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ボッチ、特訓する

優姫は執務室の隅にある棚から水槽の様な容器とその容器に繋がれた水晶玉の様な物を取り出して机の上に置き、何処からともなく取り出した液体を容器の中に入れていく。


なんだろうこれ?見ただけじゃ使い方が全くわからん。てか今何処から液体を取り出したんだ?魔法か?アイテムか?どっちでもいいけど僕も欲しいな。


「昴はあまり驚かないんだね」


いやいや内心では驚いてますよ、多少は。てか、いきなり呼び捨てにされた。まぁいいんだけどね。


「まぁ魔法があるならそんなこともできるんだろうな。と思ってましたから」

「そうなんだ。では魔法についてどう思う?魔法だけじゃなくスキルなどについてもどう思う?」


優姫は先ほど取り出した水晶玉に右手を乗せながら昴に問いかける。


なんでそんなこと聞くんだ?聞いたところでどうにかなるわけでもないだろうに。


「なんというか羨ましいですね。僕も使ってみたいって思います」

「やっぱりそうなんだね。私もこっちに来た当初はそうだった。…でも今はこの力が怖い。確かに便利ではあるけど使い方一つで簡単に命を奪えるこの力が、怒りに任せて大勢の命を奪ってしまったこの力が、どうしようもなく…怖い」


優姫の声は弱々しくなっていき顔を俯かせて少しばかり震えていた。


この人はジンさんが言っていたあの事件の事をずっと一人で背負っていたんだな。


「すごいですね、朝霧さんって」

「何が?自分の力に怯えて縮こまっている私の何が凄いの?」

「何がって自分の力がどれほど危険かちゃんと理解していること。自分のした事に対して向き合おうとしている事。自分の力に溺れない事です」

「そんなに凄い事かな?それが普通だと思うけど」

「十分に凄いですよ。精神が不安定な時期にこんな所に飛ばされて、身勝手な大人達に利用されそうになって尚、普通の事ができる。凄い事ですよ。普通はできません。たとえこっちに飛ばされなくても、普通の事を普通にできる人なんてそれほど多くは居ませんよ」

「「普通の事を普通はできない」か、皮肉な話だね。」

「現実はそんな物ですよ」

「そんな物かな?」

「そんな物です」

「よし準備も出来たしこの話はお終い。スマホのステータスを開いた状態で貸してくれる?」


切り替え早いな、今の何?演技か?と思いわしたものの、昴は何も言わずに灰色のアプリを開いて優姫にスマホを渡した。


「体力が800、筋力、敏捷、耐性、魔力、魔法耐性、オール300。魔法適切は無し。スキルは……面倒くさいから後で説明するね」


面倒くさいって言っちゃったよこの人。面倒くさがったら駄目だろ。しっかりしてくれよ。てか魔法適切無しって何?もしかして僕、魔法使えないの?こんなファンタジックな世界で?いや流石にそんな酷い話はないだろ。…無いよね?


「あぁ、そのもしかしてだよ。昴はゲームに出て来るような魔法は使えない。ドンマイ(笑)」


笑いやがったぞこいつ。人の夢を打ち砕いた上で笑いやがったぞ。と言うかさりげなく僕の心を読んでません?


「そ、そんな事は無いよ。気のせい気のせい」

「読んでるじゃ無いですか!」

「違う。逆転の発想だよ。私が昴の心を読んだんじゃなくて昴の心が私を読んできたんだよ」

「お前は阿○○木さんか!てかそれどういう状況なんだよ!?」

「言葉通りの状況だけど。え、もしかしてわからないの?」

「わかるわけ無いでしょ、そんな状況」

「そんな事も分からないなんて、この世界で生きていけないよ」

「それだけの事で生きていけなる世界なんて滅んでしまえ!其れはさて置き、ステータスオール300って高いんですか?」


これでそんなに高く無いって言われたら本当にこの世界で生きていけなくなる。いや生きてはいけるけど、生き方が限られてくる。


「うーん、どうなんだろう?この世界の人間に比べたら結構高いと思うよ。多分この国の騎士団長レベル、冒険者なら特C級から準B級ぐらいだと思う」

「それ普通に高いと思うんですけど」


因みに冒険者のランクは下からF級、E級、D級、C級、B級、A級、S級が有り更にC級からは準C級、C級、特C級の様に三つに分かれている。


「まぁそうなんだけどね異世界人としては若干低いんだ。大体私の4分の3ぐらいだね」


それって僕が低いのか?それとも朝霧さんが高いのか?どっちなんだ?


