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霹靂の罠

 汗だくの夏休みの補習もほとんどが終わり、すでに八月後半だった。その後も、孝夫は、部室以外でも美奈乃を訪ねることが多くなった。その美奈乃の努力にもかかわらず、数学と物理に対する孝夫の理解力は中学三年レベルに戻ってしまっていた。しかし、美奈乃は和美を迎えにいく時刻が決まっていた為に、遅くまでは部室での活動できなかった。この日も夕刻、雷を伴った夕立の中だったが和美を迎えにいく時刻だった。何かを心配した孝夫が同行すると言い出していた。

(らいさまをバカにしたらいげねぇぞ。それにこの雨だから、変なとこあんだかんね、気をつけねば。事故の匂いがするべ」

 風と大雨の中、美奈乃は重い鞄のため、ぬかるんだ水たまりに足を取られながら歩いていた。孝夫は濡れるのも厭わず、美奈乃のカバンを取り、美奈乃の手を躊躇いもなく取って歩きはじめて居た。傘を持たないせいなのか、どっしりとした下半身のせいなのか、孝夫は風も雨も問題にせず、水たまりも深いぬかるみも無いかのように足が滑らずに前に進んでいく。

小岩駅から東へ十五分ほどで保育園に着いた。和美は保育園に一人残って待っていた―――半べその和美を頼んでもいないのに、いつの間にか孝夫がなだめていた。


らいさまがおっかなかったんだよな。ほんじゃあ、おれがおっとばしてやっから、だいじないべ。よしよし。」

「お兄ちゃん、強いの?」

「まぁ見てなって。ほりぃ」

 確かに孝夫の言う通り、夕立をもたらした雷雲は吹き飛ばされていた。涼しくなった街中を、孝夫はそのまま美奈乃の家まで二人を送り届けた。


 家に帰りつくと電話がかかっていた――――慌てて美奈乃が出ると警察からの電話だった。

「山川さんのお宅ですね。ご家族の方ですか。すぐに葛飾区堀切の民衆病院へ来てください。本田広小路での事故で直人さんが重篤、美代子さんも危ない状態です。」

美奈乃は半狂乱になった。

「なんで二人して事故にあうのよ」

 孝夫は戸惑いつつも美奈乃を支えベンチソファ―へ座らせた――――ふと孝夫は家の中にある祭壇を向き、何かを見たように驚いていた。その何かに促されるようにして美奈乃を励まして居た。

「落ち着こ。なんかがあっでも、だいじねえべ。おめには守ってくれる方がそこにいるべな。」

 その足元には、以前父親の直人が美奈乃に突きつけた十戒を刻んだ和紙が、かさりと落ちて来た。

「十戒なんて何の意味があるのよ。単に私が悪い子だといいたいだけじゃないの。それで事故にあって私にどうしろというのよ。結局私はほおっておかれるだけじゃないの。私にとって、これがなにになるのよ。……こんなものにかかわっている場合じゃないわ」

美奈乃は何処へ感情をぶつけて良いのか分からぬまま、孝夫に叫んでしまった。孝夫は黙って聞いている――――孝夫がその和紙を取り上げ何も書かれていないはずの裏側を見ると、いつの間にか炙り出しのような茶色の文字で言葉が書かれていた。

「見れって。その裏だべ。そこに書いてある言葉だべ。」

涙声の美奈乃は、その和紙を受け取りやっとその言葉を読み取っていた。

「恐れることはない、私はあなたとともにいる神

 たじろぐな、私はあなたの神

 勢いを与えてあなたを助け

 わたしの救いの右の手であなたを支える」


「病院さ行ご、一緒にいご。和美ちゃんは、おらが見ているから。」

 美奈乃は焦る気持ちをそのままに、孝夫たちとともに小岩駅へむかった。孝夫は和美を抱き上げたままついて来る。――――新小岩駅から綾瀬行きのバスで民衆病院へ着いたのは、夜八時を過ぎた頃だったろうか。

 ICUに担ぎ込まれていた直人と美代子の二人は、気管を切開され、意識のない状態だった。事故の原因は、大雨の見通しのきかない交差点で無理に右折しようとした対向車の10トントラックだと聞かされた。軽自動車の二人は、弾かれた車から投げ出され、普通なら即死と言うことだった。


 美奈乃は苛ついていたためか、祭壇の十戒の紙を握ったまま病院へ出かけて来ていた。我に返って握りしめていた十戒の和紙を拡げて、孝夫が言っていた裏を見ると元の白紙だった。

「確かに書かれていたのに……。」

孝夫に聞いても、『なんだっけ?』ととぼけていた。


「和美ちゃんはおらといっしょにいるからだいじねえべ。」

 孝夫はぽんぽんと美奈乃の肩を叩いた。励ましてくれたんだなと思いながら、美奈乃はICUへ身の回り品を持ち込んで入っていった。icuでは、既に処置が終わったらしく、また新たな搬送もなく、静かだった。ピピッという音のみが響き渡り、当直医と看護婦も詰所で束の間の休憩の時間である。

