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19

 ライムは片っ端から電話をかけまくった。

 新聞社から警察消防署、果ては探偵までいくらでも思いつく限り、

 結果として朱雀家は押すな押すなの大騒ぎになった。

 悪戯という可能性は考えても相手は朱雀家なのだ、念のため言っておくに越したことはない。

 そういう志向のもと、様々な業種の車や人で周囲の道はごった返していた。

 それの応対する人間もてんてこ舞いだ。そのてんてこ舞いの隙を伺いながらライムは朱雀邸の中から脱出する機会をうかがっていた。

 お手伝いをしている中年女性が新聞記者に詰め寄られている背後を狙って、玄関を突破する。

 玄関から出ればこっちのものだ。すばしっこさには定評がある。

 ライムは人でごった返す玄関前のちょっとした公園ほどもある前庭を駆け抜けた。

 そして、適当な車を物色する。

 運転手が離れて誰も載っていないワゴン車を見つけると、すぐさまそれに飛び乗って発進する。

 背後で誰かが叫んだ気がした。しかしそれでためらう気は毛頭ない。

 運転はジャックに何度か教えられていた。もちろん無免許だ。

 年齢もそうだが、戸籍謄本などを取り寄せられない身の上だ。自分が運転免許を取得する日は永遠に来ないと悟っている。

 スマートフォンをダッシュボードに置いた。ジャックのところまで捕まるわけにはいかない。


 ジャックは今までの展開がさらに進んでいた。

 たとえるなら一難去ってまた一難。

 先ほどまでジャックに取引を持ち掛けていた男はジャックの目の前で転がされている。

 そしてジャックはもとよりチャチャも月兎も眼中になく。全身から私は危険人物ですよと主張している男が武器を構えて立っていた。

 多分男はずっとつけられていたのだ、そして言質を取った段階で踏み込んできた。

 疑われていたことに気が付いていなかったのかもしれない。

 ボディガードとして連れてこられた連中もあっさり始末された。雇ってもらう人間を間違えたなと彼らの冥福を祈る。

 もしかしたらこいつが山口真一を殺したのかもしれないなと脳の片隅で考えていた。

 いい加減自分も限界かもしれない。

 今まで夢子を装った連中やネタにした連中で死者はいない。最低でもそれぐらいは調べていた。だからいざという時も命だけは助かると思っていたのに。

 まったく誤算だらけだ。

 よりにも酔って本物をつかんでしまうなんて。

 多分これから自分は殺されるんだろうな。そう考えて案外落ち着いている自分に気付く。

 逃げられる可能性なんて、ゼロコンマもない。そう相手は全身から漂う気配で主張していた。

 あまりに実力がありすぎると、恐怖を感じる神経すらマヒしてしまうんだな。

 月兎はただ茫然としている。

 チャチャは悟りを開ききった状態で静止している。

 これで終わりか。

 そう思ったとき、男は無造作に撃ち殺された。

 薄暗い中どす黒い血が噴き出すのを無造作に目で追う。

 先に殺された連中のものと合わせ、血の臭いは吐き気を催すほどになっているが、それを気にする時間ももう残されていないだろう。

 その時、シャッターをワゴン車が突き破ってきた。

 ワゴン車の全面はへしゃげていたが、走るのに支障はないようだ。

「ジャック、乗って」

 そこにいたのはある意味諸悪の根源であり、元が付くかもしれない仲間だった。

 考える間もなくチャチャがワゴン車に取りつく。

 月兎も同様に。

 ジャックは力ない笑いを浮かべてワゴン車に飛び乗った。


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