ボッチの人助け③
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食堂での作戦会議?から数刻後、辺りが闇に包まれ街が静まり返っている頃、昴達三人は黒い外套を羽織りフードを深くかぶって城内に侵入していた。
ディーネは目立つためギルドの部屋で留守番だ。
「やっぱり魔法って凄いな」
昴は城内にあちこちに転がる兵達を見てそう呟いた。
「ソダネー」
「まだ不貞腐れてるのか?優姫」
「べつにー」
食堂での会議でこの城を爆破できると舞い上がっていた優姫だか、後の話し合いで爆破がなしになったためかなりいじけていた優姫。その後、昴が一つだけ何でも言うことを聞くと言う条件で納得させたのだかまだ優姫は諦めきれないでいる様だ。
「じゃあ手筈通りにやるぞ。」
「はい」
「わかりました」
「一時間後、城の裏集合で」
昴がそう言い切るかどうかのところで優姫は何処かへ走り去っていった。
「あの人どこ行った?」
「あ、さっき宝物庫に行ってくると言ってました」
「マジか…」
たった今手筈通りにと言った筈なのに一人で勝手に宝物庫へ向かった優姫に頭を抱える昴だか、優姫の自由行動は今に始まった事ではないので気にしないことにした。
「僕もそろそろ行きます」
「私もそうします」
そう言って昴とフェルは自らの目的地に向かって其々走り出した。
フェルと別れ目的の部屋に向かって城内を駆け巡る昴は途中何度か道に迷いトイレや姫の寝室、よくわからない部屋に優姫が物色している宝物庫などを巡りながら、何とかその部屋へとたどり着いた。昴は両開きのドアを押し開き、先程バーテル武具店で買ってきた鉄の剣を抜きながら魔法で生み出した水をその部屋で寝ている人物の顔面に浴びせた。
「ゴホッゴホッ…何者じゃ!ゼェゼェ」
「よう王様、ちょっと話があって来た」
昴は息を荒げているこの部屋の主─バラゴナ国王─にそう話しかけた。
「何じゃ、貴様か。毎度ながらもっとまともな起こし方は無いのか?」
誰かと間違えてる?けどまあいっか。てかいつもこんな起こされ方なんだ、王様なのに。
などと内心驚愕する昴だが訂正するのも面倒くさいので勘違いさせたままで行くことにした。
「まぁ良い、それで話とは何じゃ?」
「えっと、今後一切アブロ一族?と異世界人に関わるな」
「なっ、この前と言ってることが違うぞ!異世界人を兵にしろと言ったのも奴等を殺せと言ったのも貴様ではッ!」
要求を聞き怒鳴り声を上げる国王だが昴に本気の殺気を向けられ押し黙ってしまう。
「ごちゃごちゃうるせぇよ。で、要求は呑むの?呑まねぇの?」
「…」
国王は先程から殺気を向けられている為、声を出したくても出せないでいる。
「とっとと答えろよ」
昴はそう呟くと徐ろに国王へ近づいていった。国王の眼の前まで行くと手に持った鉄剣をゆっくりと振り上げる。
「五つ数える間に答えろ。じゃないと死ぬぞ」
「…」
「一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、はい時間切れ」
そう言うと昴は掲げた鉄剣を国王へ振り下ろす。
「よ、要求を呑む!」
国王は何とかその一言を絞り出し、振り下ろされた鉄剣が当たる寸前で止まる。
「その言葉忘れるなよ、じゃあな」
昴は国王の部屋を後にした。放心している国王が座っているベットには黄色いシミができていた。
もうじき1時間立つ為、集合場所に向かって走る昴。途中、宝物庫で品定めに熱中している優姫を回収するのも忘れない。
暫く走ると集合場所である城の裏手に着いた。
「おーいスバルさーんこっちです」
少し離れた路地裏から顔を出し昴たちを呼ぶが大声を出すなとジンに拳骨をいれた。
「みんな無事ですね?」
「ああ、お陰様でな」
「これからどうするんですか?」
昴は捕まっていた者達の無事を確認するとこの後のことについて聞いた。
「一旦北西の壁を越え西の森を目指す。其処で一服入れた後西の森に沿って北上していく。ある程度北上したら森に入って集落を目指す。お前らにはその護衛をして欲しい」
「わかりました」
「報酬は?」
