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グランレコード  作者: 33
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35.一人じゃ駄目だ

「っ!」


暗闇に驚いて目を覚ますとそこは、真っ白な部屋だった。顔を横に向けると点滴らしきチューブが腕に刺さっているのが見える。


「どこ…?ここ」


たしかオブザーバー0を倒したところまでは覚えている。でもその後は…?


「つーか、体重いし、肩こり??目もぼやけるし元の体に戻ってるぽいっな」


頭にはペタペタ大量に何かつけられていたが怠い体で全てとった。点滴ももちろん外すと私の眼鏡が置かれているのに気がつく。眼鏡をかけるとよりいっそうまわりがよく見えた。


「病院じゃないよねぇ」


病院にしては人がいる雰囲気ではないがまったくいないわけではない。たぶん朝の誰もいない大学の研究室に似ている。人の気配だけを残し空っぽなところが被った。


「うーん…、たぶん美雨博士の研究室なのかな。色々思い出してきたけど」


私が学んでいる大学に美雨教授が学部長のよしみで講演に来たのが始まりだった。講演内容は、ブレインインターフェースについてで熱弁を奮っていた。面白そうだったので色々質問した結果仲良くなった。しばらく経って研究の被験者にならないかときたので喜んで引き受けたのだった。


「そこからの記憶がないってことは、教授のところについてこうなったわけか」


とりあえず脱出の方法を探すべきかと寝ていた場所から降りようとしたが力が入らず点滴を吊っていたものを杖がわりにした。


「さてと探索…あれ」


案外楽に開いた扉からでると病院の服を着た男と目があった。お互いに言葉を発することなく見つめ会う。


「あんた美雨博士か」


「人違いです。私は諏佐瑞季です。えっと、あなたはベン博士じゃないですよね」


明らかに日本人だから違うだろうと思うが日系アメリカ人の可能性がある。


「俺は、久我だ。もしかして…お前レグか?」


「レグはゲーム中の名前ですけど…もしかしてチアキさん?」


こちらがネナベならチアキがネカマもありえる。


「そうだ。レグなら話しが早い。美雨・コルダーを探すのを手伝ってくれないか。この施設はコルダー博士が持つパスがないと入ることが出来ない」


「なんでそんなことを知っているんですか」


「俺は探偵だ。君のご両親の依頼で君の居場所を探していた。場所はわかったんだが捕まって君と同じ目にあったんだ。我ながらなさけない」


「まぁ、そういうこともありますよ。…たぶん」


お互いに現状を理解したので同じ行動をすることに異存はなかった。


「博士どこにいるんですかねぇ」


「俺も色々調べていたがさすがに内部についての情報がないからわからねぇんだ」


「少なくともオブザーバー0を運用するためのスーパーコンピュータがあるはず。でも、スーパーコンピュータってかなり大きいし冷却も必要だからこの建物ものすごく大きいんじゃないですか」


「あぁ、島一つ買い取ってたよ」


島一つ買い取ってるってどんだけの金持ちだ。


「あっ、扉がある」


「罠の危険が…って開けちまったか」


扉の向こうには、おびただしい数の画面と白衣を着た綺麗な女性がいた。初めて会った時もそうおもったが色々知ってしまった今もまた同じだった。


「起きてしまったのネ。起きなければ楽しい夢を見たままでいられタ。楽しかったよネ。ミススサとミスタークガ」


「ファンタジーが好きな私には楽しいところでした。でも私にはやりたいことがあったんです。前に話ましたね」


「一人でも多くの人間を救うために学び研究したイ。無力な自分に嘆くことがないようにでしたネ。でもあなたの問題と環境によってその希望がはたせなかったとしてもですカ。男ばかりで女だと見下し、どんなに頑張っても誰も評価してくれなくてもですカ」


