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 ずらりと並んだ黒服の男たち。その全身から堅気じゃないというオーラを発していた。

「今は殺すつもりはない」

 唐突に言われた言葉にジャックは目を瞬かせた。

「何が目的だ」

「お前たちを生かしておく、利用価値があるからな」

 朱雀家のスキャンダル狙いに先に見つかったらしい。

 おそらく内部抗争の敵側。

 即殺される恐れはなくなった。

 最も用済みになればすかさず殺されるんだろうが。

「あれ、スキャンダルって、対象はライム? でもライムは別に」

 以外に頭の回転が速いチャチャが状況を分析する。

「もしかして」

 朱雀月子を殺しましたか? そう言おうとしてジャックは言葉を噤んだ。

 聞いたところで一文の価値もないことだ。

 月兎はノートパソコンを抱きしめたまま無言を通している。

「それで朱雀家ではどうなっているんだ」

 とりあえず気になっていたことだけは聞いておく。

 ひときわ大柄な多分この中ではリーダー格の男が答えた。

「何もない、とりあえず、あの娘は外に出してもらえないようだが、それ以上のことはない」

 取り合えずライムの無事は確認できた。

 無事じゃない可能性のほうが低かったが。

 探し求めていた本物の夢子が傷つけられるはずがない。

 もっとも、今ここにいる連中はその夢子を傷つけたくてしょうがないようだが。


 ライムは隠し持っていたスマートフォンを手にしていた。

 布団をかぶり、布団の中で操作する。

 ジャックのスマートフォンにはGPSがついており、ライムのスマートフォンから代替の位置が確認できる。

 とりあえず、県境を目指して逃げたようだ。

 しかし、今は動いていない。どこかに潜伏しているのか、それとも誰かに捕まったのか、それとももう死体になっているのか。

 軽く首を振って、ライムは気を取り直す。

 今からそんなことを考えていてどうする。

 今、ライムは朱雀邸から出してもらえない状態だ。

 ここからどうやって脱出するか。

 スマートフォンをしまって、布団からゆっくりと出る。

 いつの間にか置いてあるものがあった。

 一冊の大判の本だ。重厚な分厚い表紙に書かれたタイトルは梁塵秘抄。

 ページをめくって、めくったことを後悔した。

 古語で書かれた詩集だ。

「それは月子さんの持ち物だったんですよ」

 そう言って現れた田野はたぶん父親の朱雀昭仁。

「これを読むとよく眠れると言っていました」

 確かにライムが読み始めれば五分で夢の国に行くだろう。

「暇はつぶれるでしょう」

 そう言って昭仁は出ていく。

「一つ聞いていい?どうしてお母さんと結婚したの?」

「出会ったからですよ、きっかけなんかどうでもいい。例えば両親の不審死を探りに来た相手だとしても会ってしまえば同じです。

 それを知るのは月子さん、そして私が死ねば誰にもそれは知られない、そんなものがあってもいいでしょう」

 不意に柔らかく笑った。だが、その笑みは張り付いたように凍る。

「獲物が釣り針にかかったから、そろそろでしょう」

 ジャックは、誰かに捕まったらしい。

 それだけはライムに分かった。


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