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グッドモーニング!

作者: 網野雅也

朝のラッシュアワー、サラリーマンは地獄だ。

私は電車の扉前に陣取っていた。

一息ついて、のっぽの俺は上から見下ろすように周りに視線を配る。

みなさん不快な顔ですし詰め状態に耐えている。

私だけが大変じゃないのだ……と、考えていると、ふと視界に奇妙なものが入った。

左側に40がらみのサラリーマン風のハゲ頭の男性が立っていて、その斜め前にスーツ姿の30代の女がいるのだが、なぜか、左足を背後に折り曲げ黒いパンプスをはいた片足だけで立っているのだ。

パンストをはいたセクシーな足がまるみえ、それどころかスカートもめくりあがりパンツがみえそうだ。

なんであんな格好をしているのだろうか。

あられもない姿に目を覆いたくなるが、なんだか妙な高揚感も同時に湧き起こる。

も、もしかして、露出狂なのだろうか。

私の胸は高鳴る。

いかんいかん、妻も子もいるし、いい年こいているんだからと言い聞かせながらも、この素敵な足の持ち主の顔が気になって、体を

女性側にずらす。

  ショートカットの女性の目鼻立ちは整っていてまずまず美人だ。

しかし、その綺麗な顔はどことなく苦しそうにゆがんでいる。

心なしか体全体が力んでいる様子。

にも、かかわらず、時々、苦笑いが赤い唇をつけた口元に悩ましげに浮かぶ。

私はその状況からまたひとつある考えが浮かんだ。

彼女の足にうんこがついているのだ

列車に入ってから、どこかで踏んだ犬の糞の状況を確かめようとしたところ、ぎゅうぎゅうに人が入ってきて足が下ろせなくなったのに違いない。

しかし、妙だ。黒いパンプスの位置がおかしい。男性が大事そうに股間のあたりに下ろしているカバンの裏に足先が深く入り込んでいるのだ。

なぜあんな風にもぐりこんだのだろうか?

押された衝撃で入りこんだのか?

もしそれならカバンに阻止されそうなものだが。

いや……分かったぞ。私はまた鼓動が高鳴るのを感じる。

左右に視線をちらしてある妄想が浮かんだ。

電車での痴漢は男性ばかりではないということだ。

女性も男性の股間に足をあてて痴漢をすることもあるに違いない。

昔と違って男女平等の時代。

どおりで苦痛に顔を歪めながらも、時々、口元がほころぶわけだ。

私はその姿をしばらく眺めていたが、ふとある矛盾点に行き当たった。

 黒いパンプスのつま先が高すぎないか。

股間を狙うにはずれている気が。

それに40がらみの男性の顔は女性に痴漢を受けているわりには苦しそうだ。

なにやら必死に両腕に力をこめている。

あ……

私は人々を押しのけ、男性の前までたどり着くといった。

「あなたのかばんに女性の靴のカカトがひっかかってますよ」

 女性はパンプスのカカトが、男性のカバンの裏側の紐にひかかっていたのだ。

すし詰めで男性に顔も向けられず、足を上げっぱなしで苦しい状態。にっちもさっちもいかず苦笑するしかなかったようだ。

駅に止まり扉が開くと、外に出た。

今日は朝からいいものを見れたし幸先がいい。青空を見上げながら軽やかに足を踏み出した。

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