ボッチ、特訓する②
遅くなりました、申し訳ありません。
「今日の模擬戦で死ぬかもしれないよ」
朝霧さんが僕に言ったこの一言でめちゃくちゃ頑張れた。あ、Mじゃないよただ死にたくないだけ。だって死ぬかもって言われてるんだよ、頑張らない方が可笑しい。まぁその甲斐あって魔力の感知や操作はほぼマスターできたけど身体強化にまだ不安要素が残ってるんだよね。せめてもう少しだけ時間が欲しかった。二日ぐらい。
「昴もうすぐ始めるよ」
はぁ〜どうしよう死にたくない。…良し逃げるか。
「バカなこと考えてると首を斬りとばすよ」
「すみませんでした。絶対に逃げたりしないのでそれだけは勘弁してください」
「解ればよろしい」
何この人めちゃくちゃ怖いんだけど、普通に心を読んでくるし。それに朝霧さんなら多分切る。躊躇うことなく切る。よし朝霧さんには逆らわない様にしよう。
「じゃあ始めるよ」
そう言うと優姫は刀を抜き両腕をだらりと下げ自然体で立つ。それに対して昴は剣を右手で持ち絵に左手を添え右脚を引き半身の状態で構える。同時に衝撃にも似た圧力のプレッシャーが昴にのしかかる。
うわぁ、朝霧さん殺る気満々じゃん生きて帰れるかな?まぁ帰る場所なんて無いんだけど。
「いつでもいいよ。どこからでもかかっておいで」
「なら御言葉に甘えて」
そう言い終わると同時に昴は駆け出して優姫の心臓目掛け突きを繰り出した。それを優姫は身体を右に逸らし難なく躱す。昴は突きを繰り出した右手から添えていた左手に剣を持ち替えて横薙ぎの一閃を繰り出すがバックステップで躱される。一閃を繰り出したことで開いた身体に優姫が袈裟斬りを昴はなんとか引き戻した右手で優姫の腹を全力で殴った。
「痛ッ」
「グッ」
互いの攻撃を食らった二人は共に呻き声をあげる。
「流石に今のは危なかったよ。なんとかお腹の部分強化が間に合ったから良かったけど間に合わなかったら多分内臓がやられてただろうね。」
「え、朝霧さん身体強化使ってなかったんですか?」
「うん、私が身体強化使ったら訓練にもならないだろうしね。」
何…だと…?あれで身体強化使ってなかったってどんなステータスしてるんだよ。て事は思ってたよりも生存率低いんじゃないか?これ。もうこうなったら死ぬ気で殺ってやる。どこからでもかかって来い、このクソアマが。
「昴って情緒不安定なんだね」
優姫が額に青筋を浮かべたまま言う
もしかしてまた心を読まれた?やっベーどうしよう。自分の顔から血が引いていってるのが実感できるわ。ああ、もうどうにでもなーれー
「まぁ否定はしませんけどその言葉ブーメランですからね」
昴の一言を合図に二人とも駆け出した。優姫は昴の攻撃をのらりくらりと紙一重で避け隙があれば鋭い一撃を繰り出していく。対する昴は優姫のカウンターをなんとか凌ぎながら攻撃を繰り出していく。
そうやって幾度も打ち合っていると優姫が不意に口を開いた。
「すごいすごい、流石に此処まで出来るとわ思ってなかったよ。これだったら使っても問題なさそうだね、魔法」
は、え?何?魔法を使う?誰が?いや、まぁ僕は魔法を使えないらしいから必然的に朝霧さんなんだろうけど、無理無理無理、絶対無理。そんな事されたら死ぬ
「大丈夫だよ、その辺りはちゃんと手加減するから。…多分」
うわぁ、ものすっごい不安だ。多分ってなんだよ多分って。
「そんなウジウジしても私の気分でやってるんだから仕方ないじゃん。ほらシャキッとして再開するよ」
「え、これって事前に訓練の内容を考えたりとかしてないやですか?!」
「するわけないじゃん、そんな面倒くさい事」
面倒くさいって言っちゃったよこの人、もうヤダこの人との訓練。命がいくつあっても足らない気がする。
「じゃあ行くよー」
そんな掛け声と同時に優姫の周りに黒い光を発する円環と機何学模様が無数に出現する。
「あの朝霧さん、そんなに魔法を使われたら対処できませんよ。僕」
まぁ一発でも無理だけどね!
「魔法の対処法は単純だよ、核をぶった斬ればいいだけ。」
「核ってなんですか?」
「核って言うのはね魔法の中心、魔力が一番密集してる場所だよ。まぁ今から使うのは風属性だから目に見えないけど頑張ってね」
昴が殺る気満々だな!などと心の中で悪態をついていると目に見えない何かが優姫の後ろにある無数の機何学模様─魔法陣─から飛んでいき昴の足元に着弾し、地面を抉った。
嘘だろ?こんなのくらったらマジで死ぬ。手加減する気皆無だなあの人。
「そんなくだらない事考えてないでどんどん行くよ」
くだらなくないですよ!という昴の悲痛な叫びが口から出る前に無数の黒い魔法陣から幾つもの見えない何か─圧縮された空気の塊─が昴に襲いかかる。
その日バラゴナ王都に爆撃の様な音と少年の叫び声が響き渡った。
*
朝霧さんの殺人未遂から10日後、連日爆撃音と悲鳴の様な声が響き渡るバラゴナ王都の冒険者ギルド3階、宿舎になっているその一角で今日も殺されかけた昴がベッドに寝転びながらスマホをいじっていた。
「朝霧さんのアレ絶対殺しにきてるよな、今日もまた威力上がってたし一ヶ月以内に死ぬんじゃないか、僕?死にたくないなぁー。あ、魔法石溜まってるサ○デーガチャ回そっと」
ヘルメットの様な物をかぶった青いドラゴンの腹から銀色の卵がチリンという効果音と共に出てきた。
•霧沢○子
「チクショウ!またかよ、これで3体目だよ。こっちは○ギキャラが欲しいんだよ。それよりも身体が痛い。ちょっとデカイ声出しただけで肋骨に響く。今、僕のステータスどうなっているんだろう」
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•桜本昴 Lv6(5UP)
種族:異世界人
職業:冒険者
体力1,800(1,000UP)
筋力550(250UP)
魔力550(250UP)
敏捷550(250UP)
耐性800(500UP)
魔耐800(500UP)
ユニークスキル
『魂ノ杯』
スキル
『念話』『調教師』『身体強化』『言語理解』『魔力感知』New『魔力操作』New『部分強化』New
称号
《世界を渡し者》《神に導かれし者》
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Lv5も上がってるけどこれは早いのか?遅いのか?明日朝霧さんに聞いてみよ。耐性と魔耐の伸びが良いのは多分朝霧さんにボコらr…じゃなくて、鍛えてもらっているおかげだな。スキルとユニークスキルは朝霧さんが教えてくれるだろうし、称号の事でも聞いてみよ。てか《神に導かれし者》って何だよ、神になんかあった事も無ければ導かれた覚えもないんだけど。これも明日朝霧さんに聞いてみよ。
それから昴は すぐに眠りについた
が、寝返る度に罅が入った肋骨に痛みが走り叫び声を上げた
「痛ッテエエェェェェェェ!」
ほらこの様に
ブクマ感謝ですm(__)m