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 慌ててジャックのおんぼろ小型車に三人は乗り込んだ。

「いいのかな」

 チャチャは不安そうに背後を見る。

「ライムを置いて行って本当に大丈夫なの?」

「少なくとも殺される恐れはないよ、俺たちと違ってな」

「殺されるってどういうことだよ」

 助手席に座った月兎がかみつく。

「俺たちはとんでもない当たりくじを引いたんだよ」

 ジャックの声は苦渋に満ちていた。そしてどこか痛みをこらえるような顔をしていた。

「当たりくじ?」

「あのDNA鑑定結果だが、月子とライムの遺伝子は五十パーセント以上一致していた」

 チャチャは言われたことが呑み込めないようだった。

 目を瞬かせてジャックの顔を覗き込む。

「そんだけ一致してたら、一親等以下の可能性はないだろう。つまり行方不明の夢子嬢はライムと同一人物ってことになる」

「ええと、それじゃもしかして、詐欺が成立しないんじゃないの?」

 チャチャがどこかすっとぼけたことを言った。

「だったら逃げることないじゃない、だって偽物をつかませたわけじゃない、本物だったんでしょう」

 月兎は振り返ってチャチャの顔を覗き込む。その顔はこの女は正気なのか疑う色が浮かんでいた。

「本物だからまず過ぎるんだろう」

 月兎はジャックの言わんとしていることを薄々感じ取っていた。

 確かにこれは早急に逃げなければいけない事案だ。

「すっごく簡単な問題なんだ。もし朱雀家のお嬢様が何らかの不始末をしたとしたらどうする?」

 質問の形をとっているが、それでチャチャになんとかものを考えさせようとする行為だった。

「もみ消そうとする?」

「そう、一番簡単なもみ消し方法は今の場合は俺たちを消すことだな」

 ジャックは吐きそうな顔をしてそう言った。

「私達を消す?」

「そうやって、ライムが、朱雀家の夢子お嬢様が、詐欺グループの一員だったという事実を葬り去るつもりなんだ」

 ライムが本物の夢子だったと聞いた瞬間月兎の脳裏に浮かんだのはその事実だった。

 自分たちは朱雀家にとって知ってはならないことを知ってしまったと。

「これから、どうなるの」

 チャチャはようやく事態が呑み込めたらしく力なく呟く。

「とりあえず県境は越えよう、いざという時のためにガソリンは常に満タンだ」

 明らかにカラ元気な声でジャックが宣言する。

 朱雀家が本気になれば、日本どころか、世界を回っても逃げ切れるかどうか。

「そうか、いつか来る日は今日だったんだね」

 チャチャが気の抜けた顔で呟く。

「あの時、家を飛び出した時からこういう日が来るとわかってた、でも楽しいことが一つもないあの生活を送るのは御免だとと思って、だから、後悔はしてないよ」

「ちょっと待て、まだ早い、まだあがこうぜ、チャチャ」

 ジャックはすでに悟りを開きそうなチャチャをいさめる。

「でも、なんか遅いかも」

 月兎はバックミラーに写る黒塗りの車を指さした。

「ずっとつけてきている」

 

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