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序章

初めまして。

伊勢日向と申します。

今作が初投稿ゆえ拙い文章で申し訳ありません。

もっとも、楽しんでいただければ幸いです。

気ままな更新となります。

「またつまらん展開入れやがって」


 もう何回目になるか分からないセリフを吐きながら、俺こと黒野(くろの)矜持(きょうじ)は本を閉じた。

 学園ものにおける夕方。放課後の校舎裏。告白。スルー。涙の逃走劇の決まりきった5W1H。

 

 誠につまらん。本当にありがとうございます。


 もうちょっと発想を飛躍させてだな、AM12時きっかり科学の授業中。教室の窓側3列目のあの娘に。黒板に化学式を書いて、=で好きと書いたらその娘から間違ってるぞ、と真面目に言われる。

 当然教室内は爆笑の渦。

 告白は見事に失敗。

 ライトノベルなら、このくらいやって欲しいものだ。


 ライトノベルにおける恋愛要素など、主題の引き立て役でしかないのだから。

 特にヒロインが乱立しているような作品。

 人間同士の恋愛関係のこじれなどリアルじゃ流血沙汰、よくて裁判沙汰だろう。

 そんな状態を穏便に済ますにはギャグパートに逃げるしかない。

 大抵、修羅場は第三者の介入か、ギャグという魔法によって奇跡的に死傷者が出ずに終えることができる。

 ならばせいぜいギャグで、読者をニヤニヤさせていただきたい。


 別にライトノベル全般に発想力の根本的な欠如が見られる、と言っているわけではない。

 初期作品とかはかなり好きだ。

 病院でひねくれたアベックが月を見てるアレとか。

 人助けするのが趣味の死神が出てくる短編集とか。


 しかし、しかしだ。

 これは、これだけははっきりと無いと言い切れる。


 そう、俺が今読破した作品『なんで僕のラブコメがこんな終わり方になるのだろうか』である。

 とりあえず最初に言いたいことは、なんでタイトルが疑問形なんだよということだ。

 なんかとりあえず長くして最近の流行っぽく狙ってみましたとは一応伝わる。


 まったく、最近の作品というのはやたら名前が長い。

 しかも略称で呼ぶようになるとなんのことか分からなくなる。

 ほんと『ガイル』とかなんだよ。『はがない』ってなんだよ。

 面白いよって進められても知らねえよ。新種の妖怪の名前かと思ったわ。

 ……タイトルの発想でインパクト与えるのって重要だけどな。


 ともあれ疑問が投げかけられているのならば、答えがなくてはいけない。


 結論。

 主人公がヘタレだから。


 そもそも俺が普段は手に取らないような、この地雷臭漂う小説を手にとったのは、この主人公がヘタレであることに理由がある。

 実はこの小説、近年稀に見るバッドエンドな小説なのだ。

 ストーリーとしては高校へ入学した主人公が、3人のテンプレ美少女女子高生と出会い、すったもんだの末に別れるという内容である。

 振られた主人公はそのヘタレ属性ゆえに、なんとももどかしいラブコメに描かれながら悲愴に暮れるのである。

むしろ原作はギャルゲーのバッドエンドをそのまま書籍化したようなものだった。

 

 そんなライトノベルにあるまじき反逆性を秘めていたのでつい、俺は手を惹かれたのであった。

 つい、やってしまった。

 この一言である。


 買ってもちろん後悔はしている。650円あれば人気の漫画が一冊買える。

 当然ほとんど売れてない。

 本屋には山積みだ。


「本屋で一週間もたっているのに、一番上に発売の紙張っていた時点で気づけよ俺……」


 とりあえず口が開けば文句しか出ない。

 

 なによりも褒めるとこがないのが最大の問題だ。

 時間を無駄に浪費した自分への後悔で叫びだしたくなる。

 別の本を読んでいたらきっと、もっと有意義な時間にできただろうさ。


 ともかく、こういう時はさっさと寝てしまうにかぎる。

 そう決めて枕もとの時計を見ると、すでに午前3時を回っていた。

 俺は徹夜でこの小説、5巻全てを読んでいた訳であった。

 まったくよく5巻も続いたものである。ジャンプなら一か月で打ち切りだ。


 俺は風呂を上がって後布団へ入り、ずっとこのくだらない小説を読んでいたのだった。

 ちなみに、俺は一人暮らしである。

 でないとこんなことできない。

 俺の親は節電とうるさく、なんと我が家は消灯時間が決まっている。

 現在、両親は旅行に出かけており、俺はかなり自由に生活を送れるのだ。


 ライトノベルならば誰もが憧れるこのシチュエーション。

 なんの脈絡もなくラブコメが家に押し掛けること間違いない。

 しかし、残念ながら俺が通っているのは男子校であり、さらには姉妹、幼馴染といったものは存在しない。

 さらに言うと、両親は一泊二日の旅行だ。明日には帰ってくる。

 まあ、そう簡単に出会いがあるなら誰も苦労はしないものである。


 朝の3時まで起きていたとなれば、睡眠欲がすぐに体を走り回る。

「明日も学校あるし、少しでも睡眠をとるべきだな……」


 俺はあくびをしながらスタンドの電気を消し、布団にもぐりこんだ。

 明日が休日ならいいが、あいにく水曜日であった。

 しかも一時間目から体育。

 学校も何考えているのやら。

 一時間目は座講で睡眠時間をとらせるだろ、普通。


 そのようにどうでもいいことを考えながら俺は目を閉じた。

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