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グランレコード  作者: 33
33/44

番外編 ハロウィン

「こっちにもハロウィンがあるんだね」


「あるみたいだな。それにしても本格的というかなんというか…」


とある秋の夜にあちらでいうハロウィンに似た祭りが行われていた。それぞれ自前で準備してきたモンスターの格好をしてお菓子を貰いに行くものだ。

そして祭りが私を呼んでいる!つーことで私も仮装でそこらへんをフラフラしている。そんでもってチアキを発見した。


「チアキの格好は自分で?」


「そんなわけあるか!」


白いふわふわとしたプリーツたっぷり使われたスカートと、首もとを繊細なレースで覆われたまるでお姫様のような格好である。これは誇ってよい可愛いらしさだ。眼福である。


「この歳で白雪姫(シンデレラ)の格好を進んで着ると思うか!」


「へー、似合ってるけどね」


頭ポンポンしたりムギューっとしたくなる位似合っていると思うが言わない。絶対に変人扱いで逃げられる。妹にやったらキモい言われたし。


「ところでお前こそその格好はなんなんだ。猫の着ぐるみか?」


「ん?トレタスクっていうモンスターの格好だよ。虎に大きい牙が左右3つあるような感じなんだけど」


「だから口から白いのが6本出てるわけか。よく出来た着ぐるみだな」


「これ研究者の依頼の品で私が作ったわけじゃないから。研究者曰く寒暖に強いらしいよ」


いきなりこの着ぐるみ出された時モンスターかと思って"ギョエー!"なんて叫んだのは絶対言わない。うちのギルド危険なモンスターでも猫でも飼ってるかのように平気な顔するから恐いんだよ。この前なんか"耳が長くて可愛いミミちゃん"なんていうから兎とか想像したら人サイズのバッタ。耳だと主張するソレは、一般では触角という耳とは別の代物だ。


「今日は若干寒いから正直こっちと交換して欲しいくらいだまったく…」


「可愛いから着ててよ」


「レ~グ~この野郎!爆発しやがれ」


「あれスーラブ、ストーカー止めたの?」


「ストーカーじゃねぇ!我らが天使スーチョンちゃんを日夜影から見守ってるんだごらぁ!俺たちを犯罪者と一緒にすんな」


オブラートに包んでいるだけでやってることは、犯罪そのものである。ならば止めさせればいいと大学の友人なら言っただろう。だが抑えこむのは非常に恐ろしい方法で、抑えこみきれなくなった瞬間に爆発する。デモなんていい例だ。


「あー、ハイハイ。それで何の用」


「そりゃあもちろんギルドの先輩としてな。鼻を伸ばして役にたたなそうな後輩の鼻をへし折り使えるようにすることで大きな失敗をなくすためにきた」


「要するに心配できてくれたということですね。なら先輩、可愛い後輩のために思い切り手をあげてください。」


「はぁっ?」


疑問に思いつつ言う通りに手を上げるところは超素直だ。そしてスーラブの手は後ろにいた人物に当たる。


「なんだ俺と遊びたいのか?兎ちゃん」


確かにスーラブは、何の因果かホーンラビットの格好。そして後ろに立っていたジルはブルーウルフで狙ったんですか?と問いたくなってくる。


「イイエ、スグニイエニカエリマス」


「そんなこと言わずにな?俺の射撃の練習相手してくれよ。殺る気あるんだろ」


「お前みたいな戦闘狂と練習なんししねぇよ!それにやるの字ぜってぇ違うよな。って最後まで話キケェ!」


スーラブはジルに連行された。防御力高いから大丈夫だろうけど念のため合掌しておく。


「…レグ助かった」


「何が?」


「さっきの奴、俺を見て一瞬凄くいい笑顔したんだが…。あの顔、確実にまともじゃないことを俺にさせる」


そういってチアキが顔を真っ青にさせた。あながち外れではないのでたちが悪い。


「そういえば前に殺りあいたいとか言ってたな。やろうとすれば絶対にやるから気をつけて」


「肝に命じておく」


チアキの言葉に満足すると小さく白いものが目の前を過った。大きさ的にアリスと同じくらいだ。もしかしたらスーさんがアリスに幽霊の格好をさせて遊びにきているのかもしれない。幽霊の格好なら白い布を被るだけだし。


「アリス」


アリスは、呼ぶとやってきた。手足を一生懸命動かして何かを伝えようとする。話せないからはっきりとわからないが今日は、ハロウィンなのでお菓子をくれの催促だろうと検討をつける。口がないけど気分を味わいたいのだろう。


「お菓子くれってか?うん、まぁいいよ」


数が大量に作れるクッキーに、この時期にだけ現れる絶品カボチャのジャコランタンを練り込みその形状に似せて作った一品。綺麗な深い黄色に憎たらしい顔のジャコランタンが特徴。


「俺あったかな…。あぁ、昨日のツマミの残りあるな。はい」


チアキが出したのは、アーモンドやカシューナッツに似た色々な木の実だった。木の実系食べながらのビールが……ゲフンゲフン。それよりなぜ今も昨日の残りを持っている。


「いらないのか」


アリスは、チアキの問に頭?を横に振り木の実を貰うと何処かにいってしまった。一緒に回ろうかと思ったのにな。


「そういえばチアキは、どうして出歩いているんだ。前に会ったとき嫌そうだったよな」


「ハロウィンの警戒だ。祭りだといって悪質なイタズラを行う人物が出やすいらしいから、うちのギルドが様子をみることになっている」


「それって私も混じって警戒した方がいいかな」


私の言葉をチアキがジト目で返す。やらかした覚えなどないのだがなぜそんな目で見る。


「悪質なイタズラをする連中の3分の1がキームンだ。警戒をするなら自分の所が暴れださないようにしてくれ」


「アハハッ、…面目ない」


あの人らならやりかねないなぁ。……非常に心配になってきたよ。


「帰るよ」


「そうしてくれ仕事が減る」





ギルドに戻るとアリスとスーさんが魔女の格好をしていた。よくある三角帽子なんだがアリスいつもとかわらんよ?それもあるがなぜ魔女なのだろうか。


「あれ?アリス、スーさんと一緒に幽霊の格好してたんじゃないの」


「幽霊…違う…1日これ」


「まさかぁ、ちょっと前に東街の大通りで会った時幽霊の格好してたじゃないか」


「外、出てない。1日…ここいた」


スーさんは、祭りだからって嘘つくような子じゃないし。ならアリスじゃないのか?あの大きさは、赤ん坊じゃないとムリだよなぁ。


「なら、あれ誰?」


呟いた途端に頭にぶつかって下に落ちる。拾ってみると可愛いらしい包み紙に包まれた飴だった。もしかしてと思うが、お返しをくれる位ならちょっと遊びたかっただけなのだろう。そう思うことにした。


「トリック オア トリート&ハッピー ハロウィン」

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