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日常と非日常は表裏一体 2

放課後、僕はいつものように文芸部を訪ねていた。


「あら、フクロウ君今日はもうお疲れのようね」


「はい……」


結局姫野に開放された後、僕はクラスのみんなから、いろいろと問いただされた。

放課後もそうなるかもしれないと思った僕は、すぐさま文芸部の部室に移動したわけだが

姫野となにかあるんじゃないかとタグ付けされた気がする。

クロウ先輩は、僕をじっと見てふふん、ぼそぼそと言っている。

クロウ先輩は、何か決断ついのであろうはっきりと言った。


「今日はやめときましょうか」


「やらないんですか?」


頭の中に驚きが生成されていく。

今日はもともと説明会をやる日だった。

クロウ先輩は毎回の説明会を楽しみにしているのだろう、する前にはいつも頭の上に蝶が舞っている。

なにか別のことでもしたくなったのだろうか。


「今はこれよりフクロウ君に何があったら知りたいわ」





4時間前にさかのぼる。

僕は騒々しくなった教室から一目散に離れ、文芸部にやってきていた。

一人で何かしたいときや、一人で何かやるにはうってつけの場所である。

とても日当たりのよい、居心地の良い場所であるはずなのだが、


「あら、先輩元気がありませんね」


諸悪の根源もとい姫野はニコニコしている。

ここだけ聞くとまるで、姫野がただのめんどくさい奴に聞こえるだろう。

別に、姫野は悪い奴ではないのだ。むしろいいやつと言ってもいい。

出会いは三か月前、眼鏡に三つ編みという、まさに日常クロウ先輩のスタイルをした奴が部室にやってきた。

自分の書いた小説を読んでほしいと。

最初のころはまだ奴は本性を現していなかった。

しかし、ある日を境に変わってしまったのだ。

まぁ、いつかはもう忘れてしまったが。


「そんなことよりどうしたんだ、何か用事か?」


「先輩の顔がみたくって」


「そう」


にぱーと擬音が聞こえてきそうな完璧な笑みをしている。

計算されたかのような言葉、表情、仕草であり、

並みの男だったら気絶もしくは一目ぼれしていたかもしれない。

しかし、僕はクロウ先輩という美少女小学生(笑)をずっと真近で見てきたことと、

姫野の本性を知ってしまったせいで軽く受け流せるようになった。


「帰る」


「待ってください、冗談ですって」


姫野は慌てた状態で僕の手をぎゅっとつかむ。

どうやら本当に用事があったみたいだ。


「用事のことなんですけど、先輩がやってこいって言ってたやつ仕上げてきました」


そういいながら、原稿を僕に差し出した。

ちょっとまて、その原稿どこから出したんだ?……気にしたら負けか。


「ごめん、忘れてた」


「いいですよ、むしろ私のわがままに付き合ってくれる先輩になにかお礼をしたいくらいです」


「いーや、姫野の小説は面白いから問題ない」


姫野の言うわがままっていうのは、一週間に一回姫野が書いた小説を僕が読み、評価することだ。

こいつが書く小説は僕は好きなので、

全然いやむしろ一週間の楽しみのうちの一つに入るくらい好きだ。

二か月前あたりからずっと継続しており、姫野は朝、僕にこっそりと原稿を渡していた。

はずなのに、なんで今日は、


「今日はなんで教室に来たんだ」


あっ、僕の嘆きがでてしまった。


「単純爽快、先輩が忘れていたからですよーだ」


姫野は不満がありそうに少しむくれた。

その通りである。この行為がいつもと違う日付だったということをド忘れしてしまったのだ。

姫野との待ち合わせはたまにこういうトラップが仕掛けられていることがあることがあるのだ。

ある日は場所をずらしたり、またある時は僕がぼーっとしているときに待ち合わせを変えたり。


「部活来れるときにこいよ、じゃあな」


「先輩……待ち合わせすっぽかしといてすぐに帰れるなんて思ってませんよね?」


「私、朝連絡してずっと待ってたんですよ?でも、ぜーんぜん返信も来ないし」


「これは、罰が必要ですねぇ」


姫野は悪魔も退くような邪悪な微笑みをしている。

確信を持って言える、こいつわかっててやってると。







「で、結局何をやれって言われたの?」


少し不機嫌そうな顔をしたクロウ先輩が、ため息交じりに吐露した。


「来週買い物に付き合えってさ」


「……」


クロウ先輩の期限ゲージがみるみる下がっているのが見える。


「しかも、あれで」


「フクロウ君、私もついて行っていいかしら」


あれと言った瞬間に食いついた。

僕は、あきらめ半分で告げた。


「めんどくさ……来なくていいですよ」


しまった、本音が出てしまった。

姫野とクロウ先輩が一緒だとめんどくさいことこの上ないことは目に見えてわかっているので

というか、体験済みなのでもう味わいたくない。

体験済みというのは、いつもは姫野は用事があって部室にこれないのだが、

用事が消えたら来る……後はわかるな。


「フクロウ君ダメ?」


うるうるとした二つの瞳が僕を訴えてくる。

屈してしまいそうになるが、来週の僕のためだわかってくれ。


「ダメです」


「い」


「いやぁだぁああああ」


やっぱり、こうなったか。

クロウ先輩は、大泣きとはいかないが少し涙をぽろぽろとこぼしている。

そうだな、わがままっ子っていったらわかってもらえると思う。

クロウ先輩はまさにそれである。

われ思ふ、ほんとに年上?


「はぁ、わかりました。来ても別にいいですよ」


「ほんと」


僕は子供をあやすようになだめるように話した。

結局僕が先に折れた、

というか泣いている女の子に対してひどいことなんてできる人はいるのだろうか、いやいない。


「ほんとうです」


「わかった」


そういい、涙をひっこめた。どうやら嘘泣きだったらしい。

クロウ先輩……わかっててやりましたね。

ひっかかる僕も僕ですけど。

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