 看護婦に来訪を告げると、まず直人の方に案内された。処置の終わった後らしく、頭と上下肢は包帯でぐるぐる巻き、手術した後らしく、身体も包帯だらけだった。医者の言うには、頭蓋骨骨折と脳挫傷があり、予断を許さないと言うことだった。美代子の方は、内臓破裂のために危ないとのことだった。すでに脾臓は摘出され、すべき処置はやりきったとのことだった。

「二人とも今夜が山です。」

医者はそう言った。


 孝夫と和美のところに戻ると、和美が不安そうに聞いて来た。

「パパとママはどうだったの?」

 美奈乃は答えられなかった。孝夫が和美を抱き上げてゆっくり言い聞かせていた。

「二人とも痛い痛いなんだと。でも、もうだいじねえべ。何も悩むことも悔やむこともねえべ」

「何が大丈夫なのよ」

 美奈乃は涙声になって思わす声を荒げた。孝夫はやはり頭が悪い様子だった。何も根拠がないのに、どうして大丈夫だなどと言っているのか。頭がボケているとしか考えられなかった。


「聖霊が悲しんでるべ」

「どういうこと?」

美奈乃は訝しげに聞き、孝夫は遠慮がちに答えた。

「おめ・・・・ずっと怒ってるべ」

「だって貴方が……」

「今のことにかぎらねえ。このところずっとだべ。…オラは怒られても構わね……馬鹿だから。でも、せっかくお父さんお母さんがいるべ。そのお父さんに十戒を見せられたなら、そりは教えてもらったんだべ?。せっかくの十戒だべ。反抗して諍いの種を蒔くと、聖霊が悲しむべ」


 孝夫は美奈乃と父親の直人とのいさかいをなぜ知っているのだろうか。美奈乃は思い出した。彼は母親を亡くし孤独だったことを。孤独ゆえに親への姿勢に敏感なのかもしれない。

「ごめんなさい」

 美奈乃は父や継母に対する態度を振り返り、自責の念が生まれていた。しかし、美奈乃に今できることは、たぶん、父の指先に触れ、継母の美代子の顔を拭いてやることだけだった。

「母さん」

美奈乃は独り言のように初めて美代子をそう呼んだ。


 ふと、汚れものを持ち帰ることを忘れていた。そこで、もう一回戻って見ると、看護師たちが騒いでいた。

「意識が戻ったわよ。当直医はどこなの?」

 何事かと看護師に聞こうとすると、逆に捕まえられた。

「あなたのお父さんお母さんの意識が今戻ったのよ」

「エッ?」

 二人のところへ戻って見ると、確かに二人はそれぞれ美奈乃の顔を見て涙を流していた。看護師の一人が美奈乃に話しかけてきた。

「意識が戻ったから、ひと段落よ。多分もう大丈夫よ。今日は泊まるの?」

 しかし、美奈乃は何が起きたのか、わからなかった。二人とも助かりそうだと言うことには違いなかった。やっと和美と孝夫のところに戻って見ると、二人とも寝入っていた。

「孝夫君。うちの両親、助かりそう」

 眠そうな和美は、少しおいてから思わず歓声を上げていた。しかし、孝夫は寝ぼけたことを言っていた。

「そんなら、挨拶せねば。いぐべ」

「まだ意識が回復したばかりよ。でも、なんでわかったの?」

 眠そうな顔を上げて、孝夫はこたえた。

「なんのことだべ?」

 ぼけているのか、とぼけているのか、分からない男だった。しかし、不思議なことに雷も事故も全ては孝夫の言う通りあと一歩で留まっていた。


 病院から美奈乃達を送り届けた帰り、駅に降りたところで孝夫は御使いに腕をつかまれ、こっぴどく叱られた。

「孝夫、ひとを責める資格があるのかね?」

「ごめん……。」

「これで、お前はもうしばらく那須へは帰れないだろう」


 9月になり、直人と美代子はまだ退院できなかった。10日には退院準備のための病棟に移る予定となったものの、直人には麻痺が残り、美代子は無理ができない体になった。つまりしばらくは、家事賄いは美奈乃が全て対処する必要がある。ギリギリに登校し、帰宅も早くなり、和美のお迎えも必要である―――しかし、この日はすっかり遅くなってしまった。美奈乃は、試験勉強で夕食は済ませてしまう予定だったが、7時近くに学校を出ることは、かつて無かった。そんなこともあって、吉田先生は、孝夫に小岩駅まで送るように、指示していた。

