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「あなたが私の妹?」
朱雀月子の長女詩子は木で鼻をくくったような口調で言い放った。
確かに似ても似つかない。朱雀月子はどちらかというとバタ臭い顔立ちだったが、詩子は見事に、日本人形のように整った端正な顔立ちだ。
というかあんたこそ朱雀月子の遺伝子どこにやった。
そう言いたくなるくらい似ていない。
確かに絶対姉妹だと思わないよね。
ジャックは置物と化して、ライムの隣に座っている。
「まあ、確かにお母様に似通った顔立ちだこと」
そう言って手を伸ばしライムの顔を思いっきり引っ張った。
痛みをこらえてライムは必死にその手を振り払った。
「何すんのよ」
思わず地が出たが、そんなことは構っていられない。
「あら、整形じゃないんだ」
振り払われた手を撫でながら月子はそんなことを言う。
「そうね、お母様の子供時代の写真をどこから引っ張り出してきたのか、大概それを参考に整形してたわね、中には私そっくりに整形してきた人もいたっけ、ちょっと気味が悪かったわね、成長期の子供に整形を施すと後が大変なのにね」
言われた言葉にドン引きする。
どうやら何年か前からこの子が夢子だと連れてくる人が引きも切らなかったらしい。
成長期の骨格が完成していない子供に整形手術を施す害くらいライムでも知っている。
ライムがやったのはかなり癖の強かったらしい髪をパーマでそれに似せたくらいだ。
「その辺にしておけ、詩子」
そう言いながら部屋に入ってきたのはお内裏様と呼びたくなるくらいこちらも日本人形顔の青年だった。
朱雀智仁、朱雀家の跡取り息子、銀のスプーンを咥えて生まれてきた王子さま。
さらにその背後に老けた日本人形顔の男性が現れた、
額あたりや口元にうっすら皺が出ているが髪は黒々として実年齢以上に若々しく見える。
朱雀昭仁、現朱雀家当主。そして十五年前の悲劇以来、彼は妻を娶っていない。
「ほう、君が新しい夢子かね」
そう言いながら昭仁はライムの手を取った。
「今までで二番目に月子に似ているかな」
「整形なしですから、一番をあげてもいいのでは?」
詩子が補足する。
「あの、信じていただけないのでしょうか」
ライムはうなだれた。
眼がしらに力を入れれば涙を絞り出すことができる。その表情を見られないためにうつむいたのだ。
頬を伝う涙にどれほどの威力があったかは知らないが、三人はとりあえず、部屋にとメイドに案内させることにしたらしい。
置物と化していたジャックがようやく朱雀昭仁に声をかけた。
ベッドと机のあるこじんまりとした部屋にライムは通された。
物珍しそうにきょろきょろしているように見えるようにしながら、周囲をうかがう。
あの調子ではまだ疑われているだろう。隠しマイクやカメラぐらい仕掛けられているかもしれない。
「ふん」
まずは怪しまれずに外出する。
ノックの音にライムはそっとドアを開けた。
ジャックはそのまま入ってくると、筆談で適当な会話をしながら状況説明をしてくれた。
「とりあえず、馴染むまで詩子嬢といろいろと出歩くことになるな」
『とりあえず、いま新規事業の話とか聞き出せそうだ、しばらくお前は動けない、チャチャに連絡を頼む』
チャチャは不法入国した西洋人女性だ。本名はこれまた知らない。
あの派手な金髪に緑の目のチャチャにどうやって目立たず行動できるというのか。
「大丈夫だ、きっと」
そう言ってジャックはライムの手を取った。
ライムは感極まったように顔を伏せて泣きじゃくった。
カメラがある前提の二人の行動だった。