第十七話 変化
館の前は次々と増えていく黒い異形の化け物に溢れていた。阿修羅は、粛々と切り捨てながら、やっと出会えた彼女のことを考えていた。
彼女は、ずっと阿修羅の光だった。今もこれからも。自分は今、切り捨てている化け物と大差ないものに成り下がってしまったが、彼女は、変わらないでいてくれた。それが、救いであり希望だった。
「それにしても、煩わしいな。]
阿修羅の剣はどす黒く一見すると、異形のものと同質の存在のようにも見えた。
「毒をもって毒を制す。」
同質のものでありながら、より邪悪なほうがその場を制す。単純な節理だった。
「この陣から湧いてるのか。」
毒の剣を陣に突き刺すと、余波を残しながら陣は消えていく。
「さて、陣をすべて破壊するまで、どれだけ耐えられるか。・・・・まあ、多少は減っても問題はないか。」
阿修羅にとっては長年ともに過ごした部下ですら、どうなろうと興味はない。
「はるか様が、・・・宮園さんが無事ならこの世界なんてどうでもいい。」
悪魔と契約したときに、彼女以外のすべてを切り捨てたのだ。この世界の人間が何人死のうがどうでもいい。
「はやく、あなたのもとに戻りたい。待っててください。宮園さん。」
ぶるりっ。な、何か寒気がしたな。いや、いや、集中しないと。
私は今、扉を魔改造している。頼子ちゃんの結界にも手を加えさせてもらい、360度
侵入できないように最強の籠城作戦を実施中だ。
さすがに、始祖様の力を使ったのだから、この磨改造がしょぼいわけないはず!!
式子ちゃんは、人体を試すなら自分の体を使ってくださいとか、信じられないことを言うから必死で
首を横に振った。そんな、恐ろしいことまともな精神ではできないからっ!!
まあ、ひとまずは安心。他力本願だけど鬼人の人達なら大丈夫。大丈夫・・・。阿修羅も無事かな。
「まっ、殺しても死ななそうな奴だし、大丈夫だよね」
「心配・・・・・・?」
「え?え、う、うん。敵がこの部屋に来ないか心配だよ。」
「・・・大丈夫。はるかは、依子が守るから。」
「ありがとう。いつも、助けてもらってばかりだね。でも、私にも依子ちゃんのこと守らせてね。」
「・・・はるかが、年上みたいなこと言う。驚き。」
「年上だよっ!・・・あれ、年上だよね!?」
くすくすと子供たちが笑う。ここだけ切り取ったら、いつもの日常だね。
死にたくない。死なせたくない。絶対、この世界で生き残る。
もう、能力が増えることも、力を使うことも恐れない。
・・・あの儀式で私の人格も少し変わったのかな。
日本にいた頃は、すべての事がどうでも良くてこんなふうに誰かを守りたいなんてなかった。
守るためには覚悟を決めなきゃ!!