「少女の幸せ」5
「却下だ」
職員室はもう先生達も帰りだしたのであろう、まばらとしている。
まぁ、それもそうだろう、僕たちは結局あれから日が暮れるまで説明会という名の雑談会となってしまい、もう収拾がつかないなぁと思ったので、南先生のところまで行くことにした。
いやだとか、ゆるしてだとかしか言わないって、子供かと突っ込みたくなった。まぁ、いつものことなのだが……
「南先生、ダメですか」
クロウ先輩は、さっきまでとは一転変わってできる高校生といった風貌を醸し出している。
誰だこいつと叫びたくなる衝動には……まぁ駆られないが、しかしながら違和感はぬぐい切れない。
「ダメだ」
「……わかりました」
クロウ先輩は僕と二人きりの時だけあんな感じであり、ほかの人と接するときは今のような態度をとるのだ。
僕の時もその態度でいてくださいよ……
「それよりも、大丈夫か期限明日までだぞ?」
「今から家帰って急いで新作書きます、では」
そういい、先輩は分け目もふらず去っていった。
「ちょっと、ま、行ったか」
南先生はなにか話したかったのであろう、しかしもういない。
やましいものを渡したといっ罪悪感をかんじたのであろうか。
しかしなんといってもやはり、逃げ足が速い。
「……先生、先輩も帰りましたしもう行きますね」
たぶん、僕にはなにも用事は
「ちょっとまて、この小説今日も解説会というやつをやったんだろ、少し聞かせてくれ」
なかったはずだった、用事はあったようだ。
「まぁ、いいですけど」
とりあえず今日の話の顛末を先生にすべて話した。
まずは自分の考えを、次に先輩の考えを。
先生はふんふんやら、ほうほうと言っている。
そして
「やっぱりな」
なにか、納得をしたようだ。
「どうしたんですか」
何を納得したんだろうという意味も込めた、はずなのに
「おい、宿題だ」
「は?」
でてきた言葉は、意味不明なものだった
僕は宿題という単語が出てきたので反射的に拒絶心もとい『は?』が出てしまった。
クラスの友達ならわかってくれるはずだ。たぶん、メイビー。
「驚きすぎだ」
パンという軽い音が響く。言い換えると主席名簿で頭を叩かれた。
あまりいたくない。
「課題もっと欲しいのか?」
「いえいえ、喜んでやらせていただきます」
先生ヤクザみたいっていったら怒られそうだけど、ヤクザみたい。南組……運動会かな?
余計なことより、やっぱり先生雰囲気女性って感じよりも、男性って感じがするなぁ。
まぁ、それがあのファンクラブ(非公式)という結果だろう。
ちなみに規模はクロウ先輩のファンクラブの方が5倍くらい大きいらしい、だから何って話だが。
いや、そもそも先生にファンクラブって先生はみそ
「ん?話を聞いているか?」
少し考え事をしてしまった。現実逃避ともいう。
「いいえ、ちゃんと聞いてますよ」
「一応もう一回話すぞ、宿題の内容はこの小説にタイトルをつけることだ」
「?」
この小説タイトルなかったっけ?という疑問があったので、ちらっと原稿を見た。
あれ?確かに題名ないな?
「正解なんてないから自分が思うべきものをつけていいぞ」
「わかりました」
もうこの原稿は提出しないものだし気軽にやろう。
「あとこれを言うべきなのかはわからないが……早くはっきりするようにな」
「……わかってますよ」
分かっているが……困った。
唐突に横から丸太が飛んできたかのような衝動と困惑に襲われた。
なんといえばいいのだろうか、僕はあーやらこーやらしている途中で
「うん、特にもう用事はすんだ。ありがとう」
南先生は僕が困窮しているのを汲んだのかタイミングよくしゃべってくれた。
そういうことしているのが、ファンクラブできる原因ですよ。
「いえいえ、ではさようなら」
最後に、南先生はボソッと独り言をつぶやくようにささやいた。
「まったく、伝わっていないのか伝わっているのかどっちなのか」
今日僕は夢をみた。
内容は深く覚えてないが、確かに覚えていることは夢の中の少女が僕に微笑みかけて、
「君と一緒なら」
あれっ、なんて言ってたんだっけ……大事なことだった気がしたが、まぁいいか。
そして、ふっと思いついた。
「あっ、タイトル『少女の幸せ』がいいや」
なんでか知らないがそう思った。いや、嘘か。
はぁ。
これにて、『少女の幸せ』編は一応終わりです。
ものを書くことにはあまり慣れていませんので、誤字脱字もしくは設定ミスなどがありましたら
報告よろしくお願いします。
クロウ先輩がテーマに沿って書き直したようです。
「私の初恋」というのを上げましたそちらもよければ、ぜひ。
(リンクの貼り方がわからなかったので、リンクは貼れていません、ごめんなさい)
裏話
この読み切り?の主題はマルチエンディング、なのでタイトルがなかったというわけです。
例えば、フクロウ君の解釈で行けば『ヤンデレさん先輩監禁するノ巻』だったわけですし、
クロウ先輩の解釈で行けば、『例え空想だったとしても』になるわけですね。
しかし、フクロウ君がつけたタイトルは『少女の幸せ』という意味がわからないものでした。
私の口ではなぜフクロウ君がそう書いたなんて言えないので、是非とも考察してみてください。
(書くことが多すぎて書きたくなかったなんて言えない)