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グランレコード  作者: 33
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5.武器マニア 前編

長らくおまたせしました。少々話が長くなったので前編と後編に分けました。

「武器をなにも携帯していないのでおじゃるか!?」


武器を持っていないのか聞かれ答えたらかなり驚かれた。理由を聞くと城下とその周辺は、定期的にモンスターを全て討伐するので心配いらないがたまに入り込み暴れるモンスターもいるらしいからだ。だから十歳くらいになると武器を送るという習慣まであるという。


「トリカブトは、武器もっているように見えないんだが暗器なのか」


「補助として短剣くらいは、携帯しているでおじゃる。まろの武器は、これでゆえな」


そういうと何もないところから小瓶がいくつも出てきた。これがいわゆる空間魔法というものですか!?などと驚きたいがそれ以上にトリカブトの取り出した小瓶の中身がどぎつい色で某大国のジュースを彷彿とさせる。


「飲み物じゃないよね」


なんせトリカブトは、毒マニアだし。


「今だしているのは飲んでもよいでおじゃるが軽いのでも半日全身麻痺になるでおじゃるよ」


「軽いもので半日!?ついでに聞くと一番酷いのは」


「酷いものでおじゃるか?わからないでおじゃる」


さもわからないとばかりにトリカブトは首を傾げるが本当だろうか。でも自分に被害が加えられなければ知らなくても問題ない。


「なに話してんだ、お前ら」


「あっ、ホモ先輩」


「ちげぇよ!俺の名前はスーラブだ!名前の通りこの熱い胸にあるのは俺の天使であるスーちゃんだけ。決して野郎はすきじゃない」


「ホモ殿、五月蠅いぞよ」


「殿なんてご丁寧にどうも…ってどっちにしろホモ!?」


スーラブが頭を抱えて呻く。どうも異様に弄りたくなる人だよな。弱みがわかるからいじりやすい。


「話を戻すでおじゃるが、はやく武器を買いに行った方がよいでおじゃるよ。今日は、このあと暇があるでおじゃるか」


「あぁ、うん。もしかして一緒に行ってくれるのか」


「うむ、友人としてこれしきのこと当然でおじゃろう。鍛冶屋に知り合いがおるゆえにそこでよいでおじゃるか?」


「それでいいよ。ありがとうトリカブト」


私がそういうとトリカブトは優しげに微笑み返す。毒関連と言葉使いを気にしなければ親しみやすくていい人だよな。気があわないわけじゃないし。


「俺もいってもいいか。ちょうど買い換えようと思ったんだ」


「「まだいたんだ」でおじゃるか」


「おまえらヒドイ!」


とりあえず鍛冶屋にいくことになった。そういえば武器を買うなら武器屋ではないのだろうか。そしてアリスよ、とても嫌いなのはよくわかったが頭を抱えたスーラブを足蹴にしちゃいけないよ?





金属と金属がぶつかり合う重厚な音が外まで響く。その音は、まるで太鼓を叩くように力強く心臓の鼓動のように淡々としていた。うるさいと思う音だが不思議と立ち止まって聞き入りたくなる。


「これは確かに鍛冶屋…だな」


ここに来る道すがら鍛冶屋と武器屋の違いについて聞いていた。鍛冶屋は、おもに注文されたものを造る。鍛冶師にも得意・不得意があるのでその得意なものを造ってもらうのが通常らしい。武器屋は、いわゆる中古を扱っていて大きい店ならば名品と呼ばれるものがあるが小さい店では一回使ったら折れそうな安物しかないそうな。


「お前らここで買うのか!ここX(イクスの店じゃねぇか!?」


「X?」


「ここの店主のX殿は、鍛冶ギルドとまろ達が所属しておるキームンの両方に加入しておるのでおじゃる。だから知っておるのでおじゃるよ」


「へー」


キームンには、いろいろな専門職の人がいるんだな。医者もいれば鍛冶師もいるし研究者もいる。もしかしたらコックやパティシエなんかもいたりするのだろうか。


などと話していると中から聞こえてきていた槌の音がやんだ。



「音が止んだでおじゃるな。今なら入っても問題ないでおじゃろう。レグ先に入るでおじゃる」


「私が先でいいのか?ここは知り合いがさきじゃあ……」


「よいのでおじゃる。さぁさぁ」


強引な雰囲気を不思議に思いながらも扉を開け店に足を踏み入れた。


その途端に天井からロープで吊るされた直径50センチ位の鉄球が現れた!


「えっ!?うわぁぁぁっ」


避けようかと思ったがトリカブト達にぶつかってしまうので却下。鉄球を蹴り返すのも足首を骨折しそうなので却下。鉄球を受け止めるのは無理。


そこでふと思いついた先に走り鉄球を吊るしている紐を蹴ればいいのではないか?足首は骨折しないだろうし。


これ以上考えても無駄なので実行に移した。こちらに向かってくる鉄球に向かって走る。何故か静止するように言う声が聞こえるがかまいやしない。人間の首を狙う高さのキックをロープにぶつけた。


「うわわっ!いてっ」


結果、足を軸にしてロープごと回転して足に絡まった。位置エネルギーが回転エネルギーに変換されて止まったが片足を吊られた情けない姿になっている。


「なかなかのアホじゃな」


鉄球が来た先からよく日に焼けた体格のいいお爺さんが出てきた。頭には、白いタオルを巻いているため髪がどうなっているかわからない。


「でもいい人でおじゃる」


「トリカブトの連れか。もしや新しいギルド員とはこの小僧かの」


「そうだ」


スーラブが苦々しい顔で店の中に入ってからいう。お爺さんは、意外だという顔でスーラブを見る。


「なんじゃお前もおったのか。えーと…なんじゃたかの」


「スーラブだ!」


「力まんでも覚えておるわ。馬鹿正直に鉛球を体で受け止めて飛ばされたのはキームンではお前位じゃい」


「のぉぉぉっ!俺の黒歴史」


アーマーだから耐えきれると思っていたのかな。しかもアレ鉄球じゃなくて鉛球だったのか。鉛の元素番号は82で鉄の元素番号は26だから、同じ大きさでも鉛の方が重いよね?