ジンの話を聞き依頼をあっさりと承諾する昴と報酬を要求するがめつい優姫。
「さっき宝物庫から色々盗って来たばかりだろ」
「それはそれ、これはこれだよ」
昴の嫌味を軽く受け流す優姫。
「安心しろ、ちゃんと払う」
「それなら私も引き受けるよ」
優姫とジンの話も終わり行動を開始しようと皆が動き出した。
「あ、僕はまだやることがあるので先に言っといてください。一服入れている頃に合流します」
準備も終わり今まさに行動を開始しようとしたその時に昴が言う。少し出鼻を挫かれる様な形になったがジン達はそれを承諾すると北西へと走り出した。北西の壁に到着するとみんな鉤爪投げかけ壁を登っていく。優姫はそんな中一人だけステータスと魔法に物を言わせ軽々と壁を登る。
「ん?何の音だ?」
全員が壁を越えた頃街の中から何やらガガガと金属を引き摺り回す様な音が聞こえ出した。
「気にしても意味無いよ」
優姫のその一言で皆気にすることを止め西の森へ走り出した。
道中魔物に遭遇することもなく西の森にたどり着いた優姫達は予定通り一服を入れる事にした。
「すみません、ちょっと遅くなりました」
一服も終わりそろそろ行動を再開しようとしたタイミングで昴が合流した。
「遅かったね、昴。どうかしたの?」
「いや、ちょっと用事が長引いて」
「そう、じゃあ行くよ」
「え、休憩は?」
「遅れた昴が悪い」
「鬼め」
「何か言ったかな?」
「いやなにも」
休憩ももらえず優姫に対してボソリとそう呟いたが聞き返してきた優姫の笑顔がかなり怖かった為シラを切る昴。
その後も魔物と遭遇することはなく昴達は西の森へと入る。西の森に入ってからは稀にウルフなどが飛び出してくるが昴がそれを斬り伏せ、スライムの姿が見えると優姫が爆散させていく。そうやって暫く走っていると突然開けた場所に出た。灯りもなく暗くてわかりにくかったがよく見ると其処は小さな集落の様だった。
「おお、着いた着いた。ありがとなお前ら」
「そんな事より報酬は?」
ジンが感謝の言葉を口にするがバッサリと優姫に切り捨てられる。
「今持ってくるからちょっと其処で待ってろ」
そう言うとジンは一つの家の中に入っていった。少しして出てきたジンの手には布袋が握られていた。
「ほれ、こんぐらいで足りるか?」
ジンは手に持った布袋を優姫に投げ渡す。
「30万ぐらいかな?ちょっと少ない気もするけどまあいいよ」
優姫はそう言いながら布袋を何処かへしまう。
「あ、そうだこれもいるか?」
「これは?」
優姫はジンから渡された容器を興味深そうに眺めながら聞く。
「それの中身は塗り薬だ」
「塗り薬?」
「ああ、貰い物だから詳しい話はわからんが、何でも胸を大きくする効果があるそうだ」
「本当に!?本当に大きくなるの!?」
「あ、ああ」
ジンの話を聞いた優姫はバッと顔を上げめを輝かせながらジンに詰め寄る。その勢いにジンもたじろぐ。
「とは言ってもあんたには意味無いかもな」
「え、何で?」
「ある物を増やせても無いものは増やせないらしいからな」
その言葉を発すると同時にジンは優姫に殴り飛ばされた。
「じゃあそろそろ帰ろっか」
「あ、ああそうだな」
ジンが殴り飛ばされるのを見てあっけにとられていた昴は何とか返事をする。
「そうですね、もうかなり眠たいですし」
「「…え?」」
優姫と昴は聞こえてくるはずの無いもう一つの返事に驚きながら、声のする方へ振り向いた。
「えっとどういうこと?フェルさん」
その声の主であるフェルは一瞬キョトンとする。
「あ、そういえば言い忘れてましたね。私、破門されちゃいました」
「「はあ!?」」
優姫と昴の叫び声が森に木霊した。
〜その頃の作者〜
プルルルルプルルルル ガチャ
「はいもしもしFです、どちらさまですか?」
「あぁ朝霧さんですか。何々、クレーム?」
………
「つまり薬の効果を改善しろと、前にも言いましたが無いものを増やすなんて無理ですよ。多少あるならまだしも、神にでも祈ることですね…もしもし朝霧さん?ちょっ待ってくださいマジで勘弁してくださryギヤアァァァァ!」
……
優姫「作者は殺っちゃったけどまだまだ続くからよろしくね」