ボッチ、初めての魔法②
前回の後書きで朝霧さんに殺されかけたFです。
たまたま習得したばかりの水と光の魔法を使って何とか回復できました。
あの人マジで化け物ですね。
あ、前回書き忘れていましたが回復魔法は水属性と光属性に含まれます。
では本編をどうぞ
静寂に満ちたギルド内の教室。その中で手に刻まれたヒエログリフの様な文字と幾何学模様が消せないでいる昴を優姫とディーネがなんとも言えない様な顔で見つめていた。
「えっと、なんて言うかその、ごめんね?」
その静寂を破ったのは優姫だった。申し訳なさそうに謝罪する優姫。
「いや朝霧さんが謝る様なことじゃないですよ」
《そうそう過ぎた事なんだし気にしても仕方ない》
二人してそう優姫を励ました事で優姫は元々あまり感じていなかった罪悪感が完全に無くなったみたいだ。
「よし、座学も一通り終わった事だし早く行こっか」
そう言って昴達を引っ張りながら教室を出て行こうとする優姫を昴が引き留めた。
「ちょっと待ってください、朝霧さん。行くってどこにですか?」
《最低限これからどこに行くかぐらいは教えて欲しんだけど》
「こんな状況で行くとなるとあそこぐらいしかないでしょ」
*
と言われて昴達が連れて来られたのはギルド裏の広場だった。
どうして此処に連れてきたのかを優姫に尋ねたところ、座学の次は実技に決まってるでしょ、との事だった。
「よし、じゃあ始めよっか」
「始めるってなにをすればいいんですか?」
「まずは掌の上に魔法で作り出した水を浮かべて私がいいって言うまで維持しといてくれるかな?」
昴は言われた通りに掌の上に水の球を出現させる。その間に優姫はどこかへ立ち去って行った。因みにディーネは昴の頭の上で寝ている。
朝霧さんどこいったんだろう、てあれ?これ以外にむずいぞ。
と思いながらも今まで同様すぐにものにした昴はその水の形を変えたりして遊んでいた。
「流石昴、もう物にしてるね」
暫くするとそう言って優姫が戻ってきた。
「どこいってたんですか?」
「ちょっとした準備だよ」
「準備?」
「そう、今からやる訓練のね」
「なにをするんですか?」
「そんなに身構えなくても、あの的に魔法を打ち込むだけだの簡単な訓練だよ」
そう言いながら広場の端を指差す優姫。その方向には先程までなかった木製の十字架の様なものが何本も植えつけられていた。
「あれにぶつけるだけですか?」
「そう、あれにぶつけて破壊できれば終わりだよ」
「簡単そうですね」
そう言って昴は掌の上に浮かべている水の球をその的の一つに向かって打ち出した。
「あれ?」
が的を大きく外した。
《魔法ってね掌で浮かべたりするのは比較的簡単なんだけど、飛ばして当てるってなると難易度がは上がるんだよ》
「へぇそうなんだ」
そう言って昴は自身の背後に大量の魔法陣を展開していく。其処から水の球が連続して射出するされていく。初めは明後日の方向へ飛んで行っていた水の球だか一発一発撃つ度に少しずつ確実に方向修正され遂に命中した、が的は無傷だった。
「あそうそう、言い忘れてたけどあの的には風の魔法で結界を張っているからね」
かなり強めに打ったのに傷一つ付かずに呆然としていた昴に優姫が言った。
「其れを先に言ってくださいよ」
昴の愚痴はごもっともである。
まぁ聞いてても結果はあまり変わらなかっただろうけど。其れよりもどうしよう、今のままじゃ火力不足なんだよな。
…あ、あの手があった。
昴は又もや掌の上に水の球を出現させる。其れを的に向かって射出する。先程とは比べ物にならない速さで飛んで行ったそれは的に1ミリ程の小さな穴を開けた。
「ウォーターカッター?」
昴がしたのは水の球を圧縮する事、それは優姫が呟いたウォーターカッターと同じ原理である。ウォーターカッターはかける圧力によっては鉄板どころかダイヤモンドまでも切断する。昴は自身の背後に展開してある数多の魔法陣から圧縮した水を幾つもある的に向け放ち全て穴だらけにした。
「終わりました」
「思ってたより早く終わったね」
「向こうの知識が役に立ちました」
「じゃあ休んだら次の訓練だね」
「え、終わりじゃないんですか?さっき的を壊せば終わりって言ってましたけど」
「え、ああそれはね的当てを終わりってだけで訓練自体はまだあるよ」
「あ、そうだったんですか」
「そうだよ、だから休んだ休んだ」
優姫に急かされて昴達は休憩をとった。
*
広場の真ん中で向かい合う昴と優姫。ディーネは昴が先程まで休息を取っていた場所に寝ている。 因みにこれから始められるのは魔法のみの模擬戦だ。
「いつも通り昴の好きなタイミングでかかってきていいよ」
「分かりました」
そう言って昴は水の球を優姫に向かって大量に打ち込んだが優姫はそれを空気の球で全て撃ち落とした。
やっぱり駄目か、じゃあこれで!