「いつも教えて貰っているのだから、送っていけ。くれぐれも山川さんに事故のないように。自転車は預かってやる。」

「はい」

 孝夫は、直立不動の堅苦しい返事をして、その雰囲気のまま、美奈乃の後をついて歩き始めた。


 いままで、二人のみで過ごすことは今までほとんどなかった。

「後ろを歩くなら、あまりドキドキしなくて済むかなあ…」

 孝夫はそう愚考していた。他方、美奈乃は錦糸町駅迄の途中で少し疲れを覚えていた。

 なぜ、孝夫は横に来てくれないのだろうか。あの大雨の日に美奈乃を守るためとはいえ、孝夫は美奈乃の手を取っていた筈だ。

「横に来ないの?」

 孝夫は真っ赤な顔をしたまま立ち止まってしまった。孝夫はそれでもかっこ良く思われたいと思い、少し気の利いたことをいってみた。

「山川さんは、こわいべ。(疲れたでしょうという意味。)」

 美奈乃は孝夫を睨みつけた。そして、美奈乃はもう口をきかなくなってしまった。何故怒ったのだろうか----孝夫には謎だった----孝夫は仕方なく後を歩いて行った。


 丁度、江東楽天地で一杯浴びた酔客で、駅のコンコ―スはごった返していた。帰宅する男たちによって、前を進んでいた美奈乃は、小さな体が重いカバンに振り回され、帰宅の男達に吹っ飛ばされそうになりながらも改札へ入っていった。しかし、改札横に弾かれて動けなくなってしまった――――無理やり進もうとした美奈乃だったが、足がすくんでいる。切符を買いつつ美奈乃の姿を追っていた孝夫は、美奈乃が動けなくなったことに危なっかしさを感じた。というのも、親を亡くして以来、彼は自然に自らの立ち位置を全体の動きからみる癖が付いている。そして、川の流れのように駅の動線を見て取った孝夫にはどの方向に進めばよいか見えている。孝夫は流れを見ながら美奈乃の前まで来ていた。

「だいじないかい? おらのあとにはやぐこ!」

 孝夫は美奈乃を後ろに庇いながら歩きはじめた。それでも、美奈乃は速い人の流れに押されてつまづいてしまう――――その気配にすかさず孝夫は美奈乃の腕を掴んでいた。孝夫は人の流れに逆らいながら美奈乃を立たせる。孝夫は手を離そうとすると美奈乃は孝夫の腕を掴んで歩いていた。筋肉質の腕と安定した孝夫の足腰は、あの大雨の時の様にまるで微動だにしなかった――――ただ、動きが遅かった。

「あの、もっと速く動けないかしら?。」

「はやぐしろ―っつったぅて。ほんだって、へんなとこばっかしいぐとアブね―しな。混んでんだきっともかまわね―け? そんなら、こ!」

 孝夫は美奈乃の手を取って突然速く歩きはじめた。

「待って! 転んじゃうわよ」

 転びそうになった美奈乃は孝夫のベルトをつかんでいた。

「へんなとこあんだかんね。やっぱし、えらいんだんべや。こわいんでねえの?」。

 美奈乃は、孝夫が言っていることが分かったような気がした。笑いながら言っていたから……。

「へんなところは嫌だ?。私が触っている?。私が偉そうにしている?怖いだなんて失礼な!。」

 美奈乃は思わず孝夫の腕をつねっていた。

「いっで―。なんでちんにぐった?」

 その言葉を無視しながら、今度は彼女は鞄で孝夫を押して歩き始めた。

「この田舎っぺは、お父さんと同じ雰囲気なのか、なぜか頭にくる。」


 小岩駅に着いた時、もう夜の八時に近くになっていた。保育園から和美を迎えて歩きはじめた土手沿いの道は暗闇である。台風が近いためか、冷たい風が急に吹きはじめ、雷鳴が響きはじめていた。高い建物のない江戸川河川敷沿いにある為、孝夫は落雷の危険を感じていた。

 孝夫は、美奈乃たちをそのまま家まで送っていった――――大粒の雨が殴るように降りはじめ、ようやく3人が逃げ込んだ山川家の小さな家は雷鳴に揺れはじめている。誘導雷だろうか、パシッという音が外に聞こえ、一帯の家々の明かりも街路灯も消えさり、暗闇に閉ざされてしまった。

 玄関に立ち尽くした美奈乃は、その暗闇の中で非常灯を持ち出し、周りを照らす。その光で一瞬、バスタオルにくるまった3人の服が濡れて透けた光景を映し出していた――――その光景がすぐに暗闇に隠されたことを、孝夫は感謝した。稲光と雷鳴の響く外は未だ激しい雨だったが、孝夫は早く若い娘たちの居るこの家から出たかった。

