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 詩子も昭仁も智仁も顔を出さない。

 ライムは部屋にこもっていた。部屋の鍵はかけられていないが、外出は許されていないので実質軟禁に近い。

 食事は部屋まで運んでくれた。

 相変わらず、味付けの薄いヘルシーな和食だ。

 だし巻き卵は写真に撮りたいくらいきれいな卵色だが、添えてある大根おろしはライムは好きではなかった。

 麩の入ったお吸い物、漬物、うんざりする。どんなにちゃんとした料理人が作ったにしろ、ライムの嫌いな食べ物ばかり。

「ハンバーガー食べたい」

 ジャンクフードを恋しく思いながら、それでも食べ進める。

 食べられるときに食べておけ。というのがサバイバルを生き抜く基本だ。どんな嫌いなものも口に入れることはできる。

 ライムはスマートフォンを弄ぶ。これを取り上げないというのは何らかの意思表示なのか?それを考えながら、ライムはネットサーフィンをしながら情報を漁る。

 ジャックはだいぶ遠くまで行ってしまった。

 捕まえるには足の確保が必要だ。

 ペロッと唇をなめる。

 家族なんか最初からいない。

 くしゃっと自分の髪をかき上げる。

 ライムは食べた食事のお盆を持ち上げて、扉を開けた。


 扉の前には秋保とが立っていた。昭仁はそのままお盆を受け取る。

「ああ、食事は全部食べたんですね」

 そう言ってにっこりと笑う。

「あのさ、どうして詐欺とかやってた不良少女を娘として受け入れられるわけ?」

「ああ、そんなこと気にしたってしょうがありませんから」

 昭仁は笑顔を崩さなまま続ける。

「そもそも朱雀家がどうしてこんなに大きくなったと思っているんですか?」

「え、それは事業で成功したから」

「それだけじゃありませんよ、それだけで成功するほど、世界は甘くない、答えは悪いことをしたからですよ、うちの親族がしてきたことを考えれば、むしろあなたは善良なほうでしょう」

 言われて迫力負けしたライムはなんだか敗北感にまみれて扉を閉めた。


 ジャックはコンクリート造りのガレージのような建物の中にいた。

 広いが中はがらんとしていて、元あったものが持ち出されているようだ。

「ここで取引ねえ」

 ジャックは胡散臭い笑みを浮かべる男を見つめた。

「あまりいい情報は得られなかったんだがね」

「いや、あの娘の情報だけでいい」

「そっちもあんまりないよ、互いに自分の情報は話さないのが鉄則でね」

 それは嘘だ、なんとなく聞かなかった、話さなかっただけだ。

「とにかく、君たちは貴重な情報源だからな」

 情報を吸い取った後は同じだなと、ジャックは心中だけで呟く。

 とにかく、こちらは朱雀本家とどれだけ違うだろう。

 それだけを考えた。

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