第三話
ルナが光属性の欠片を洞窟内で入手した後、新たに旅路を共にすることとなったヴェンを加え、一度別の街に移ることにした。
「ここからしばらく歩いたところに、ちょっとした街があるんだけど、まだあの黒雲の侵略には相当時間がかかる位置にあるし、しばらくそこを拠点に置かないか?」
「そうね、そうさせてもらうわ。」
ルナ達は、ヴェンの提案に乗ることにした。
しかし、もう空も淡い赤色に染まってきているので、どこかで夜を明かす必要があるだろう。
「今日もどっかで野宿かなぁ、間違いなく着かねぇだろ。」
ラロノスは少し不満そうな顔をしながらも、休息に使えそうな場所を探し始めた。
その日の夜は、非常に空が澄み渡っていた。街の灯りも一切存在せず、星と月明かりのみが辺りを静かに照らす。
ルナ達は、3人並んで近場で見つけた川辺に寝そべっていた。
「昨日よりもすっごく星が綺麗ね。」
「ああ、そうだな。遥か遠くで輝いてるなんて想像出来ねぇよ。」
ラロノスがそう言うと、ルナは幼い頃に友人から聞いた、星はこの世界からずっと離れた場所で光ってるから取れないんだよ、と言われた事を思い出した。
この話を聞くまでは、空へ登れば星が取れると本気で信じ込んでいたものだ。
「でも、あの異変を解決しない限りは、世界の人はこの宙を見ることもできなくなるんだよね?」
「そういう事だ。だからこの空を見続けたいなら、俺達はどんな脅威にも立ち向かわないとダメなんだ。」
ヴェンは戦いを決意したように、それでも少し悲しい声でそう言った。
そして、夜空に輝く星々に見守られながら、ルナはいつの間にか深く眠りについていた。
ーーー何なの、この感覚は…?
ルナは辺りが何も見えない空間に立たされていた。
ただひたすらに「闇」と「無」が広がるだけの世界。
音一つとして聞こえてこない、空虚の世界。
「あなたは、私であって、あなたなの。」
「……え?」
空虚の中に聞こえる、謎の少女の声。
「いつか、会おうね。」
「うわっ!?」
ルナは驚いて飛び起きた。どうやら夢を見ていただけのようだ。
「ん?どうしたんだ?」
既に起きていたらしいラロノスが聞いてきた、ヴェンも起きているが、朝に弱いのか付近の木にもたれてぼーっとしている。
「あ、いや、何でもないわ。とにかく、行きましょ。」
そんな会話をした数分後には、次なる目的地を目指して歩き始めた。
街に着く頃にはもう昼間になっていた。街には未だに人々が生活しているそうだが、今は異変を恐れてか、住民達はあまり外には出てこないらしい。
「で、来たは良いけど何処を拠点に置くんだよ。」
「ん?あぁ、俺の家があるし、そこにしようかなって。家の中のもの自由に使っていいしさ。」
そう言いつつ、ヴェンは自分の家まで案内してくれた。外見はルナの住んでいる家に少し似ているが、これはこの世界の家の基本形だからだ。
「あ、じゃあ、お邪魔します。」
中に入ると、玄関のきちんと靴は整理されていた。そして奥に見える部屋も非常に綺麗で、パッと見だと新築かと疑う程だった。恐らく、よっぽどの綺麗好きなのだろう。
中まで案内されると、ソファや簡単な椅子が置かれている。
「まぁ、適当に座ってくれ。」
言われるままにルナ達はそれぞれソファや椅子に腰掛けた。
「で、早速なんだけど、俺は今回の異変は間違いなく『闇の世界』の影響だと思うんだ。」
「闇の世界?」
ルナにも聞き覚えのある言葉だった。
この世界は過去の戦争によって、光と闇に別れており、それぞれ光の女神と闇の皇帝が統治していると。しかし…
「で、でも、闇の世界と光の世界はお互いがちゃんとバランス取ってるって…」
「それはもうずっと昔の話だ。皇帝シュヴァルツが数十年後に謎の反乱を起こしたせいで今は光と闇のバランスが崩壊してる。その影響が今になって現れたんだろうな。」
ヴェンからの聞いた言葉の意味が、最初はよく分からなかった。光と闇のバランスが崩れたのなら、世界の存続自体が危ういと言っても過言ではないからだ。
