「少女の幸せ」2
「で、フクロウ君にとっての『先輩』はどんな先輩になった?」
僕は先輩の言葉が意味わからなかったので、もう一回読み直していたところだ。
正直この読み切りは読めば読むほど、こころが痛くなっていくのを感じる。
「正義感が高いラノベ的先輩になりましたけど……」
「ふふっ、やっぱりそう」
クロウ先輩は、まるでその答えを確信していたかのような表情をしている。
いや、これ『先輩』とやらが仮に分かったとしても問題なのが、
「で、これのどこがハッピーエンドなんですか?結局先輩が死んでバットエンドじゃないですか」
「フクロウ君落ち着いて、ステイ」
どうどうとすらっとした手を突き出している。
僕は犬じゃないです。
「じゃあ、フクロウ君この話を要約して」
いつも解説会で、要約を求めてくるので、最近は頭の中である程度まとめるようにしてある。
こんなこと慣れていきたくないんだけどなぁ……
「先輩が眠っている隣に後輩ちゃんがいます。そして、後輩ちゃんは先輩との出会った時のことを回想し始めます」
僕は、この物語の最初の部分を思い出していた。
しかし、これといって重要な情報もなかったと思ったのでここはスルーする感じでいいだろう。
「ん、それで?」
クロウ先輩は、想定内といった様子だ。
さて、問題になってくるのはここからだ。
「ここまでが、3人称視点で次からは先輩主観になります。先輩はどうやら後輩ちゃんに拘束されているようですね」
そう、最後の部分で拘束されているとつぶやいていたのを思い出す。
「フクロウ君は後輩ちゃんが先輩君を腕輪で拘束したと思っているの?」
「そうです、後輩ちゃんはいじめにあっており先輩に助けられたことによりヤンデレ化したんじゃないでしょうか」
ヤンデレ界隈ではよくある話です。……ヤンデレ界隈なんてあるのか知らないですけど。
でも、僕が少し引っかかるのはクロウ先輩の作品にしてはやけにすぐ堕ちたなぁと思ってしまう。。
クロウ先輩は、なんというか一目ぼれなんてあるわけないじゃないと一笑する印象があるんだけど。
まぁ、作品によっては切り替えるか。そう納得をつけることにした。
「チョロインアンドヤンデレだったわけね、彼女は」
ここも、想定内といった感じである。
最近思うのが、先輩の中の僕という人間像が正確になっていっている気がする。……僕にはあまり関係はないけど。
「先輩……言い方ってものが……まぁ、私はそうおもってます」
「それで、最後はどうなったの?」
終盤の要約を軽く確認してみる。
……うん、最後はよくわかるヤンデレのテンプレみたいなものだったと思う。
「最後は後輩ちゃん視点ですね。まぁ、ヤンデレ化していると思ったら妥当なところかなぁって」
「フクロウ君は後輩ちゃんにとっての幸せって何だと思った?」
「そりゃ、一緒に添い遂げることでしょう」
「そっか、で最後の死体うんちゃらはどう思った」
「先輩を殺して、自分も死ぬっていう解釈をとりました」
二つの質問をされたが、僕にはクロウ先輩の意図がまったくわからなかった。
なんで、わかりきったかのようなことを聞いたんだろうという疑問がが頭の中でぐるぐるしている。
「で、この解釈をもってフクロウ君はバットエンドだと」
「クロウ先輩?まさか後輩ちゃんが幸せだったからハッピーエンドって言わないですよね?」
前に、こんなやり取りをしたことがあったことがふっと頭の中をよぎった。
僕は無意識に身構えてしまう。……クロウ先輩、違うよね?
「いや、そんなことないわよ。この物語はみんな幸せになっている。まさにハッピーエンドよ」
「バットエンドにしか思えないんですけど」
僕は、正直この小説をよんで後味が良かったといった印象をうけていない。
砂糖が欲しくなってくる。お菓子ではなく、ラブラブしたもののではあるが。
「じゃあ、今回もヒントを与えましょうか」
クロウ先輩は指を振りながら僕を見つめている。
そして、この説明会で恒例となりつつあることが始まった。
「……先輩?」
「いいこ、いいこ」
クロウ先輩は唐突に僕の頭をなで始めた。
「…………先輩?」
「いいこ、いいこ」
そう恒例行事とかしている先輩のなでなでが始まった。
最初は、どきどきが止まらなかったはずなのに今となってはただ単に安心感が襲ってくるだけである。
正直言ってずっとされていたいとう衝動に駆られてしまうが今はそのことよりもこの問題作の解決が先だ。
と自分に言い聞かせて、口にした。
「クロウ先輩何やってるんですか?」
「フクロウ君はこの行動を文章にするとどうなった?」
「……クロウ先輩はフクロウをなでなでしている」
本当になんで毎回なでなでをするのだろうか……
「幸せ?」
クロウ先輩はなでなでを維持しながら僕に近づいてきた。
それ、答えなきゃいけないですか、ほんと恥ずかしいんですけど。
「そう、これがヒントよ」
「?????」
突拍子のないことを言われてしまい、頭の中が真っ白になってしまった。
本当に、クロウ先輩のことがよくわからないのだが。
「ふふっ、わからないんだったらこれからおやつタイムといきましょう」
そういいながらクロウ先輩はカバンの中からクッキーを取り出した。
書いている作者も砂糖が欲しくなってきました……