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「少女の幸せ」4

「二つ目に移る前にいいですか?」


少し疑問に思ったことがあったので忘れないうちに聞いておこう。


「何かしら、フクロウ君」


少し、不安そうな顔でこっちを見ている。ほんとうにクロウ先輩想定外の行動に弱いんですね……


「先輩がイマジナリーフレンドだったら二段落目の男は一体誰なんですか?」


「あー、言い忘れてたわね。ごめんね」


クロウ先輩はほっとしている様子だ。

どうやら想定内だったようだ。


「あいつは、後輩ちゃんのいじめっ子だと思うわ」


「えっ」


驚いてしまった。


「それ、先輩どういうことで」


「フクロウ君、あなたわかってるでしょ?」


……正直、先輩のイマジナリーフレンドというのを聞いたら察しはついていたのだが、

確信が得れなかったから聞いた。まさか合っているとは。


「考えはまとまった?うん、じゃあ二つ目に行くわね」


少々まとまっていないが、あとから考えることにしよう……


「唐突で悪いけどフクロウ君、君は私を『信頼』できる?」


クロウ先輩がじっと僕を見つめてくる。

その目からはなにか僕への期待を感じ……る?いやなんでもない。


「まぁ、たぶんできると思うわ」


クロウ先輩は自信満々のように言った。

先輩に自信満々に言われて、うれしい反面うざいといった感情がごちゃごちゃになる。

あっ、クロウ先輩小さい声で大丈夫だよねって言ってる……やっぱりか。

僕は、気にしないふりをすることにした。

クロウ先輩はにやりと笑った。ん?


「南先生に愛してるっていわれても信じないでしょ?」


例えがひどい。信じないけど。

南先生というのは、うちの部活の顧問兼クロウ先輩の担任だ。みそ……なんでもない。

あとクロウ先輩、言いたいことはわかりますけど、南先生を例えにだすのはかわいそうです。はい。


「じゃあ本題ね。なんで、少女は出会って間もない先輩を信頼することができたの?」


なんでってなんでだ?

ここがおそらくクロウ先輩の核心部分だと思うのだが、質問の意図がつかめない。


「?それはいじめから救ってもらえたからじゃないですか?」


こう言っているが、まだよくわかっていない。


「少女は誰からも自分のことを信じてもらえなかったのよ?そんな彼女が最後に言う言葉が信頼していますってあまりに不合理だわ」僕でさえ見知らぬ人をあまり信頼できないのに、僕よりもひどい状況の後輩が信頼なんて言葉を使うわけがないって

あれれ?自分が何言ってるか分からなくなってきた。


「フクロウ君?って顔をしているね」


「とりあえず、私の解釈を話すから聞いてね」

クロウ先輩は、カンペを取り出した。



後輩ちゃんはイマジナリーフレンドを作った。

まぁ、誰よりも誰かに救ってほしかったけど、誰も救ってくれないから自分の都合のいい

イマジナリーフレンド、即ち『先輩』を作った。まぁおそらく無意識でしょう。

そして、『先輩』は後輩ちゃんにとって都合のいい存在、もしくは自身の本心と言っても過言ではない存在。

そんな『先輩』を得た後輩ちゃんがすることと言ったら、

その結果が保健室にいじめっ子を腕輪でつなぎ殺害。まぁここは後で話しましょう。

そして、後輩ちゃんは……いったいどうなったんでしょうね。

私はきっと、『先輩』と一緒に世界一幸せになりにいったと思うわ。




「という感じよ」


なんだろうこの納得いきそうでいかない感情は。

クロウ先輩の話を聞き終えて、もやもやした感情が浮かんでは消え、浮かんでは消えてく。


「ふふっ、納得のいっていない顔をしているわね」


「だって」


「とりあえず、さいごまで聞いてくれるかしら」


腑に落ちないことばかりだが、とりあえず最後まで聞くことにしよう。


「わかりました」


「じゃあ本題フクロウ君、ハッピーエンドって何かしら?」


「そりゃ、主人公が幸せになったらハッピーエンドでしょう」


よくゲームでは、ハッピーエンド、バットエンド、トゥルーエンドなどが存在するがって

ここまで言ってようやく気が付いた。


「では問題です。主人公は誰でしょうか?」


クロウ先輩のにやにや度と声の音量が上がっていく。


「当然いない人は主人公になれません、なら自然と後輩ちゃんが主人公になる」


「そして後輩ちゃんはハッピーだから、これはハッピーエンドです」


クロウ先輩の後ろにドンという文字が大きく見える。

いやいや、


「先輩何言ってるんですか……僕の中ではまだバットエンドなんですけど」


とりあえず、思っていることをすべて言ってしまおうか。


「それに、クロウ先輩が言っていることとか僕の思っていることとかがごっちゃごっちゃで」


「そもそも、なにもかもあやふやじゃないですか」


そうなのだ、この小説を読んで思ったのがまるでミステイクを誘うような表現の仕方、そして

はっきりと軸といったものがないように感じられた。まぁ、僕が言っても説得力はあまりないが……

しかしながら、クロウ先輩は待ってました!と言わんばかりの顔をしている。

釣りで魚がひっかかった漁師のような満面の笑みをしている。

あっ、これは入ったなぁ。


「フクロウ君、この小説のポイントはそこよ!そこ」

「私は、この小説ではまだ言っていないだけで他にも解釈の仕方があるんです!」

「私が想定した以外のエンディングがもしかしたら、あるかもしれません」

「そうですね、読む人によって感じるものが違うって非常にぃ」

「面白くありませんかぁ」


クロウ先輩は言いたいことが言えたのか恍惚とした表情をしている。

美少女がしてはいけない顔をしている。こんなもの人に見せられないなぁ。はぁ。

先輩は興奮したらこうなるからなぁ……

少し経ったがクロウ先輩はまだはぁはぁしている。

先輩もうちょっと感情をコントロールしましょうよ……

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