たしかに男女平等社会をうたってもやはり異分子は異分子なのだと弾かれる。でも認めてくれる人がだれかいたはずだ。


「私は私を馬鹿にした捨てたやつら許さなイ。みんな消えればいいよ。ひとりぼっちの苦しみは、ひとりぼっちにならないとわからなイ。だから私は、私の持つ全てで滅ぼすヨ」


「それがコンピューターの乗っ取った人工衛星の墜落か」


「そう、あなたは人工衛星が落ちたの知っているよネ。あれは、まだ序章にすぎなイ。今度は核を爆発させる。あなたたちのおかげで核施設のセキュリティは解除出来タ。さすがに巨人(アメリカ)は強かったでしょウ?」


コルダー博士は、楽しそうな口調の割に顔がずっと無表情だった。それがとても恐ろしい。


「まさか…カオスカーニバルの正体は…」


「セキュリティを視覚化して攻撃させたものでス。チャイナのセキュリティは、数が多くて面倒でした。ニッポンのセキュリティは、とても甘いネ」


必死に倒していたのが各国のセキュリティだということに愕然とした。ならばセキュリティの無くなったシステムは…。


「Enterを押せばシステムに仕込んだバグがシステムを乗っ取って攻撃を始めル。もうあなたたちの脳を演算に使うような段階ではなイ。もう全て終わっているノ」


「やめてください!コルダー博士」


「止めても無駄デス」


コルダー博士の指がEnterに添えられた。少しでも動いたらマズイ雰囲気にチアキが息を飲む。私自身もどうしようかと脳内で会議は踊る状態になった。でもこれは現実である迷ったならこれである。


「はぁ…、そぉっい!」


「えぇっ!へぶっ」


コルダー博士に突進からの抱きつき攻撃を行った。まさかの突進に驚いて避けようとしたため指がEnterから離れたのが幸いだった。


「Get away!逃離!離しなさい!」


「この状況で離す馬鹿はいないでしょう。こういうことするからクマとかイノシシとか言われるんだろうな。今回役にたったけど」


「クマとイノシシ…まぁ、あの見事な突進はイノシシだな」


「ひとまず縛るの探してもらえない?その間も説得するけど」


「確かに縛るのによさそうなのがないな。外で探すから待ってろ」


チアキは部屋を出ていった。コルダー博士は脱出を諦めたのかグデッとしている。


「なんなノあなたは、私の邪魔をしてくるノ」


「私は憧れのあなたがこれ以上罪を背負ってほしくなかった。あともう1つあちらでベン・シーラーという人にあなたを止めて欲しいと頼まれました」


「ベンが…?ベンがそんなこと言うわけがなイ。私がいなくなって清々したハズ。ベンはことあるごとに私にあたった」


なんか覚えがあるフレーズだな。私の感が逃げた方がよいと言っている。でも逃げるということは、コルダー博士を逃すということなので出来ない。


「メイユイ!You made a such thing(君はなんてことを)!?」


金髪碧眼のこれぞ外人という男が入ってきた。この男だれだろうか?


「ベン!Why are whether(なんでいるの!).」


「I because I found that you're here(君がここにいるとわかったからだ).」


何を言っているのかさっぱりわからない。とりあえずこの金髪の外人さんがベン・シーラーって人なのだろう。コルダー博士のこと知っているようだし。


「ひとまずさ、いつまで捕まえておけばいいのかな?」


「そこのベンって人が任せろってよ。コルダーって人も暴れる気力なさそうだし」


「そんじゃいいか」


随分と寝ていたのかだいぶ体力が落ちているので疲れた。それにとても眠い。でもこれだけはコルダー博士に言っておきたい。


「コルダー博士」


「…Yes」


「本当は止めて欲しかったんじゃないですか。だから私達が起きる方法があったし、Enterキーを押すのをためらった。…私はあなたが優しくて強い人だと思う。でも強いからって一人じゃ駄目なんだよ」


あっちの世界で一人の時にあまり寂しくなかったのは、ギルドでたくさんの人に出会って関わりあい必要とされたからだ。自分はここにいていいのだと思えたのは、とても幸運なことだと思う。


「私に暖かい夢を見せてくれてありがとうございます」


「ありがとうございまス?私はあなたを利用しただけですヨ」


眠くて起きていられなくなってきたが戸惑うコルダー博士の戸惑う声が聞こえる。


「それでも…」


自分が最後何を言ったのか知らぬまま深い眠りに落ちていった。

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