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グランレコード  作者: 33
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25.カオスカーニバルⅡ

「大体周期が決まっているって話だったのに早すぎる!」


「ひとまずお互いやることやるべきだ。ここが平和にならないと立場上、元に戻る方法を探すのは難しい」


「もちろん」


チアキと強く頷き合うと別れた。




私がギルドに戻ると蜂の巣を突いたような大混乱さだった。前回は、ギルマスの予想でいつごろ来るかわかっていたからこその落ち着きだったのだと気づかされる。ひとまずセクトさんを探しだし、本を渡すと準備を整えホールに戻った。


「レグ」


「キョン?」


「おかしい。…魔力が混沌」


「混沌?」


今日ばかりは、キョンが何をいいたいのかさっぱりわからない。魔力が混沌とはどういうことなのだ。そもそも魔力自体よくわかっていない。詠唱すれば発動できる代物なのだから。


「気をつけて」


「そっちこそ」


いいたいことは終わったのかキョンは、人ごみに紛れていなくなる。


「準備ができたらこの陣に入ってください」


ギルマスの声に従い陣に入ると一瞬の浮遊感ののちに門の前に転送された。どうやらダージリンが集団詠唱を終わらせた後らしいがなにやら様子がおかしい。何人もの人物がある一点を指差し顔を青くしているのでそちらを向くと巨人(ヘカトンケイル)がいた。見上げてもその顔を見ることができないほど見えない。


「あれ…倒せるのか?」


ダージリンの召喚したサラマンダーは、巨人を焼いたらしいが焼けた箇所が思いのほか小さく大きなダメージになっていない。他のこまごまとしたモンスターは、焼き切ったようで血と肉の焼ける匂いが周囲に漂っていた。冒険者として戦わなくてはいけない場面のはずだが地面に足が張り付いたようにうごけなかった。


「倒し甲斐のあるデカブツじゃねえか。新作の実験にちょうどいい」


機関銃らしきものをセットし凶悪な笑みを浮かべる奴。


「ジル」


「今回は、救護班じゃなくて攻撃にまわるわ」


真っ白な白衣に血のように赤い髪を垂らした人。


「ローザさん」


「スライムで窒息死でもさせようかしら」


「まろは毒と麻痺の薬品をつかおうかの」


ドロリとした水色のものを取り出す人と人のいい笑みを浮かべ大量のフラスコを持つ奴。


「クリスさん、トリカブト」


それぞれが自分の一番の武器を携えてぶつかっていく。


「お先」


ハルバートを軽々と持ち駆けていくのはチアキだ。足の腱を切るつもりらしくつけねを何度も切りつける。


「君の武器はなんだい?」


「私の武器…」


弓?剣?それとも魔法?いや、一番の武器は…


「創造力と知識と経験」


廚二的な発言なのはわかっているが実際そうなのだ。今の私がなりたっているのは知識ゆえでありそこから経験と創造力の賜物。先人はいったではないか人間は考える葦だと。


「大きい、人型、魔法、モンスター、薬、銃、回復、生物、五大要素、詠唱、化学、物理…」


ワードをあげてそれぞれ関連づけて考え潰していく。そこでふと土というものは、大半が金属でできているということを思い出した。もしも地面が液状になったら?五大要素の金の特性は、流体できないわけがない。そして物体に対して影響させるぶんには、魔力がすくなくてもできることがわかっている。


「みなさん聞いてください!」


私と同じように突っ込む勇気がない人たちを集めてやってやろうじゃないか。純粋な戦闘力は、少ないが集まれば大きな力になることはあっちの世界で経験したことの一つだ。


「なんだ」

「どうした」

「大雪のときの奴か」


あつまって来た人たちに大声で作戦を話す。それくらいなら出来る…いや、やらせてくれと人が集まって来たのは必然だったのかもしれない。




「っ、皮膚が固すぎる!」


ハルバードを何度も振り巨人の足を狙うが皮膚と肉が切れただけで筋まで届いていない。人体と同じ構造をしているだろうと考えて足の腱を切るつもりだったが時間がかかりすぎて城下に激突してしまう。


「過回復が効きにくいわねー」


などと呟く赤毛の女性がいるがその女性が手を触れている場所一帯が気持ち悪いほどに肉が隆起し血を出したりしている。よく小説で過回復の描写があるが実際に見ると非常に気味が悪くグロイ。そしてそんな見た目ヤバそうな感じでも巨人にとっては、蚊に刺された程度の者らしく片足で傷口を擦るだけであった。


