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グランレコード  作者: 33
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18. ウバ

「そろそろ君の実力を見たいからクエストをだしたいんだがいいかな?」


その言葉は、本棚からお目当ての本を見つけ出し取り出した瞬間の出来事だ。さらに捕捉説明を加えれば魔法の練習として空間魔法を使用し、見えない手で本を取り出し空中に本がある状況だった。


だから集中力を切らした私がギルマスに本を直撃させたのは不可抗力だと思う。あと狙って角が頭に当たるように落としたわけじゃないんです。


「すみませんでした!」


だから土下座で許してください!


「……グロリア村に手紙を届けるクエストをしてもらうつもりだったけど気が変わりました。ウバに僕が指定したものを持っていってください」


「ウバ……ですか?」


よそのギルドに荷物を運ぶのが外へ手紙を届けるより難しいのだろうか。だが会話を聞いていた人は皆信じられないものを見たという目でギルマスを見る。


「ギルドマスタァ殿、レグにウバはまだ早いでおじゃる。もともと考えていたクエストにした方がよいでおじゃるよ」


「暗黒街のウバに新人を放り込むなんざわざわざ殺しに行かせるようなもんだろ」


「暗黒街?」


なにそのヤバそうな名前の街。つーかそんなところあったのね。


「城下町の一部だけどよ。スンゲェ治安がわりぃんだよな。武器持たないと足を踏み入れた瞬間に身ぐるみ剥がされてバラされるっていうぞ」


「代々王家も暗黒街を解体して普通の街にすると掲げておるが実現できてないのぉ。薄暗いことをしている連中が邪魔をしておるとも聞くでおじゃる」


「よくそんなとこにギルド構えてるなウバ…」


「需要はあるからね。暗黒街に単身で行こうとする商人なんていない。だからウバがパイプになってあそこに生活に必要なものを全部卸してるから実入りはいい」


ウバがパイプねぇ?誰がそこらへん取り仕切ってんだろう。前に会ったディンブラは、戦闘なら腕がたちそうだが交渉とか商売できそうな感じじゃないよなぁ。キャンディさんは論外だし。ギルドの頭脳になってる人がいると考えていいのかな。


「くれぐれもギルド員を連れて行かないでください。連れていったら罰として1ヶ月読書禁止にします」


「読書禁止!?マスター、私に死ねと!」


読書禁止ってトイレ掃除1ヶ月や罰金よりキツイ罰なんですけども。絶対に私の(コタ)えるとこを知ってて言ってるだろう。私の癒しがぁぁぁ!!


「僕の言ったことを守ればいいんです。それ以上はありません」


「それで運ぶ物ってなんですか」


私が尋ねると渡されたのは普通のA4封筒一枚。そんなに厚みがなく、重くないので入っているのは紙だと思う。


「これをウバの誰に渡せばいいですか。内容物がわかりませんが適当な人物に渡せませんよね」


「あちらのギルドマスターかキャンディに渡せばいい。どちらも顔を知っているでしょう。それと君は、この街にまだ不慣れだから案内盤も渡したほうがいいかな」


ギルマスからカルタ位の大きさの板を渡される。片方は、何も描かれていないが反対側には魔方陣のようなものがびっしり書かれていた。


「行きたい場所を言えばそこに行き方が表示される」


「わかりました」


「あとそれ金貨2枚分(200万ベット)するから壊したら弁償ね」


「えぇっ!?ならいらないです。地図見て行きます!!」


そんな高価なもんを何気なく渡すなよ!知らずに持ってて壊した日には……考えるのよそう。


「暗黒街に地図なんてねぇぞ。危険区域の地図作るなんて酔狂な奴は、そうそういねぇからな」


「うー、とりあえず行ってきます」


「あら、アリスちゃんを連れて行かないの?」


箱入り娘ならぬ袋入り茸を渡される。袋は、アリスを連れていっても手が空くようにとローザさんがくれたショルダーバッグだ。


「私ひとりで行かないと罰になるので…」


「"ギルド員を"連れて行かなきゃいいのよ」


その言葉で何がいいたいのかがわかった。アリスは、私と一緒にここに住んでいるがキームンのギルド員ではないので対象外ということだろう。それにアリスがいれば私に何かあったとき対処してくれるだろうし。


「わかりましたありがとうございます!」


「ふふっ、これくらいいいわよ。気をつけてね」






などという会話がございました。


「おう、兄ちゃん。バラされたくなけりゃここで全部脱げ」


「そうだぜぇ?俺たちゃ最近話題のデコン・ボコル兄弟。聞いたことがねぇわけねぇよな」


いろいろ、ツッコミどころがある言葉すぎてどうしよう!普通有り金置けだよね。全部脱げってさ変態になっちゃうじゃん!それに凸凹(デコボコ)兄弟ですか!!あと聞いたことないです。


「兄貴こいつビビって動けなくなってるみたいっすよ。ぐぇっ」


私は、ペラペラ喋るボコルの腹をついつい蹴ってしまった。だってウザイし邪魔だし面白くない。


「なんでお約束の言葉しか出ないんですか。それと相手を征服するまで油断しちゃだめでしょう。零的水(レイダァスイ)


