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ボッチ、服を買う

今回は新キャラが出ます

ギルド裏の広場の一角、魔法訓練と称し優姫に叩きのめされた昴はディーネに回復魔法を掛けて貰い何とか歩けるまでになっていた。


「マジで死ぬかと思った」

《ボクの方にも飛んでくるとは思わなかった》

「それは本当にごめんね」


先程の訓練で優姫の放った魔法で危うく死ぬとこだったディーネがその事で愚痴を漏らす。まず訓練で殺傷能力の高い魔法を使うのはどうかと思うが、優姫はその事を本当に悪いと思っているらしくディーネに謝罪する。


「それにしても昴はボロボロだね」

「誰かさんのおかげでね」


訓練時に優姫が放った数多の魔法を凌ぎきれなかった昴は身体のあちこちに切り傷や打撲痕があったのだがディーネの回復魔法でそれらは消えていた。しかし回復魔法で治せるのは傷のみなのでアゾットに来た時から着ている制服はズタボロのままだ。


「あんなのも防ぎきれない程弱い昴が悪いんだよ」

「ぐうの音もでね」

《冒険者になって一月も立っていない相手にあれを防ぎきれっていう方が酷じゃないか》

「いや、剣があればいけた」

「じゃあ使えばよかったのに」

「は?」


優姫の一言に間の抜けた声を出す昴。


「そもそも直接攻撃を禁じただけで剣や拳での防御、身体強化などは禁止していなかったからね」

「なん…だと?」


続く優姫の言葉に驚愕を露にする昴。


「え、じゃあなに?朝霧さんは身体強化を使ってたと」

「え、私は身体強化なんて使ってないよ」


更に絶句する昴だった。



昴たちは今冒険者通りを歩いていた。

それはというのも先程の訓練でかなりボロかった昴の一張羅である制服が修復不能なレベルまで悪化し、それを見たてかやった優姫の提案で新しい服をこの冒険者通りに買いに来たのだ。


「あの朝霧さん、僕お金持ってないんですけど」

「私が奢るからそれは気にしなくていいよ」

《気前良いね、優姫》

「いやいや悪いよそんなの、この前だってこの剣を買って?もらったばかりだし」

《そんなこと言ってないで買ってもらいなってご主人。それとも何時もみたいにその破れた所を全部縫うつもり?流石に布が足りないって》


それに当分は服を買う余裕なんて無いんだからと続けるディーネ。

それほど多くは無いとは言え借金を抱えている昴。今の極僅かな収入は全てその返済と食費に消えるためディーネの言うとうり服を買う余裕も無いのだ。


「そうだよ、それに服をボロボロにしたのは私なんだしそのお詫びだよ」

「…じゃあお言葉に甘えさせていただきます」

《初めっからそういえば良いのに》

「…ディーネ、今晩の魔力抜きだから」

《え?嘘だよね、ご主人。ねぇ嘘って言ってよ!》


ディーネにとって昴から貰う魔力は食後のデザート的なものなのだがそれを一食分ぬかれただけで其処まで必死になるディーネに対し昴と優姫は若干引いていた。

その後も幾度となく抗議の声を上げたディーネなのだがことごとく昴に却下された為、不貞腐れて昴の頭の上で狸寝入りを始めた。


「着いたよ」


なにここ、めちゃくちゃ浮いてるけど。本当にここで合ってるのか?


そう内心驚愕している昴の目の前には全体がピンクで看板にはカラフルな文字でfashionmonsterと書いてあるかなり浮いている店が立っていた。


「あの朝霧さん奢ってもらう身としてこう言うのもどうかと思いますけど、他の店にしません?」

「大丈夫大丈夫、此処はこの街で一番の店だから」


優姫はそう言うと昴の首根っこを掴んで店の中に入っていった。


「え?」


店の内装が余りにも普通だった為思わず素っ頓狂な声を出してしまった昴。ただし普通と言っても地球レベルでの普通なのでこの店がアゾットでもトップクラスの店である事は明らかだった。


「ね、大丈夫でしょ」

「ええ、見た目に騙されてました」

「じゃあ選ぼっか」


優姫はそう言って服を選び出した。昴も自分の服を買うのだからと遅れながらに選び始めた。


「あら優姫じゃない、久し振り」


背後から優姫を呼ぶ野太い・・・声が聞こえた。口ぶりからして優姫の知り合いであろうその相手に対して振り返った昴達だったが目の前にいたのはファッションモンスターだった。

そのファッションモンスターは黒い帽子に黒いピエロの様な奇抜な服を着た筋骨隆々の男だった。


「あらそっちの坊や、美味しそうね」


否オネエだった。



その後本気で食べられそうになった昴だか優姫とディーネが何とか制圧したおかげで食べられずに済んだのだ。


「朝霧さん、この人は?」

「彼女は特S級冒険者、パーティー【乙女の花園】リーダーのクリスティーヌさんだよ」

「元よ元、今は引退してこのfashionmonsterの代表取締役社長をやってるわ」


優姫が言った通り特S級冒険者として名を馳せたクリスティーヌは1年半前に引退し優姫のエリック商会に出資してもらう形でこのfashionmonsterを立ち上げたのだ。