「とりあえずコレとってくれませんか。頭に血が逆流しそうなんですけど」


「そうじゃった、ホレ」


お爺さんは、そういった途端にロープをサッと切った。突然自由になった体は、重力のままに床へ崩れ落ちる。一息つこうとするとお爺さんに脇に手を入れられ、転んだ子どものように立たされた。軽くないはずの自分を支えられるお爺さんに驚く。


「わしの名前はXじゃ。そんでお前さん、名前は?」


「レグ」


「よろしくのレグ。いきなり鉛球が飛んできて驚いたじゃろうがあれはちょっとした試験じゃから新しい客人にはしてもらうんじゃ。おなごは別じゃがな」


女の子にもしたらさすがに鬼だよ。それにしても何の試験なのだろうか。


「Xあんたからみてこいつは何の武器がいいと思うんだ」


「そうじゃの……反応は悪くないだがいいとも言えん。筋肉のつき方からして力は平凡。骨格的に肩が立派じゃの。状況判断もある程度。ところでレグ」


「えっ、はい!」


いきなり話をふられるとは思わずに楽にしていたが背筋を伸ばした。


「なぜ紐を吊った"ロープ"を蹴った。普通は球を受け止めるかよけるじゃろ」


「受け止めきれる自信がありませんでした。それにどっちをとっても後ろの二人に被害が及ぶ可能性がありました。だから自分に一番被害が出ない方法を使ったんです」


「ロープごと自分が飛ばされるか鉛球が反対の方へ飛んでもう一度戻ってくるのも考えてやったのか」


「あっ、忘れてた」


こういうのがあるからアダ名が"熊"とか"イノシシ"ってつけられたんだろうな。当時女子高生だった私につけるアダ名じゃないよねー。


「うっかりもんか。………ふむ、中距離もしくは遠距離向けかの。近距離だとうっかりで死にかねんな」


「えっ!?」


「武器なら弓、魔法が使えるなら後方向けじゃろ。それで魔法使えるのか?」


「わかんないです」


そもそも魔法あるんだ。そういえばトリカブトが空間魔法的なもの使ってたな。他に見た覚えがないのだけど。


「わからんじゃと?ギルドに入るとき魔力を測らんかったのか」


「測るもんなんですか?」


よくある小説だと"計測方法がないよー"とか"なんか魔法を使ってみよー"とか"この水晶に手を当てればー"なんてところかしらね?これがチート系だと普通の人より魔力が多いとか、逆に少ないとか出てくるね。


「呆れたものじゃな。ちょっと待っておれ何軒か先に魔法具屋があるから借りてくるわい」


Xはそういうと大きな体に似合わない機敏さで駆け出していった。


「アレって借りようと思って借りられるもんだったか…?」


「まろの記憶では一つに金貨10枚だったはずでおじゃる」


「金貨10枚?……でもいくら??」


銀貨が10万ベッドなのはわかっている。ただ金貨には、お目にかかったことがない。


「金貨1枚、100万ベッドでおじゃる。それが10枚なので1000万でおじゃるまろとてそうそう見るような金額でないゆえに知らぬも仕方ないでおじゃろう」


「だよなー。ボスモンスターを狩って金貨1枚だしな。一緒に討伐した連中と分けなきゃなんねぇから取り分もっと減るしな」


「よく借りられるね」


「どーせ、Xの奴と賭けをして負けてんだろ。いろんな奴に勝負吹っ掛けて勝ってるて聞くし…イッテェ!なにすんだよ!」


Xが青筋を浮き立たせながら拳を握りしめ立っていた。


「ふん!失礼な。そんな理由じゃなく純粋に利益があるからじゃ。魔法を使えるなら魔法具屋は必須じゃからな」


「そうでおじゃるよ。杖や本、魔力を含むものは魔法具屋にいかねばないでおじゃるからな。測定して魔力があれば己の店で定期的に買ってくれるように言えるでおじゃるし」


「てめぇ、裏切りやがったな!」


「なんのことでおじゃろうか」


腫れ上がってきたタンコブを押さえスーラブが怒りだす。裏切ったとはなんなのだろうか?


「あの~魔力の測定をしたい方はどなたでしょう…?」


恐る恐るといった様子で顔を出したのは、絵に描いたように平凡な男だ。特徴が平凡といって通じるくらいの平凡さ。たぶんXが行った魔法具屋の主人だろう。


「あっ、私です」


私が手を上げていうと魔法具屋の店主は、肩を撫で下ろした。なぜこんなにオドオドしているのだろうか?


「そうですか。私は、魔法具屋をしているマ「いったん黙れ馬鹿」


魔法具屋は、言葉を遮られ仕方ないなという顔を浮かべる。


「魔法具屋をしている「んだとこの筋肉達磨の爺!」


さすがに2回目は、驚いたのか困惑した表情を浮かべた。


「魔法具屋を「犯罪者手前のおめぇさんにいわれたかねぇな!自分の子どもみたいな子につきまといやがって」


「あんたの趣味の方がよほどおかしいだろうが!」

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