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グランレコード  作者: 33
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番外編 とある店主の悩み

この城下町にはなるべく関わらない方がよいとされるものが3つある。


一つは、北の区画であそこは別称暗黒街とよばれている。普通の人間が行けば間違いなく骨や肉すら残さずバラサレて闇ルートで売られちまう。運が良くて娼館送りだ。たまに喧嘩や殺しが好きな奴が力試しに行って帰ってきたとか来ないとか。歴代の王族がなんとかしようと改革をしたらしいが失敗に終わっている。失敗の理由?知らねぇな。


そんで二つ目は、ヨルゲン伯爵邸跡地。このヨルゲン伯爵邸跡地には、大量のレイスや幽霊などが昼間に関わらず湧くのだ。この大量のレイスや幽霊は、その昔横暴な主人であったヨルゲン伯爵が殺したものだと言われている。だから好きこのんでそんな場所に関わろうとしない。


最後に三つ目は、三大冒険者ギルドの一つキームンだ。ウバの連中もヤバいのがいるがキームンのは、その比じゃねぇ。キームンは、全員イカれている。見た目が普通に見える奴にもおかしな奴がいるから非常に厄介だ。ニコニコしていると思ったら何が逆鱗だったのか突然武器使ってきたり。たまに…そうたまに賭博に行くと異様に賭け事が強くて金を持っていくやつもいる。女のギルド員は、美人が多くてブロマイドが出回るくらいだが公開されてる趣味がはっきりいって無理だ。なんでそんなのが好きなんだというものが多い。あとダージリンの次に貴族が多いのも近寄らない理由だ。


「おじさん、一個ください」


この人懐っこい笑顔を浮かべて俺の商品を買いにくる黒髪の青年が、いまだにキームンのギルド員ていうのが信じられねぇ。もしかしたらこの青年は、いわゆる例外なのかもしれない。


「おう、出来立てだ。うめぇぞ」


「やった!ありがと」


ニコニコと商品を受け取ったが青年は、後ろからどつかれた。その衝撃で商品から肉あげが落ちてしまう。


「いてぇな。おいおい、なぁにぶつかってくれたんだよぉ。兄ちゃん?腕の骨折れたじゃねぇか」


「お前のせいで兄貴の腕が使えなくなったらどうしてくれんだぁ?治療費くらい出せるよなぁ?」


運悪く青年は、柄の悪い連中に絡まれてしまったようだ。店先で暴れられたらどうしようと商品を片付けようとすると青年の顔が見えた。その顔に思わず悲鳴があがる。いつもの笑顔でも恐がった表情でも眉をあげた怒りの表情でもなかった。青年は、顔が笑っているのに目が笑っていない。


「腕が折れた?治療費だ?本当に腕が折れたんなら私が治してあげますよ」


柄の悪い男たちは、ニヤニヤしはじめた。治癒を行う人物は例外なく弱いのだ。金を奪い取るには、楽な相手だと思ったのだろう。だが私は、青年が弓使いだと聞いていた治癒の魔法を使えるのだろうか。


「そりゃあいいな。ちょっとそこまで来て治してくれよ」


「ここで大丈夫ですよ」


青年がそう言うと空間からフラスコを出してきた。そのフラスコは、どす黒く真っ当なものには見えない。それで何をするのかと思ったら男の口を鷲掴み無理やり飲ませた。


「いてぇ!頭が割れる!!おかぁちゃん!」


飲まされた男の顔色が一気に悪くなる。一体何を飲ませたらこうなるんだ!?


「おっかしいなぁ。トリカブトがエリクサー(仮)って渡してきたんだけど?万病に効くとか」


エリクサーっていったら伝説の薬じゃねぇか!でもあぁ、なるなら飲みたくねぇな。


「兄貴によくも…!」


子分らしき男が青年に掴みかかり殴ろうと振り上げた。思わず俺は、目を閉じた。


だが聞こえてくると思った悲鳴がないので開けると子分の腕を掴んで止める兄貴分の姿があった。どういうことだと俺以外の連中も首を捻る。


「暴力で全てを解決できません。私には言葉があるのです。話し合いましょう」


こいつは誰だ?そう思ったのは、俺だけではあるまい。ガラが悪くいちゃもんをつけていた人物の言葉とは思えない。


「兄貴!?」


「今までの俺は、愚かだった。環境の悪さを全部周りのせいにしていた。俺自身が変えようとしなければ周りが変わるはずがなかった」


そういっている男は、晴れ晴れとしていている。


「俺は、あの街…いや国を変えようと思う。お前ならついてきてくれるよな?」


「兄貴が!兄貴がおかしくなったぁぁぁー!」


「待てトイ!」


叫びどこかにいった子分を追いかけて男は、行ってしまった。いったい何が起きたんだ…?などと思い青年を見ると呆然とした顔でフラスコを見ている。


「まさかこれ飲んで性根が治った(・・・)?そんなことあってたまるか」


などと言っていたがここは、聞かなかったことにしよう。キームンには深く関わらない。でもこの青年次もくるよなぁと溜め息を吐いた。






そしてしばらくすると恐ろしく強い神父の話題がのぼってきた。あの北の街で説法をしてまわっているそうな。そしてその神父には、付き従うようにいつもいる男がいるという話もついてきた。

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