「その辺りの事も含めて後で詳しく教えるね」


そう言い終わると同時に手に持っていた昴のスマホを液体が入った容器の中に落とした。


「ちょ、何やってるんですか朝霧さん!?それ防水じゃないんですよ。水没するじゃ無いですか!」

「大丈夫大丈夫、水没はしないから。それよりもこの水晶玉に手を当てて」

「こうですか?」


昴が水晶玉に手を当てた瞬間、容器の中で銀色の稲妻が7条スマホに向かって降り注いだ。稲妻に打たれたスマホの画面に罅が入り、その罅に容器内の液体が全て吸い込まれ罅の消えたスマホだけが残った。


は?え、何がどうなったんだ?何であの水が消えてんの?それと何でスマホの傷が治ってんの?てかあの光何?


「銀色」

「銀色が如何かしたんですか?」

「なんでもないよ。昴の魔力光は銀色なんだなぁって思っただけ」


銀色の魔力光って珍しいのかな?


「じゃあギルド登録も終わったしギルドの裏にある広場で体術と武器の扱い方を教えるね。ついてきて」


武器って何があるのかな?やっぱり剣とか槍かな。銃なんて現代兵器はないだろ。…ないよね?


そんな事を考えながら歩き出そうとした時、急に体の力が抜けて倒れた。立ち上がろうとしても身体に力が入らず、意識が遠のく。意識を手放す直前、聞こえてきたのは優姫が昴を呼ぶ声…では無く、壮大に鳴る自分の腹の音だった。



「ふぅ食った食った。ありがとうございます朝霧さん。ご馳走様でした」


三日ぶりの飯はうまかった。まさかこの世界に和風スパゲティがあるとは思わなかった。スパゲティがあることにも驚いたが普通におろしポン酢があったことが一番驚いた。にしても、異世界初の食事が日本の馴れ親しんだ和風スパゲティになるとわ思いもしたかった。


「それにしてもびっくりしたよ。まさか空腹で倒れるとは思ってなかったから」

「ここ三日間何も口にしてなかったから死ぬかと思いましたよ」

「お腹が空いてたなら言ってくれればよかったのに」

「いや〜昨日のピークを過ぎたあたりから空腹感が全く無くて」

「じゃあ御飯も食べたことだし今から広場で特訓開始ね。あ、それと銃なんて便利な物はないからね」

「特訓って何するんですか?」

「武器の扱い方と身体強化を教えた後、私と模擬戦」


へぇ〜模擬戦か〜模擬戦…模擬戦


「え、模擬戦?誰と誰が?」

「私と昴だけど、それ以外の誰がいるの?」


ですよねーわかってたよ。わかってましとも。けどさ国を半壊させる様な人といきなり模擬戦をしろって言われても、ねぇ。


「それは誰に同意を求めてるのかな?」


こいつまた心を読みやがった。


「誰って聞かれても……お茶の間の皆さんかな?」

「え、ここってドラマの世界だったの?」

「いやどっちかといえばアニメの方だと思うけど」

「まぁそんなどうでもいいことは置いといて早く広場に行こう」


マジで行きたくない。こんなの自殺と大して変わらないし、ただ自分で死ぬか人に殺してもらうかぐらいの差しかないど思うんだよね。ここまで良くしてもらってて悪いけど、逃げるか。


「バカなこと考えてないで早く行くよ」


優姫に襟首を掴まれて引きずられる様に食堂を後にした


「って朝霧さん、お金お金」

「あっ忘れてた」



てな訳でやってきました広場という名の処刑場へ。生きて帰れるかわからないから、先に遺書でも書いておこう。でも誰に宛てて書けばいいんだ?