「足が凍った!?魔法か!!」


男の足元が地面と一緒に氷漬けになる。水を零度にすると氷になるというのは中学生で習う項目の一つだ。さらに補足説明を加えれば目に見えずとも水は、水蒸気として空気中に存在している。それを使えば消費魔力が抑えられるのではと考えた。実際に試したところ"空中に"氷を作るより、"気体中の水分"を凍らせた方が消費魔力が少なかった。これにより中級魔法の威力を出しながらも消費魔力は下級という魔法ができた。そしてこれは他にも応用できたりする。


「この野郎、魔法を使えるからって調子にのりやがって!」


デコンが私に向かって拳を振り上げる。


重力減少(グラヴィティフォール)!」


重力も常に空間に存在する力の一つだ。重力がなければ物体は空中に漂うし、私たちの重さという概念が使えなくなる。重さと質量が同じと言ったら化学と物理の先生に怒られたのだから間違いない。


さて問題、重力が突然周りから無くなったらどうなるでしょうか?


「なっ!?なんでこんなに跳ぶんだよ!!」


体にかかっていた重りが無くなったのと同じ状態になるので踏み込んだ力で浮かび上がるでした。そのままどこかに行ってらっしゃーい。


「さてどうしようか?」


派手にやり過ぎて人が集まってきちゃったし。頬をポリポリと掻き迷っていると人混みをかき分けて灰色の髪の男が前に出てきた。


「キームンのメンバーか」


「はい」


私がそういうと男は、周りに集まっている人達に向かい合う。


「今の聞いたな?キームンとウバの灰猫に楯突く気があるやつ以外は散れ」


男がそういうとあっという間に人がいなくなった。こいつ誰なんだろ。ウバの灰猫ってなんだ?


「これからギルドに連れてく。来い」


「えっ、ちょっと!」






男について行くと酒場のような建物についた。酒場といってもバーのような雰囲気ではなく、大衆食堂と酒場を合わせた雰囲気で洗練としていないところがどこか落ち着いた。中に入るとアルコールとタバコそして喧騒に包まれていてなぜ男がここに来たのかわからない。さらにいえばギルマスに借りた案内盤がなんの反応も示さなくなった。壊れたのだろうか?ならば弁償だ。ブルブル。


「あー、本当にレグさんだぁ~。こんにちはー」


聞いた覚えがある声がした途端に私にふりかかる威圧感が急激に上昇する。あぁ、針のむしろってこんな感じなんだと私の脳は現実逃避を開始した。


「どうしたんですかぁー?顔が青いですよぉ」


「なんでもないです」


こんな恐怖なんて教授と研究室仲間+OBの前で初めて研究発表をしたときよりましだ。問題点をズタボロ言われ、必ず一回発言しなければならないという約束なのに最後の一人がなかなか発言しなかったため終わらなかった。視線で早く発言しろと送っても無言だった人物に殺意を覚えた。


キャンディにグイグイと腕を掴まれ奥へ進むと椅子にふんぞり返るディンブラがいる。ディンブラは、私を見た途端に目を一瞬輝かせた。


「オォー、オォー、キームンとこの尻の青い坊主じゃねぇか。坊主は、坊主らしくおつかいか。んっ?」


ギルマスのディンブラが喧嘩を売っているようにしか見えない口調と態度を示してきた。喧嘩を買いたくなるが耐える。勝てない喧嘩はしないし今は、大事な依頼の最中だ。


「うちのギルドマスターがあなたにこれを」


持っていた封筒をディンブラに渡すが面倒くさそうな顔を浮かべ封も開けずに私をここまで連れてきた灰猫に渡す。


「あのマスターには、あなたかキャンディさんに渡してほしいと言われたのですが…」


「あー、お前さ。俺に事務処理出来ると思う?」


思わない。


「だろう?だから俺は統括と指揮をやってコイツが頭やってんだよ」


「わかった。案内盤だせ」


「これ?」


ポケットに入れていた案内盤を取りだし灰猫に渡す。すると灰猫は、案内盤を2回指で叩く。その途端にマスターの声が案内盤からでてきた。


「案外連絡が遅かったね」


「俺がすぐにテメーに連絡を寄越すと思ってんのか?」


「それもそうだ。そこにレグはいるよね。案内盤を置いてギルドに帰ってきていいよ。依頼は完了だからね」


「えっ、これ高いんですよね!置いていっていいんですか」


金貨2枚分のものを置いていけと!?


「僕は、持って帰れとは言ってないはずだけど。あとその案内盤は、正式には今度各ギルドに置くことになった七道具(セブンインプレメント)という魔道具だから」


七道具って青い体をしたロボットを思いだすな。そもそも七道具ってことは、地図?と通信以外に5つの使用方法があるってことだよね。ちょいと気になる。


「へー、これちっちゃいのに凄いんですねー」


「有事の時に簡単に持ち出せるという大きさということでこの大きさになった。そろそろアレが来るという統計がでているから陛下に製作を急がされたよ」


アレという言葉が出た途端に私を除く人物が体を強ばらせた。


「それは本当なのか」


「僕が読み違えると思うの?早くて2週間、遅くて1か月でくるよ」


「あの何が来るんですか?」


怪物祭(カオスカーニバル)ですー。モンスターの軍勢が一週間ここに来るんですよぅ。通常のモンスターと違って完全に動けない状態にしないと街まで侵入して来ますぅー」


なにそれ怖!


「レグにも手伝って貰うから」


嘘ーーーーーー!。


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