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蒼星のセレス  作者: おうぎまちこ@3/13「犬猿の仲の幼馴染」書籍化!
海の章

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第27話 決別と誓い

 大変長らくお待たせしました。




 次にセレスが目を覚ました時には、自国であるスフェラ公国と、敵国であるオルビス・クラシオン王国との戦争は終結していた。

 彼女はいつの間にか、遠く離れた王都の城の中に戻っていた。

 セレスのそばには、セレスの兄の親友である第一王子カーネリアンと、兄の幼馴染であり、第一王子の婚約者であるインカローズの二人が控えていた。インカローズは泣きじゃくっており、話が出来る状態ではなかった。代わりに、険しい表情をしたカーネリアンが、事の次第をセレスに説明してくれた。

 どうやら戦が終了してから、セレスは二週間ほど眠りについていたらしい。


 寝台で身体を起こしたセレスは、大きく呼吸をした後、第一王子カーネリアンに問いかけた。


「カーネリアン王子、アズライトお兄様はどうしたのですか……?」


 彼女の声は震え、自身にかかっていたシーツを掴む力が強くなった。

 カーネリアン王子のそばに控えているインカローズの涙する姿が、セレスの不安を煽る。

 どんどん高まっていく鼓動を抑えたくて、セレスは胸に手を当てる。

 眼前のカーネリアンが放った言葉に、彼女の顔面が蒼白になった。


「アズライトは、オルビスの剣の守護者に殺害された」


 セレスの頭も同時に白くなる。カーネリアンの話を信じたくなくて、同じ問いを何度か繰り返してしまう。

 彼女の質問に対して、カーネリアンは首を横に振るだけだった。


「おにい……」


 セレスの金の瞳から、涙が溢れ出す。

 視界が滲み、カーネリアンの金の髪と、インカローズの煉瓦色の髪が、じわりとぼやけて見えた。

 結局、自分は戦場に行ったところで、何の役にも立たなかったということだ。


(未来を視る力があっても、結局お兄様を死なせてしまった……)


 しばらく誰も、何も言葉を放たなかった。

 どれだけの時が経ったのだろうか、唇をわななかせながらセレスが口を開いた。


「……お兄様の、ご遺体にはお会いすることはできますか……?」


 セレスがカーネリアンの茶色の瞳を覗きながら、懇願する。

 彼は先程と同様、首を横に振った。


「そんな、一体どうして……?!」


 セレスの声が思わず、上ずる。せめて兄の弔いだけでも、しっかりと行いたい。

 だけど、カーネリアンの答えは、それさえも彼女に許してくれなかった。


「アズライトの遺体は、見つかっていない」


 セレスは驚き、目を見張った。


「なぜ、ですか……?」


「おそらくは、オルビス・クラシオン王国側に渡ったのかと……」


「オルビスに……」


 セレスは、口を少しだけ開いたまま、言葉を継ぐことが出来なかった。そのまま握りしめたシーツの波間に顔をうずめる。彼女の水色の髪が拡がる。

 声を出して泣く彼女を、カーネリアンとインカローズは黙って見つめていた。




※※※




 一緒にいたスピネルは、彼女のそばからいなくなっていた。

 カーネリアン第一王子に、彼の所在をたずねたが、「療養している」の一点張りで、再度会うことは叶わなかった。




 さらに、彼女を襲った衝撃は、兄の死と初めて出来た友人との別れだけではなかった。

 戦争後、暴徒と化した市民が、戦争の責任をとっていた副騎士団長のアズライトの生家――つまりはセレスの家――を襲い、カルセドニー侯爵、そして家に遣えていた使用人達を嬲り殺しにしたという。なんとか生き延びた、セレスの義母に当たるカルセドニー侯爵夫人も、助けられた病院で自死を遂げたという。




※※※




 大切な人を失い、帰る場所を失ったセレス――。




 彼女は、兄の親友である第一王子の厚意により、城の一角に住まわせてもらうことになった。

 侍女に近い仕事をこなしながら、騎士学校に入学できる十三までを過ごした。

 戦後は、負け戦の責任者として亡くなった兄アズライトは侮辱されたし、彼女はその妹であるとして周囲から蔑まれた。

 

 だが、彼女は周囲の声をものともせずに、来る日も来る日も鍛錬を続けた。


 騎士になり、いつかオルビスから、兄の身体を取り戻すために、そうして、彼女の兄を殺した紅い髪の化け物へと復讐を遂げるために――。





 そうして、数年の時を経て、彼女の物語は再開する――。





 これにて序章である「海の章」を終了します。

 次から、やっと本編に入ります。

 本当に長らくお待たせしました。

 これからのどうぞよろしくお願い致します。

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