「ねぇ昴、日本で何か武道習ってた?」

「いえ何も習ってませんけど、強いて言うなら学校の授業で剣道をやったぐらいですね」

「やっぱりね、じゃあこれなんかどうかな?かなり扱い易い武器だけど」


そう言って手渡されたのは刃が殺された槍だった。手渡された槍を軽く振ってみる。


「何というか違和感しかないですね。って言うかこの槍どこから持っていたんですか?」


まぁどこから取り出したかっていうのはさっきの魔法かなんかだろう。


「これはね、ギルドが貸し出している訓練用の武器の一つだよ。次は刀なんてどうかな?授業で剣道を習ってたらしいし」


その様なやり取りを後4回ほどして一番違和感の少なかった刃渡が一メートルにも満たないショートソードに決めた。


「じゃあ剣の扱い方だけど、降り始めと当たる瞬間に力を込める以上。兜割りと同じ要領だからそれをイメージすれば簡単にできるよ」

「え、それだけですか?もっと基本的な動作とか剣の握り方とか教えてくれないんですか?それと兜割りは奥義の一つですよね?イメージだけで出来るはずないじゃないですか」


そんな簡単にできれば誰も苦労なんかしませんよ。大体最初に教えることが奥義ってどういうことですか。


「そんなこと言われてもね、私って天才肌だから口で教えれることってそのぐらいだし。そもそも私の武器は刀だし」


なら何でこの役買って出たんだよ。もっと他の人に任せればいいのに、向いてないんだから。


「後は身体強化だけどその前に魔力感知と魔力操作を覚えてもらわなきゃね。ちょっと手を出して」


言われたとうりに差し出した手を優姫が両手で握る。「え、ちょっと朝霧さん?」などと照れていると、手から何か流れ込んでくる様な感じがした。


「何ですかこれは?」


おっと自分で思ってたよりも低い声を出してしまった。ほら朝霧さんが驚いた顔で見てきてる。


「今のは魔力を流し込んでたんだけど、すごいね昴。私だったら今の倍近くの魔力を流し込まれなきゃわからないぐらい少ない量だったのに」


これが魔力かぁなんか変な感じだな。それにしても朝霧さんにちょっと悪いことしちゃったな。まぁ向こうも気にしてないみたいだし(気づいてないだけかもしれないけど)あまり気にしなくてもいいかな。


「じゃあ次は魔力を押し返してみて」


魔力を押し返すってどうやるんだ?まぁやるだけやってみよ。


「えい」

「おぉ〜凄い凄い。何も教えてないなにできるなんて。じゃあ次、それを身体の中で循環させてみよう」


ちょっとテンポが早くないですか⁈普通もっとゆっくりだと思うんですけど。まぁいいや、それで体の中で循環させるってことは血管を流れる血液みたいなイメージでいいのかな?とりあえず物は試し用だ。


「えい…ってこれちょっと難しい」

「でもちゃんとできてるよ。次は身体強化だね。魔力を身体に纏う感じでやってみて」


魔力を纏う感じって言われてもピンとこないんだよね。ぬ○孫の鬼纏まといみたいなイメージでいいのかな?よし畏襲かさねみたいな感じでやってみよ。


昴の体が徐々に銀色の光に覆われていく。


「本当に凄いね昴。まさか身体強化をたったの数分でできる様になるとは。普通は数ヶ月かかるって言われてるのに」


え、何?これってそんなに難しいものなの?結構簡単にできちゃったけど。


「そうだよ、数分なんて異常だよ。かなり人間離れしてるんだよ。私なんて6時間もかかったんだから」


また心を読みやがって、心を読むのなら一言断ってほしい。それにしても


「朝霧さんもかなり人間離れしてるんですね」

「そんなことないよ。あっそれとね、魔力の密度を高くするとね物理的な攻撃も魔法もある程度は防げるし、武器に魔力を纏わせると破壊力が上がるんだよ」


破壊力って…いや、もう何も突っ込まないでおこう、こっちが疲れるだけだ。


「じゃあ昼過ぎまでに剣の使い方と身体強化を死ぬ気でマスターしてね。でないと今日の模擬戦で死ぬかもしれないよ」


は?マジですか?勘弁してください。

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