ボッチの人助け①
どうも、たまたま近くを通りかかったディーネに回復魔法をかけてもらい一命を取り留めた作家のFです。
遅くなって申し訳ありませんでした。
前回1話目から3話目を中心に手直しをすると言いましたが、中々進まないので先にこちらを上げることにしました。
では、本編をどうぞ。
話を詳しく聞く為、フェルを連れて一旦部屋に帰った昴はディーネに説教をされていた優姫に正座をさせられていた。
「ねぇ昴、私が夜這いに来た直後に他の女を連れ込むなんてどういうつもりなのかな?」
そう問いかける優姫の目からはハイライトが消えていた。
「優姫…さん?ちょっと落ち着いて下さい、目が怖いですよ。さっきと違う意味で怖いですから」
「大丈夫大丈夫、痛いのは最初だけだから。すぐ楽になるよ」
「それ絶対大丈夫じゃないから!」
そんなやり取りをしていると優姫の両腕が黒い光で覆われる。
ヤベェ、この人殺る気満々だ。
両腕を魔力で強化してゆっくりと近づいて来る優姫から逃げようとする昴だが、正座をさせられていたため脚が痺れて立てなくなっていた。それでも床を這ってなんとか逃げようとするがすぐに追い詰められてしまう。
「まあ、まず落ち着きなさい。人間、落ち着きが肝心だよ」
ベキッ
昴の左頬に優姫の回し蹴りが決まる。
「ずびばべんでひた。ずごひぶざげずぎばひた。」
昴は優姫の回し蹴りを食らったために、パンパンに腫れた左頬を摩りながら謝罪の言葉を口にする。が、その謝罪は聞き入れられず魔力で強化された優姫の拳が昴に降り注ぐ。優姫の拳が当たる直前、咄嗟に肉体を強化した昴だが、優姫が繰り出す怒涛のラッシュに耐え切れず意識を手放した。
《ちぇりおー!》
「ガハッ」
意識を手放した昴に追い打ちをかけようとする優姫。何処かの奇策氏のような掛け声を発しながら繰り出されたディーネ渾身の超高速頭突きがその脇腹に刺さる。
《それ以上やったらご主人が死ぬ》
「ごめんね、ちょっと歯止めが効かなかった」
《弁明は向こうで聞くから、行くよ。あ、そうそう…》
ディーネは脇腹を摩りながら謝罪する優姫の襟首を噛んで引っ張りながら部屋の外へ出て行こうとしたが、一旦ドアの前で止まり天井を見つめているフェルに喋りかけた。
《えっとフェルだっけ?さっきから天井を見つめてるけど天井がどうかしたの?》
「あ、いえ、先程其方のユウキさん?に天井のシミでも数えていればいいと言われたのでシミの数を数えていたんです。因みに数は73個でした」
その言葉にディーネ達は呆れていた。
確かに優姫は昴を正座させている際にすることがないため部屋中動き回っているフェルに向かってそうは言ったが、それは大人しくしていろ、と言う意味であって本当にシミを数えろと言う意味ではなかった。
《まぁいいや、フェル隣の部屋が空いてるから寝る時はそこ使って。じゃあおやすみ》
「おやすみ」
「おやすみなさい」
ディーネはそう言い残すと優姫を引きずりながら部屋を後にした。それに続くようにフェルも部屋を出て行き、最後に残ったのはボロ雑巾の様になって床に転がっている昴だけだたった。
*
翌朝、痛みで目を覚ました昴は溜まり場となっているギルドの食堂に行くとディーネがふらふら〜と飛んできて昴の頭の上に着地した。
《おはよう、ご主人》
「おはよう、ディーネ」
《おやすみ》
「もう寝るの?!」
《…zzz》
「てか寝てるし」
昴はすでに寝ているディーネを頭に乗せすでに朝食を取り始めている優姫のもとへ向かった。
「おはよう優姫」
「ふぁ〜、あ、おはよう昴。昨日はごめんね、少しやり過ぎちゃったよ」
「いえ、あれは僕にも問題があったから。それよりもかなり眠たそうだけど大丈夫?」
「あの後ね、ディーネに説教されたんだけどね、終わったのがつい30分前なんだよ」
そう語った優姫の目の下にはくっきりとクマができていた。
「あ、おはようございます、スバルさん」
食堂の奥からドリアを手に持ったフェルが昴達の元へ戻ってきた。
「おはようございます、フェルさん。いきなりで悪いけど昨日の話詳しく聞かせてくれませんか?」
「ふぇ?ひほうほほほ?ふぁふぁい、ふぃいふぁんふぁふぁふぁふふぁふぁっふぁんふぇふほ」
ドリアを口いっぱいに頬張りながら喋るフェル。
「フェルさん、ちょっと何言ってるか分かんないから食べるか喋るかどっちかにしてください」
昴にそう言われたフェルは一度ドリアを呑み込むと、昴の顔とドリアを交互に見てドリアを食べ始めた。
「あ、食べるんだ」
食べることを優先したフェルに対し思わずそう口にしてしまった昴。そう思っていたのは優姫も同じようで苦笑いを浮かべていた。
*
「ご馳走様でした」
「フェルさん、さっきの話の続きなんだけど」
「えっとさっきってなんの話をしてましたっけ?」
右手の人差し指を顎に当て少し考えた後、こてんと首を傾げるフェル。
「昨日のことですよ、昨日の」
大丈夫か?この子。
「昨日?昨日…あ!そうでした!スバルさん助けてください!」
今、完全に忘れてたよな、この子。
たった十数分前の事を忘れているフェルに昴が呆れながらも教えてやると思い出したようで慌てて助けを求めてきた。
「落ち着いてください、フェルさん。助けるかどうかは話を聞いた後で判断しますから」
昴がそう言うや否やフェルは落ち着きを取り戻した。そして何があったのかを語り始めた。
「兄さんや一族のみんなが捕まりました」
「捕まった?どうして?」
「兄さんとスバルさんを脱獄させた時、素顔を見られていたみたいでして、後日この街に買い出しに来た時、後をつけられ集落の位置がばれて、王国の騎士達に奇襲をかけられました。みんな私や戦えない人たちを庇って捕まりました。来週には公開処刑される予定です」
語り終えると下唇を噛み締めローブの裾を強く握るフェル。何も出来ず、一族が捕まるのを見ているしかなかったことがかなり悔しいようだ。
「兄さんを、みんなを助けて下さい」
「わかった、僕達が助けてあ「助けない」え?」
優姫の一言でその場が一瞬固まった。少しして優姫の言葉を理解したフェルがポロポロと涙を流し始めた。
「優姫、どうして助けないなんて言ったんだ?」
フェルが泣き出したことであたふたとしている優姫に昴からの追い打ちが掛かる。
「え、あの後にね、一人で勝手に助かるだけって言うつもりだったんだけど泣かれるなんて思ってなくて」
「優姫」
「はい」
「そろそろ本気で怒られるのでマジでやめてください!」
優姫に向かって頭を下げる昴。
食堂内は今ポロポロと涙を流す少女、それを見てあたふたとする少女、その少女に九十度のお辞儀をする少年、その少年の頭の上で器用に眠るエレメンタルドラゴンと、カオスな空間になっていた。
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