城下の方向を向くと何やら円形になってぞろぞろと人が集まっている。そしてこちらをみるなりキタゾーと言っている声が聞こえた。


「チアキ逃げろ!」


たくさんの声の中で切羽詰ったレグの声が聞こえた。逃げろというなら逃げた方がいいと思い逃げる。そんな俺の座右の銘は、“風林火山”だ。


「「「流体化!」」」


声が聞こえると同時に巨人が円の中心に足を踏み入れズブズブ沈み込んだのだった。




巨人に攻撃していた人たちをいったん撤退させたあと落とし穴?底なし沼?に落とした。だが巨人は、予想以上に大きく足だけしか入らなかった。本当ならば腰まで入る予定だったのに足しか入らなかったからどうしよう。足止めが出来てるからいいもののこれ以上は、魔法による疲労でとてもじゃないが無理だ。


「ずいぶん頑張ったようだね」


ギルマスの淡々とした声が聞こえた。そこにいるのは紛れもなくギルマスで珍しく微笑まで浮かべるご機嫌さだ。


「頑張ったならご褒美が必要だね」


そういうと落とし穴に奮闘する巨人に向かって手を伸ばす。その手には、攻撃に用いりやすい火も水もなくまるで巨人に向かって挨拶をしているようだった。だがそんなことはなかったいや、わかっていたら全力で逃げた。


「ボックス」


ギルマスが一言そういうと、巨人の腰あたりにそれはそれは巨大な“ボックス”が現れた。その大きさに隣にいた厳ついおっさんが顎を外したようだ。隣の人物が顎を叩いて戻している。平然としているのは、見知ったギルドメンバーくらいのものだ。いや物見遊山といった感じで楽しんでいる奴までいる。


「?そういえばこれって」


私が前に使った方法の魔法だよね?切れ味抜群で残った胴体から血が噴き出た…。


そこまで思い出して体中の血がサーっと下に流れる。ここにいたら確実にヤバイ。そして誰もその事実に気がついてなどいないだろう。


「んっ、坊主どうした」


「逃げろ」


「はっ?」


注意はした。たぶん巨人は確実に死んでいるはずなので私は逃げる。二次被害は、まっぴらだ。そういうことで巨人に背を向け全力で走った。なるべく遠くでかつ高いところにだ。


「何言って、あっ」


振り返って巨人をみるとボックスが解除されている。と、次の瞬間には血が噴水のように溢れ雨のように降ってきた。血の雨なんてうんざりだ。だがそんなの序の口なことが起きる。


「うわぁ!?」


巨人の巨体が倒れて地震のような揺れが響く。それと同時に津波のように血が押し寄せてきた。


「アバババッ」


逃げたにも関わらず血の海にのまれてしまった。無事に倒せたが装備全てに血を被る結果となった。非常に鉄くさい。


「というかその場に残っていたら、マスターが結界貼って血から守っていたなんて…」


「自業自得でおじゃる。まったく、どうなるかわかっていたのに一人で逃げるからでおじゃるよ」


「注意はした。俺は最善を尽くした」


なんか発言が悪人みたいだな。でも基本的に自分の身に危険を感じたら逃げるのが冒険者じゃないのか。そもそも城下がヤバそうだったら逃げないけど今回そうじゃなかったし。


「それよりもよ。マスターのカオスカーニバルの予想が外れたのが問題だわ。たしか次は1年後だったはず。だからそれまでに準備と研究をしようってことになっていたのに」


「今日起きたのは自然なカオスカーニバルじゃない。だから僕の予想と違った」


いつのまにか話題の人物が私の後ろに立っていた。珍しく眉間に皺を寄せ不機嫌そうな表情だ。


「あれは、誰かが人為的に起こしたと僕は思っている」


「根拠はなんでおじゃるか」


「今回と通常のカオスカーニバルの違いは3つある。

簡単に言えば大気の魔力、時期、モンスターの数です。大気の魔力は大きく乱れていましたし、僕が算出した時期とも違う。ましてや今回のは数は、前のより少ないが耐魔法と攻撃に強いモンスターが出てきている。これ以上は、データ不足で話せない。明日行われるギルドマスターの会議にこの問題を上げる予定だ。詳細は、明後日を覚悟してほしい」


今回のカオスカーニバルの被害と、次の予想時期及び被害とその対策を話し合う必要があるからか。いままで適当だった各ギルドの足並みを揃えなきゃならないってことだろう。作戦という作戦なんてなかったからな。


「私にできることはありますか」


「資料の整理をしてもらおうかな。それと本の場所を覚えているだろう?僕が言ったものを持ってきてほしい」


「はい」


僕が出来ることを最大限やってみようと思う。それにギルマスと行動を共にするのを不審がる状況じゃないほうがあっちの世界に帰るための方法を聞きやすい。こっちとあっちのことを調べるのは、必要なことだと大変だろうがやってみるしかなかった。

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