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ボッチの逃走劇

あのキャラが久しぶりに登場します。

ギルド裏の広場で魔法訓練を行った数日後。

昴達三人、正確には二人と一匹は最早溜まり場になりつつあるギルド内の食堂に屯っていた。というよりも机に伏してグダッていた。


「あ〜そう言えば昴ってまだツケを返しきってないんだよね」


そのだらだらとした空気の中で最初に言葉を発したのは優姫だった。


「そうですよ、だから今日もこれからクエストを受けるんですよ」

《どうせまたゴブリン狩りに薬草採取と雑事の三つでしょ、もう飽きた他の魔物を狩りに行きたい》


優姫の問いに答える昴とごねるディーネ。


「昴だったらもっと強い魔物でも狩れるよね?どうしてやらないとさのかな?その方がお金も早くたまるよ」

「まぁそうなんですけど遠いんですよ、強い魔物の生息地。行く気にならないんですよ」


昴のいうとうりこのバラゴナ王国の王都周辺には余り強い魔物が生息しておらず、それを狩るには大陸中央にある火山や魔族領近くの森、大陸端の海岸など自転車でも往復で一週間以上もの時間がかかる。

此処から一番近い場所なら日帰りで帰ってこれるのだがそれには西の森を越える必要がある。強い魔物と戦うというのにそんな事で体力を使ってしまうのは得策では無い。森を迂回する場合は片道で3日はかかる。


「私なら4時間ぐらいで帰ってこれるよ」

「いやいや、流石にそれは無理でしょ」

「いけるよ、行きに2時間、着いてから索敵、討伐に十数秒、帰りに2時間で約4時間」


稀にこの様な例外もいる。


優姫の言葉を聞いて昴とディーネは信じられないもなのを見る様な目で優姫を見たが直ぐにまあ朝霧さんだから、と納得した。


「それで納得されるのはちょっと心外だよ」


優姫の呟きを昴達は聞かなかったことにした。


「ところで昴、これからどうするの?」

「え、これからって?」

「借金の返済と私の訓練が終わった後だよ」


これからか、そう言えば全く考えてなかったな。特S級冒険者を目指すのも良いかな、この街でのんびりと生活するのも悪くは無い、けどやっぱり…


「旅に出ようと思います」


それが色々と考えた昴の答えだった。


「へぇそうなんだ、じゃあ宿代に食費、消耗品や野宿の道具に足代わりの馬車代他にも色々必要だね。今のままだと数年はこの街で過ごす羽目になるよ」

「よし、強めの魔物でも狩りに行くか、ディーネ」

《現金だね、ご主人って》


昴達は一番近い狩場へと走って行った。



「ゼェハァゼェハァ森越えって思ってた以上に体力を使うんですね」

《お疲れ様》

「そんなに疲れるかな?」


息を切らし膝に手をつく昴、その頭の上で腹ばいになってるディーネ、汗ひとつかいてない優姫、三人は王都の西にある森を越えた場所に来ていたが、昴の体力が限界だった。

森を全力疾走してきた三人、正確には全力疾走してきた昴、その頭の上でくつろいでいたディーネ、ランニングしてきた優姫なのだが。

森を越える際足場が悪く体力を余計に消費してしまう上に横から飛び出してくるウルフ、木の陰から矢を射ってくるゴブリン、それらをディーネが落ちない様に対処する必要がある。因みに優姫はこれら全てを片手でいなした優姫はケロッとしていた。

その後も飛び出してくるウルフ、矢を射ってくるゴブリン、頭の上のディーネ、ケロッとしている優姫を幾度となく繰り返してやっとの思いでこの場に辿り着いた昴達なのだ。

因みに王都から此処まで片道4時間だ。


「ねえ朝霧さん、今倒してきた魔物だけでも充分なお金になると思うんですけど、これって強い魔物と戦う必要あります?」

「これだけの魔石と素材が手に入れば特に戦う必要は無いよ」

「まじっすか」


その後暫し休憩して体力が回復した昴達はまた飛び出してくるウルフ、矢を射ってくるゴブリン、頭の上のディーネ、ケロッとしている優姫を繰り返しながら王都へ帰って行った。



「借金完済おめでとう」

「ありがとうございます」


この日昴が狩ったのはゴブリン17体にウルフ20匹だ。その二種の魔石とウルフの素材の売却額が23,400ユルド、そこから借金を引いた22,300ユルドが今日の収入だ。


「それにしても2万3千か、1月で約70万、完全週休二日制でも50万ちょい、結構な高収入ですね」

「そりゃ命張ってるからね。もっと強い魔物になれば一体で数十万から数百万、特S級に成ると数千万以上の報酬が貰えるからね、一括千金を狙って冒険者になる人もいっぱい居るんだよ」