「んじゃ、もういぐから。」

「待って!。外はまだ、危ないわ。風邪引くから。服を乾かさないと。」

「どうせ、まだ雨で濡れっから。いいって。」

 孝夫の腕をつかんだ美奈乃の手は震えている。直人と美代子が居らず、雷と雨に揺れる小さな家のなかで、美奈乃と和美は不安で震えて居た。孝夫は、怖がる美奈乃や幼い和美を振り切って帰れなかった。

「わがったから。・・・・なら、あがらしてもらいます。」


 しつこい雨と雷。3人はもう一時間も玄関の上り口で過ごしていた。孝夫はしがみついている和美を左手に負いながら、疲れ切った美奈乃の肩をトントンと優しく叩き続けて居た。そうしてやっと二人は落ち着きを取り戻していた。

「クヴィルめ…。だが、もう心配ねぃ。だいじだ。二人とも風邪ひくといけね。さっさと風呂さ入ってこ。」

 雨はひどく降り続いているものの、美奈乃にとって孝夫がいることはありがたい。暗闇であっても孝夫がいる安心感から、美奈乃は和美を浴室に連れていくことができた。孝夫はそれをみとどけながら、靴を履いたまま玄関で所在なく過ごしていた。美奈乃たちが風呂から出てしまった時点で、さっさとこの家を出ようと、ぼんやり考えていた・・・・。


 雷が山川家のすぐ近くに落ちた。閃光と爆発のような雷鳴。大きな爆裂音が小さな山川の家を振動させる。その途端、幼い和美が浴室から孝夫のところに逃げ込んできた。

「和美ちゃん、待って」

 美奈乃の呼び止める声が億から響いた。そこへ二度目の落雷、そして爆裂音と振動。美奈乃はたまらず孝夫のもとへ縋り付いていた。照明がないとはいえ、閃光に照らし出された和美と美奈乃は、裸身に泡がついたままである。慌てた孝夫は土足のまま駆け上がり、足元にあった自分のバスタオルを広げて美奈乃を包み、和美を抱えて浴室に連れ帰した。・・・つもりだった。

 もう浴室についたはずなのに、バスタオルでくるんだ美奈乃も和美も孝夫にしがみついたまま離れない。孝夫は、大きな戸惑いを感じつつ美奈乃の頭と髪をなで、小さく独り言を発していた。

「この家とおらたちにわすらしてんじゃねぇ。霹靂の正体、おめえだろが。下がれ、クヴィル。」


 雷雨が落ち着きを取り戻したころ、孝夫は美奈乃の顔を覗き込んで静かに言った。

「あ、あのさ、靴はいたまんまだから、玄関さ行かしてくんねかな。」

 美奈乃は我に返ったようにバスタオルにくるまったまま、和美とともに孝夫から離れた。孝夫は、そそくさと靴を脱いで土足を拭き取りつつ玄関に戻った。


 和美、そして美奈乃が寝入ったのは、深夜になってからだった。その後、孝夫は鍵を閉めつつ、そおっと玄関を出て行った。

「けえるべな。」

 既に台風は過ぎている。ところどころ残る雲の間から、星の瞬きが孝夫に注いでいる。もう、午前三時を過ぎていた。


 その日の未明、孝夫は叔父が気づかないように玄関に入り込んだ。しかし、始発電車より早起きの叔父はすでに起きていた。

「オメ―の学生服、石鹸の匂いがするぞ。どこから帰って来た?。」

 孝夫は、一日中自分のにおいを気にしていた。石鹸のにおいと美奈乃の匂いがずっと消えなかった気がしていた。

 美奈乃は孝夫が自宅に帰りつくころに、早々に起きた。浴室や玄関を片付ける為だった。二人の匂いと熱が篭っているかのような浴室、乱れたシ―ツやタオルケット、長い髪が残された部屋は、美奈乃の心を再びかき乱した。

 和美を預けてから登校して来た美奈乃と、珍しく気後れした表情の孝夫は、一日中無言だった。

そして、二人は放課後には早々に吉田先生のいるはずの部室へ行ってしまった。しかし、顧問の吉田先生はまだ業務が終わってないらしく、部室には来なかった。孝夫は、心のうちから流れ出る衝動が深く溜まりはじめていることに当惑している、まるであの短歌のように。美奈乃は黙って孝夫の座っている長椅子で、孝夫に寄り添っている―――その孝夫は昨夜の2人の出来事を黙っていることができずに、短い句を口にした。


雨の香の強き流れの髪の色


 孝夫はこの句を再び三度口に出す度に、美奈乃の長い髪の匂いを思い出していた。その句を横で聞いていた美奈乃は昨夜孝夫の手で髪をかき乱されたのと同じように、心をかき乱された。二人はそんな十代の衝動の扱い方を知らなかった――――しかも2人にとって自分の心をかき乱す相手が目の前にいた。――――彼らは衝動という霹靂の罠を遣り過すには、若すぎた。

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