアが元素弾の周りの空気をひと撫で。



「あらグリム、無理矢理封じ込んでから任意で起爆する必要があったけど、アイギスのおかげで必要無くなったのですね。なら私たちの準備は既にできていますからその力場が不安定になり始めている元素の球をお早目に使って下さい」



そう言われると気が急いてしまうが、安定してるからといって僅かな刺激でも与えようものなら一気に不安定になり1秒と待たず私もろとも家族みんなに直撃するだろう。



だから精神を削って、静かに慎重に元素弾の支配権をそっと手放すがまだ安定しているのと重さは無い為自由落下せずに空中で滞空しているが、いきなり不安定になって全員巻き込んじゃった、という可能性もなくは無いので出来るだけ羽ばたいた風圧を当てないよう慎重に充分距離を取る。



「そろそろ充分でしょう」



エレノアがそうわたしの頭の上で呟くと一つのネックレスを取り出す、装飾品ではなく消耗品を想定して作ったのか紐は純度の低い鉄で出来ているが、そのネックレスに使われている蒼く透き通っている水晶が目を引く。

エレノアはネックレスから水晶を取り出すと重い石を投げる投擲体勢を取ると私の頭で短い助走をつけて思いっきり元素弾に向けて投擲する。



投擲したと認識する以前にエレノアの手から水晶が放たれた瞬間に元素弾に向かって背を向けて全力で逃げる。

投擲した水晶が元素弾に触れた瞬間ーーー











カッッッッッ!!












猛烈なフレアが何処までも撒き散らされ、直視したならば失明は免れないであろう光量を元素弾が照射し始め、変化はそれだけでなく重量を得たかのように地面に向かってゆっくりと落ち始めた。

私はそんな物確認するより、全力で逃げ雲より上まで来たあたりでやっと停止した。




だがゆっくり、ゆっくりと地面に向かい発光するだけでそれ以上の変化はない、だが最大の変化はやはりフィナーレに飾るもの。

猛烈なフレアを撒き散らす元素弾は遙か上空からいずれ地面に達する、そんな当たり前の時が来る時今回も例外に漏れず変化は最後に訪れた。



「コレは……」



地面に着弾した瞬間を見たと思ったら反応することもできず、気づけば目に映る光景は元の王国の直径の3倍の範囲まで広がったあの絶対零度の空気と蒼く立ち昇る蒼炎、それとどこまでも鋭利な氷柱が乱立した光景だった。

乱立する氷柱一本一本の高さも驚愕に値する、中心に行く程大きくなるが、王城の1・5倍の高さまで成長していた。




そして一面凍った氷に包まれた王国を見て思った事は綺麗だとか、絶景だ、とか浮かんでこないのは私のこうなるだろうなと想っていた想像力を遥かに凌駕していたからだろうな。




だが私がいつまでも些事に没頭しているわけにはいかない、今度こそ帰るべき家がある方向に向かい帰路につく。

私が雲の上を飛び、月が落ち太陽が昇ろうとしているのを横目に、家族が談笑しているのを耳に通しながらの帰路の途中、今までの事を思い出していた。



「大丈夫ですか?」



没頭してしまっている最中、エレノアが話しかけてきてくれた。



「私も、今のグリムの様に何故か寂しくなってしまいまして……なんででしょうね」

「……………昔を思い出していた」




なんで、とは単純に話してと誘っているのだろう、いつもであれば一気に楽しい気分になるのに、今はとにかく気分が沈んでしまったままだった。




「何故昔を?」

「……あの何も知らなかった時から、なんでここまで来れたのか分からなくなってしまった」




そう、何も知らぬまま森で彷徨い偶然辿りついた湖で助けられて、努力して悪い竜を倒し、家族となってくれた愛を共有する家族が心となり、人と関わり人を学んで力を学んでそんなのを努力し楽しみ育んで意思を貫いてきたから今の私になった。

だが私が起こした凄い事が他人事と感じてしまい、分かんなくなってしまう。





「では一つ一つ思い出してみましょう、私の知っている私とグリム、グリムの知っている自分と私、あんなに見て感じてきた想いを自分一人だけ分かんなくなった、で片付けられるのは釈なので」

「……恥ずかしい事も全部か?」

「ええもちろん!さあさあ私も恥ずかしい思いするんですから!」




私はわかってないがこの時私は笑っていたという、しかし私は長い長いお話を喋るのに夢中、だがエレノアはそんな私を憧れを見る少女の様に、気の知れた親友の様に楽しげに笑っていた。








「私の最初の記憶を共有してるから知っているだろうが最初の記憶はーーーー」









大元の設定や人物の人格が終わった…

メモしとかないと…

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