「ど、どうすればいいの?」
「俺はもう、闇の世界に直接行くしかないって思ってる。そして、皇帝に直に話を付けるんだ。」
「んな無茶な!?」
ラロノスは叫んだ。
「でももうそれしか方法がないんだ!ただ、3人じゃ心細すぎる。だから、俺の友人の能力者も協力してほしいって頼んだんだけど、あいつ、あんまり人前に出ねぇしさ…会ってから決めるって。」
ヴェンは少し暗い表情でそう告げた。
「と、とりあえず、友人は基本的に街の図書館に居るから、今からでも会いに行くか?」
「早めに会っておいた方が良さそうよね。今から行きましょう。」
「だな、行くか。」
そうと決まると、ルナ達は大きめの荷物はヴェンの家に置いて、図書館まで行くことにした。
ヴェンに案内されて辿り着いた図書館は、ルナの街にある図書館以上に大きく、本の種類も尋常ではないだろうと伺える。
「ここには魔導書とか、歴史書も多いからな。あいつ、そういうの好きだし。」
ヴェンはそう言いながら、木製の大きな扉をゆっくりと開けた。
中はいい感じの温かさで、湿気も少なく、読書に適した環境である。床には赤い絨毯が敷かれ、天井には豪華なシャンデリアが吊るされている。
壁はダークブラウン色をしており、見ているだけでも心が落ち着いてくる。
「さて、あいつのことだから……歴史書の所から見てみるか。」
ヴェンは慣れているのか、大量に本棚が並ぶ道をスラスラと渡っていく。
そして、しばらく歩いていると、金色の髪をした少年が本を読みつつ頭を悩ませてるようだった。
「……あの子?」
「ああ、そうだ。おい、アル!」
ヴェンがそう呼ぶと、彼はこちらへと振り向いた。
「……なんだ?ヴェン。」
「見つかったぞ、協力者。まぁ…最初は闇の世界の能力者と勘違いして攻撃しちまったけどさ。」
「全くお前らしいな…」
青年はため息混じりにそう言うと、本を丁寧に元あったらしい場所へと戻し、こちらへと歩いてきた。
「俺の名前はアル、雷属性の能力者だ。」
「私はルナ、この子はラロノス。よろしくね。」
「………立ち話もなんだ、あそこの席で話そう。」
青年、アルはそう言うと近くの席まで歩いていった。ルナ達もそれに続く。
「ねぇ、いきなり本題なんだけど、本気で闇の世界に行くつもりなの?私、行き方すら知らないけど…」
「俺はそれを調べる為にここに来たんだ。でも、やっぱりそう簡単には見つからなかったよ。ただ、相応の魔力を持った上で、『闇属性』を所有しているなら、ゲートが開けるらしいが…」
「けど、まだなんの準備も出来てねぇし、仮に行き方が判明してもいきなり飛び込むのは危険そうだな。」
「あぁ、だからどういう備えをして行くかだけでも調べようと思ったんだが……やっぱり資料が見つからないんだ。」
やはり、闇の世界の資料などそう簡単には手に入らないのだろう。
「じゃあ、みんなで片っ端から本探してみる?」
ルナがそんな提案をした途端ーーー
「大変だーーーっっ!」
図書館の入口から、街の住民であろう人の声が聞こえてきた。
「何かあったのか!?」
ヴェンの問いに、住民は恐ろしい言葉を発した。
「魔物の大群が町に迫って来てやがる!」
「嘘っ…!?」
「みんな、今すぐ行くぞ!」
ラロノスのがそう言うと、全員が急いで外に駆け出した。
外に出たが、幸いにも赤黒い雲は迫ってきていない。
「何処から来る!?」
ルナ達はエレメントソードを召喚し、敵の襲撃に備えた。
小さな街での攻防戦の火蓋が、切って落とされようとしていたーーー
ーーーやっとここまで来れたわ。
あなたのこと、ずっと探してた。
私はあなた、あなたは私。
私達は互いに引かれ合う。
とにかく、一緒にこの闘いを乗り切ろうね
ルナ。
どうもみなさん、ペンと申します!
また新キャラ出しましたが、次回も新キャラ登場します!
そして、次回から物語も大きく動いていく予定です!
お盆休みを利用してなるべく頑張りますので、ElementSwordをどうぞ応援よろしくお願いします!