優姫の言う通り高難易度クエストの報酬額を知って冒険者になろうというものが増えたのだが、それと同時に無茶をして死ぬ者もかなり増えたために作られたのが今のランク制だ。


「そんな事は置いといて、昴に二つ朗報があるんだよ」

「なんですか?」

「まず一つ目、なんと今回のクエストで昴のランクがD級に上がったんだよ」

「おお!って言ってもE級に上がってたことすら知らなかったんだけど」

《流石にそのぐらいは把握しとこうよ、ご主人》


ディーネが呆れた様な念波を飛ばす。


「過ぎたことなんだから気にしてもしょうがないよ。それよりも二つ目、D級に上がったため私の教育は終わりだよ」

「ちょっと待って、朝霧さん。まだこの世界の常識とか礼儀作法とか全く教わってないけど」


昴が慌てるのも当然だ。今まで武器の扱い方に魔法、魔物などの知識などについては学んできたがこの世界のことについては一切教わってないので気付いたら牢獄の中、という事もあり得るのだ。


「そこで一つ提案があるんだよ」

「提案?」

「私も昴達の旅に同行させてくれないかな?」

「え、いいんですか?朝霧さんが来てくれるなら何かと安心ですけど」

「いいのいいの、それとこれからは対等な立場なんだから敬語は使わなくていいよ」

「じゃあそうしま…するよ。よろしく朝ぎ「優姫」よろしく、優姫」

「よろしくね、昴」


こうしてまだ始まってない旅に優姫が加わった。

因みに此処まで優姫の計画通りである。



その日の夜、ディーネを抱き枕にして寝ていた昴は部屋の中に何かの気配を感じて目を覚ました。上体を起こし部屋の中を見渡せば扉付近に黒いネグリジェ姿で佇む髪の長い女性がいた。


「そこで何やってるんだ?優姫」


というか優姫だった。昴の本能が小さく警鐘を鳴らす。かといって仲間からいきなり逃げ出すというのもおかしな話なので先程の質問をしたのだ。


鍵掛けてたはずなんだけど、まあ優姫だから何でもありか。


などと昴が考えていると不意に優姫の姿が掻き消え、下腹部に衝撃が走った。優姫が認識できない速度で昴へ抱きついたのだ。


「うっ」

「そりゃもちろん夜這いだよ」


優姫がそう言いながら顔を上げた途端、昴の本能が鳴らしていた小さな警鐘はけたたましい大きな物へと変わった。何とか逃げ出そうともがく昴だがステータスにかなりの差がある為ベッドに押し倒され簡単に組み伏せられた。


《痛い!重い!退いて!邪魔!》


ベッドで昴と寝ていたディーネを下敷きにしながら。


「優姫止めて、マジで怖いから」

「据え膳食わぬは男の恥だよ、昴」

「いやいや、食われるのはこっちですから。優姫の目完全に捕食者のソレだから」


昴のいう通り優姫の目はギラついていて捕食者が獲物を見る様な目をしていた。昴とディーネが上げる抗議の声を他所に優姫は昴の服に手をかける。服を上に上げていった優姫の手が不意に止まる。それと同時に捕食者の目だった優姫のソレはいつも通りに戻り昴の下腹部に釘付けになっていた。


「ねえ昴、どうしたの?これ」


優姫は昴の下腹部にあった大きな傷を手で軽く触れた。


「この傷、最近できたものじゃないよね」


昴の傷に気を取られて力を抜いた優姫。その隙を見て昴は優姫の拘束から逃れ、窓から飛び出した。直ぐに後を追おうとする優姫だが下敷きにされ怒り度MAXなディーネの頭突きを脇腹にくらった上に説教が始まったので追うに追えなかった。


「いやぁ怖かったな、あの優姫。それにこれも見られるなんて思ってなかったし」


などと呟きながら当てもなく夜の街を歩いていく昴。この後どうするか考えていた昴は路地裏から飛び出してきた人影にぶつかった。


「すいません、ちょっと考え事をしてて」

「此方こそごめんなさ…あの、オウモト・スバルさんですよね?」

「そうですけど、どうして僕の名前を?」


相手が自分の名前を知っていることに対し少し警戒を強める昴。


「あ、このままじゃわからないですよね」


そう言って被っていたフードを取る。現れたのは紫色の髪の毛でセミロングの髪にかなり整った顔。


「お願いします、助けてください!」


路地裏から飛び出してきた人影は昴の恩人であるジンの妹、フェルだった。

感想、評価を頂けると有り難いです。


ブクマ感謝ですm(_ _)m

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