「クリスティーヌさんは凄いんだよ、歴代最強と謳われた先代勇者とまともに殺り合うどころかその聖剣を拳で叩き折ったらしいよ」

「あらそんなこともあったわね、聖剣と聞いてどんなものかと思っていたけど想像以上に脆かったから驚いたわ」


普通、聖剣というものは余程の事がない限り折れる事はないのだがそこは初代特S級冒険者、素手でその地位まで上り詰めた彼女だから出来たのだ。


「まじっすか、でも聖剣って折って大丈夫なんですか?」


昴の疑問は最もである。普通アニメやライトノベルなどに出てくる聖剣といえば勇者の専用装備でありその世界最強クラスの武器なのだからそれを一人の人間が拳で砕いたとなるとかなり大きな騒動になりかねないのだ。


「その点については問題ないわよ。確かに聖剣が折れたこと自体は騒動になりかねないけど聖剣はスキルで呼び出しているから折れると光の粒子になって消えちゃうの。もう一度スキルで呼び抱いた時には元に戻っているのよ」

「へぇそうなんだ」

「あ、そうそう先代勇者で思い出したけどあの子如何だった」

「あの子って誰ですか?」

「今代の勇者よ」


昴の疑問にクリスティーヌが答える


「ダメね、あんなのは勇者なんて呼ばないわ。復讐心の塊よ。勇者とは勇ましくなければならない、勇者とは自分の為ではなく誰かの為に戦わなければならない、勇者だから何かをなすのではない、何かをなしたから勇者なのだ、と彼もよく言ってたしね」

「私も似た様なポエムを聞かされたよ」


ポエムっておい、多分良いこと言ってたんだろうからちゃんと聞いておけよ。


という突っ込みは声に出さずに昴は苦笑いをしていた。


「実際彼はいろんなことを成し遂げたしね」


先代勇者は各地の町や村を回って魔物の被害などから守っただけではなく、世間一般的に悪とされている魔族の王─魔王─と対談し魔族に危険性が無いことを表明した。だがその情報は各国の王達によって隠蔽された為今でもそのことを知っている人はほとんどいない。

他にも金や住む場所の無いもの、孤児達の為に冒険者ギルドを立ち上げこの事を良く思わない各国に対しての抑止力としてクリスティーヌ率いる【乙女の花園】を勧誘したりして今の冒険者の地位を確立したのだ。


「先代勇者って凄いんですね」

「そうよ世間では彼以上の勇者は居ないって言われているぐらいだもの。そう言えば彼って元気?もうすぐくたばりそうだって聞いたけど」

「確かにいつくたばっても可笑しくない感じだけど元気だよ」

「そうそれは良かった。そう言えば服を買いに来たんだったわよね、なのにこんなに話し込んじゃってごめんなさいね。お詫びに少しサービスするわ」

《さすが社長、太っ腹》


狸寝入りを貫き通していたディーネはサービスという言葉に反応し、即座に起き上がった。


「あら、現金なドラゴンちゃんね。そういうの嫌いじゃないわよ」


などと軽口を叩きながら皆服を選び始めた



服を選び終わった一同、昴の今の格好は黒いシャツに黒のボトムズ、そこ上からファーのついた白いコート、手にはヒエログリフの様な文字と幾何学模様を隠す為にレザーグローブをしていた。


「この格好、結構恥ずかしいんですけど」

「そのうち慣れるよ。大丈夫似合ってるから、お会計で」

「全部で358,000ユルドなんだけどサービスして298,000ユルドよ」


昴は金額を聞いて驚愕した。


「朝霧さん、もっと安いのにしましょう」


そういうよりも早く優姫は白金貨を何処からか3枚取り出して払っていた。


「お釣りは取っておいてね」

「イケメンだ」

《イケメンがいる》


リアルではほとんど聞かない釣りはいらない発言を優姫がした為ついそう漏らしてしまう昴とディーネ。


「いやいやこんな高いもの買ってもらうわけにはいきませんよ」

「大丈夫大丈夫、その服素材の割にはかなり安いから大分お得な朝買い物なんだよ」

「いやでも金額がかなり大きいですし」

「言っておくけどこの世界じゃ昴の着ていた制服の方が価値が高いんだよ。それのお詫びがこの程度の金額で済むなら安いもんだよ」

「わかりました、有り難く着させていただきます」


最終的に昴が折れて満足そうに頷く優姫。


「じゃあ私達はもう行くね」

「有難うございました」

「あらそう、こちらこそありがとうね。私はもうすぐ別の街にある本店に帰るけど今後ともfashionmonsterをよろしくね」


昴達はクリスティーヌに見送られながら店を後にした。

感想、評価を頂けるとありがたいです。


ブクマ感謝ですm(_ _)m

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