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 ライムは部屋に戻るとテレビが無くなっていることに気付く。

 置いたはずの小さな机の上にテレビの姿は影も形もない。

 小さいといっても仮にもテレビだ。部屋の中にあればすぐに気が付く。

「まずい」

 テレビとして使える盗聴器だと分解でもされればすぐに気が付く。

 ライムの顔から一気に血の気が引いた。

「どうしよう」

 慌ててもどうしようもない。

「まさか証拠をそろえるまで泳がされていた?」

 盗聴器を持ち込めば、確かに動かぬ証拠だろう。

 そのために詩子はお茶や生け花の稽古だと、ライムをこの部屋から引きはがしたのだろうか。

 とにかく動きやすい格好をしなければ。

 慣れない着物姿のままでは逃げることもままならない。

 おそらく高価なのであろう着物を乱雑に脱ぎ捨てると、普段来ているTシャツにジーンズといった衣類は持ち込んでいなかったので、プリーツスカートとブラウスといった格好に着替える。

 それから何とかこの屋敷を出なければならない。

 そっと廊下をうかがう。

 そして家の中の防犯カメラの存在を思い出す。

 廊下の曲がり角、それから窓の付近には必ずカメラが設置されている。

 カメラを破壊しながら進めばと考えても、カメラを破壊すればプロの警備保障が駆けつけてくるだけだろう。

 ライムは思案する。このままこの場にいても捕まる。しかし逃げようとすればそれはそれで自ら暴露するに等しい。

「どうしました、夢子さん」

 朱雀昭仁がいつの間にか扉の前に立っていた。

 だらだらと冷や汗が止まらない。

「ちょっとお話ししましょうか」

 昭仁の声は穏やかで優しげですらあった。だからこそ恐ろしい。

 ライムは扉を開けたものか逡巡しながら扉の前に立った。


 ジャックは月兎の真後ろからパソコンを覗いていた。

「これ、差し替えたデータの元データだよな」

 目に留まったそれを指さす。

「まずいぞ、これ」

 ディスプレイを指さして、しばらく考え込んだ。

「チャチャ、月兎、これから撤収する」

「ライムはどうするの?」

 チャチャがわけがわからないといった顔で訊ねた。

「ライムは置いていく」

 月兎とチャチャの顔が共学にゆがむ。

「なんで、わからないよジャック」

「ライムを回収する時間もないのか」

 詰め寄る二人を押しとどめながらジャックは言い切った。

「ライムを助ける余裕はない」


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