番外編 暗躍Ⅱ
ここはとある元伯爵邸の一室。そこには、四人の人物と人形だけが存在した。常ならば特に問題なく終わるこの場所での会話は、非常に剣呑な雰囲気を漂わせている。
「あのバグの塊のような男と観察対象が手を組んだとだと!?」
サッサーは、眉を寄せて手を握る。しかも握り過ぎて青筋が浮かんでいるというのが、彼の心情を如実に表しているように見受けられた。
「さすがの私も驚いたわ。いままで私達の行動を監視するような感じがありましたし」
「そんでもまぁ、なんやてあんな行動とったかちゅう理由がわこうただけでもめっけもんやで。王家に妙な接触しなけりゃええんやろ?」
ここで口を開いていなかった人形が口を開いた。
「そういう問題ではない。未熟だろうが計画を早めなければいけないかもしれん。こうなるのだったら計画が初期に戻ろうがあの男の存在ごと消すべきでした」
あの男は、本来ならばギルドマスターという役割につく予定ではなかった。当初の予定では、オブザーバー3がその地位につく筈だった。しかし外部の邪魔が入りどこにバグがあるのかわからぬまま開始するとあの男がギルドを掌握していた。
「オブザーバー3くれぐれも我々の目的を知られぬように。場所と人員の変更は、利くが目的を知られたら確実に観察対象にバラされる」
「そうですかね。観察対象らは、ここが異世界だと思っていると私は思っているのですがそこはいかがでしょう」
「いかがもなにもそう思ってもらわなこっちに都合が悪いやろ。ここが"どこ"で周りが"何か"知らんほうが観察対象の精神が壊れなくていいと思うで。パーンっと壊れちゃまだ困んで」
フードの人物がまるで無邪気に子どもが遊ぶかのように手を叩く。どうもオブザーバー4は、派遣先の空気に染まり頭がスカスカになったらしい。しかし実際派遣先での様子を聞くと無口キャラを貫いている。
「あの男と観察対象の過剰な接触は、想定外だったがデータの収集はうまくいった。戦闘への抵抗も思いの外少なかったようです。あの男が大きな邪魔をする前に次のステップに移るとする」
「次のステップ…とは、数を集めて攻めさせるのですね」
「いままでならば上級貴族か王族を唆せば簡単に動かせたが、あの男も気をつけなければいけないとは面倒ですね」
サッサーは、ため息を吐いたが非常に楽しそうだった。その証拠に目が笑っている。
「決行の時期に関しては、後で私に連絡しなさい。その方が怪しくないですから」
一番怪しい人形がそんなことをいうのは、非常におかしいが誰も文句など言わない。間違いなく人形の言っていることが正しいからだ。
「連絡が来るまで、日々観察を続けるように。以上、解散」