先程飛ばした水の球と同等数の氷塊を飛ばして行く。優姫は少し驚いたみたいだがそれを物ともせずに氷塊を全て撃ち落としていく。
じゃあこれならどうだ!
昴はまた水の球を大量に打ち込んでいく。優姫もそれを先程と同様に撃ち落としていくが撃ち落とした水の中から氷塊が飛来する。優姫はそれを避ける為に動き出そうとしが昴に足元を凍らされ一瞬出遅れ氷塊が着弾する。
「やったか?」
「それはやってないフラグだよ」
昴の呟きに砂煙の向こうから無傷の優姫が答える。
「それはわかっててやってるんですけど、傷一つ付いてないとはさすがに思ってませんでしたよ」
「あれにはビックリしたけど私の結界を破れるほどの威力は無かったみたいだね」
「そりゃあのウォーターカッター擬きと比べたら威力は落ちてますよ」
「そっか、じゃあそろそろ私も反撃するね」
そう言うと同時に優姫の姿がブレた。昴がそう認識した時にはもう優姫は昴の懐へと入っていた。昴の腹へ掌底を打ち出した優姫。それを昴は咄嗟に体の前で両腕をクロスし後ろに飛んで衝撃を抑えたがそれでもかなりのダメージがあったらしく着地に失敗し地面を転がる昴。
「ゲボッゲボッ…はぁはぁはぁ直接攻撃は禁止じゃ無かったんですか?はぁはぁ」
予想外な威力の攻撃をくらい若干ふらつきながらも何とか立ち上がる昴。
「そりゃ禁止だよ、魔法の訓練なんだし。ただ私がやったのは至近距離でちょっと強めに魔法を打っただけのことだよ」
あれでちょっと強めってこの人やっぱいかれてる。それにしてもどうする?ウォーターカッターも当たらないだろうし。こうなりゃもうヤケクソだ!
昴は優姫を大きな水の球に閉じ込め窒息させようとするが、結界によって拒まれる。
ならその結界ごと!
優姫を覆っている水の圧力を上げていく昴。だが優姫の結界はびくともしない。無駄だと判断した昴はその水から氷塊や圧縮した水を飛ばして行くがそのほとんどが結界に拒まれる。その結界を突破できたものも全て紙一重で躱されていく。
「そろそろ鬱陶しいね、これ」
自らを覆う水を眺めてそう呟いた優姫は内側からその水に向かって空気の球や風の刃を大量に飛ばして行く。優姫を覆う水は初めの数発は耐えたが直ぐに耐え切れなくなりついに弾け飛んだ。優姫を覆っていた水が無くなったためまだ残っていた空気の球や刃が広場の彼方此方に飛んでいく。
《危ないな!僕を殺す気?!》
昼寝をしていたディーネの方にもどうで行ったみたいだ。
「嘘だろ」
そう呟いた昴の体は空気の球や刃でボロボロになっていた。優姫を覆っていた水を破って飛び出してきた空気の球や刃の多さに唖然としてしまった昴は咄嗟に動くことができずにそれを食らってしまったのだ。
「じゃあこれで終わらせるね」
そう言って優姫は昴の下に黒く輝く大きな魔法陣を展開していく。
「ガァ…ァァ」
優姫が魔法陣を展開すると同時に昴は喉元を押さえうずくまっていく。
息が…できない。空気を消した?いやそれなら内側からの気圧に耐え切れず眼球などが飛び出してくるはず。なら如何して…やばいそろそろ意識が、…ああそうか、酸素か。
結論にたどり着くと同時に昴の意識はブラックアウトした。
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