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グランレコード  作者: 33
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29.嵐の前の静けさ

目を開けるとここ最近見慣れた壁があった。ぼぅっとした頭でまるで小説のような出だしだと突っ込みを入れる。横を見ると桶らしき物を持ったチアキがいた。


「レグ!目覚めたか。おい、レグが起きたぞ」


チアキが出ていくとギルマスとトリカブトがやってきた。なぜ二人がいるのかわからず内心首を傾げていると魔術をかけられたり、脈をとられたり採血されたり色々される。


「えっ、なにやってんのコレ?」


「検査でおじゃるよ。アルキダケの胞子騒ぎで三人が倒れたと聞いてまろが状態異常を治してもレグが目覚めなくての。マスターになんでか見てもらったでおじゃる」


ギルマスまで登場って相当だよね。


「君は自分の魔力量以上の魔術行使を行ったので魔力の枯渇による植物状態に陥っていました。僕の予想では、足りなかった魔力が支払い終えるまで寝ているだろうと思っていましたが。案外早かったですね」


「えっ、そんなに時間経ってるんですか」


言われてみればどことなく体が重い。酷い風邪をひいて何日か寝たあとなんかがこんな体調だった。


「2週間だ。馬鹿!」


「そりゃ寝すぎだ。心配させてごめんね。チアキ」


「俺は心配なんかしてない!」


美少女のツンデレが見れるとは眼福だ。中身は女だけど可愛いものは可愛い。これで元の体ならいい子いい子で頭でも撫でたいところだ。


「トリカブトそういえばクリスがさっき君を呼んでいたのを思い出したよ。その用事のついでにレグが起きたことも言った方がいいかもね」


「そうでおじゃるか?まぁ、レグの体調も悪くないようでおじゃるしそうするでおじゃるか。失礼させてもらうでおじゃる」


トリカブトが机の上のヤバそうな色の品々を空間にしまうと部屋からでた。


それと同時にまるで水の中にでも入ったかのような感覚に襲われたが、一瞬でいつもと同じ感覚に戻る。たぶんギルマスが何かをしたのだろうと予想するが何をしたかまでは判断つかなかった。


「まったく君は無茶をするんですねぇ。ついでに言いますが盗聴防止と間違ってもこの部屋に入れないように結界を張ったので解除しないでください」


「あっ、はい。倒れたことに関しては面目ないというか…」


「僕にも落ち度がある。きっと僕じゃない僕の情報が有益でその後を考えず君が暴走することくらい推測できたというのに」


まるで餌を見つけたら猪突猛進するとでもいうような内容である。非常に合っていて不愉快だ。


「ところで無茶をした結果何かわかったかい」


「いきなり話の筋を折るんですか。まぁ、いいですけどね。残りのオブザーバーが誰かわかりました。ダージリンのブラスター、城のサッサー、うちのギルドのセクトさんです…」


「あのブラスターさんがAI!?」


チアキは、驚いているがギルマスは何を考えているのか黙りこんでしまった。


「まず3人を確保する必要があると…」


「その必要はないです。君や彼女が倒れたあの日にその三人は姿を消している。僕は依頼で三人の関連性を調べていたが君の話で全て繋がった」


「ソレハヨウゴザイマシタ」


ギルマスがそれでよくても私には悪い。その三人がいなくなったってフリダシに戻ってるじゃないですか!必死にやったのに嘘だー!


「ところで君は、どうやってこの三人を割り出したんです」


「それ俺も聞きたい」


「どうやったって、探す範囲を城下、私が会ったことがある人以外除外、それで私ではないものって条件で魔術行使しました」


「そんなもので見つかるのか…?いや、会ったことがある人という前提でいけば探す人数は限られるか。だから所属と名前まで出てきたということですか」


ギルマス一人が納得しても私がわからない。私と同じようにチアキも腕をくんで悩んでいる。


「何が問題なんですか」


「問題などありません。逆に君がやったのは画期的なくらいです。普通は、探すというのは探すもののイメージができていないと出来ない。だが君の方法なら闇雲に探さず記憶の中の人物を探せばいい」


「誰かやってそうですけど」


「いないんですよ。ですがたしかにちょっとした閃き程度ですね。ならこれをこう推測すると…なるほど」


ギルマスが口角を上げ非常に楽しそうな顔を浮かべた。珍しすぎて明日メテオでも落ちるのではないだろうか?


「おかげさまで彼らの行方がわかりました」


「「マジ」ですか!?」


「本来なら陛下にお伝えして兵を差し向けるのですが…。今回は貴方たちも関係者ですから連れて行きましょう」


それが本当ならば4人を倒すことも可能になるだろう。そうすれば私とチアキは、この世界からでることができると嬉しくなる。


だが嬉しさに浸る間もなく部屋の扉が乱暴に開かれた。


「その話俺も噛ませろ!」


「はっ!?ジルどうやって入ってきたの!」


「もちろんドアからにきまってんだろぉ。なんせ俺は紳士だからな」


こんな横暴な紳士など願い下げである。紳士というのは、女子どもに優しく礼儀正しい知的な人のことを言うのだ。間違っても強いとわかったら女性にも銃口を向ける奴には言わない。


「僕は、関係者じゃない君を連れていくつもりはない」


「捕り物なんだろ?あの甘っちょろい城の近衛程度がギルドで上位に入るメンツを抑えられると思ってるなんて言わねぇよな」


「思っていません。だから三ギルドから5名ずつ選出させます。今のところキームンで出す予定は、レグ、トリカブト、ローザンヌ、クリスティ、キョンだ」


「あ゛ぁ!?おい、あの根暗を出すつもりか。ここの結界どうするつもりだ。結界がなくなったらここがヤベェのはお前が一番知ってんだろ」


キョンが結界を張ってるのは知ってるけど何がまずいのだろうか。もしかしてギルドの研究者が作ったアレやコレが外に出るかもという話だろうか。


「そろそろ三人娘が使い物になりそうだから試運転も兼ねる」


「ちっ、対策済みかよ。しゃーねーな。諦めるか」


結構簡単に諦めると言ったものだが何か別の算段をつけて現れそうな気もする。なんせ強い奴と戦いたいと毎回ギルマスを襲撃するくらいだ。


「その周辺にいるは妨害になりますから駄目ですよ。偶然も駄目です。最悪な場合、うちのギルドから除名します」


ギルマスの言葉にジルは舌打ちする。後をつけてたまたま近くにいてたまたま戦闘に混じったと主張するつもりなのだろうか。


「そこまで読むのかよ。へいへいなら俺はここであんたをぶち抜けるように銃の手入れをしてるよ」


「そうしてください。あなたにしかできないことがありますからね。では、我々は行きます」


「おう」


ジルは返事を返すと部屋から出ていった。するとギルマスは、空中でサラサラと何かを書き始める。書き終えたものをリボンで巻くとチアキに手渡した。


「こちらを貴方のギルドマスターに渡して来てください。集合場所などの詳しいことはそちらに書きました。持っていってください」


「おっ、おう。わかった」


チアキは、空間にそれをしまうと物凄い早さで部屋を出ていった。


「君にも何か頼みたいですが、さすがに病人には頼めませんね。とりあえず出発は明日の朝になるので今はぐっすり休んだらいいです」


「そうさせてください。非常に眠いです」


体のダルさだけを最初気がついたがそれ以上に目の奥が重い。私は、出発が明日ならまだ寝ていていいのだと瞼を下ろした。

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