10. マニアの本気
武器も仕事もないので私は、そこらへんの本を手に取り読んでいた。それはこの国もしくは世界の歴史だったり、薬草と毒草の見分け方や、美味しい店が載っているランキング本などだ。本を読んでいると様々な人が寄ってくる。
この本は読んだことがあるとか、次はこの本を読んでみろとか、何かが書かれた本なのかとか、読み聞かせしてくれと言われた時にはびっくりした。
読み聞かせなど一番下の妹が小さい時にはしたとき以来だ。あの頃の妹は、無邪気で非常に可愛かった現在も可愛いが私のせいか若干腐っていたり……。
「おい、レグって新人いないか!」
レグって名前の新人は、自分しかいないだろうと声の方向を見るとXがいた。たぶん頼んでいた弓と忍者刀が出来たのだろう。ちょっとドキドキしながらXの所へ歩き出す。
「Xさん、こんにちは」
「おう、頼まれてたの出来たぞ。ほれっ」
三種類の長さの違う布の塊を渡された。どれもずっしりと重い。
「ここだと練習出来んからギルドの練習場に行け」
「えっ、練習場?そんなのあるんですか」
「どうやって武器を使うかわからんだろ。だいたい中級クラスのギルドには小さくても一つあるはずだぞ?」
質問:中級ギルドには一つ?じゃあキームンには?
正解:大小合わせて10の練習場がある。しかもギルドの地下にだ。
「でか……」
「弓の練習をするのに狭くちゃできねぇだろ」
Xの言葉にごもっともですと頷く。それにしても武器を作るだけでなく使い方まで教えてくれるとは至れり尽くせりだ。
なんて思っていたときがありました!
「ごらぁ!そんなへっぴり腰で弓が引けると思ってんのか!」
「おめぇは嬢ちゃんか!しっかり引きやがれ途中で矢が落ちんぞ!」
「剣と違って弓は、本数が決まってんだきちんと当てろ!」
「「「はい!」」」
正直泣きたい位の心境で次々と矢を放つ。最初は鉄の重さに慣らすと鉄の矢を使っていたが、時間がもったいないと量産が簡単な木の弓になっていた。
「頑張れー新人」
「俺達は、お前の勇姿を見てるからな」
「私の様を肴にして酒を飲んでるだけでしょうが!!」
一喝すると蜘蛛の子を散らすように逃げる。だが逃げた先にアリスがいて躓いて転んでいた。ざまぁみろ、アリスにはあとでご褒美をあげねば。
「お前運動神経良さそうなのに意外にだめだな」
「弓は初めてなんだよ!」
「周りを気にしてる余裕があるならわしが邪魔しても当たるのじゃろうなレグ!」
「待って!冗談……ぎゃあ!」
こってりと搾られた。全身筋肉痛なんて高校以来なんだけど。それとも今体が痛いことを喜ぶべきなのか?
「明日は、剣の使い方だ。その前に弓の使い方もまた見るから自分でもしっかり練習するんじゃぞ」
「……っ!はい」
心臓がバクバクいってとてもじゃないがまともな返事が出来ない。水に上げられた魚のような感じで何度も呼吸を整えるように深呼吸する。取り込んだ酸素が全身に行き渡る感覚が非常によくわかる。
「誰かこいつを風呂に入れてやれ」
Xの言葉にぎょっとして首を必死に振る。そんなことされたらお嫁にいけない!って今の私は、男だった。
「暇そうじゃし小僧お前がつれてけ。知り合いじゃろ」
「嫌だっての」
「ならまろが連れていくでおじゃる」
そういうとトリカブトがお姫様抱っこで私を持ち上げた。結構細身に見えるのだがどうやって持ち上げてんの……?
「ちょうど試したいものがあるのでちょうどいいでごじゃる」
「私は実験台かい!」
「大丈夫死にはしないでおじゃる」
あまりの恐ろしさに周りにSOSを送るがみんな合掌していた。コンニャロウ!
「さぁ行くでおじゃる」
ギャーー!
このあと本当にいろいろお世話になってしまった。最終的に最近開発した薬を飲まされキャパオーバーし気絶した。だって想像を絶する不味さだったんだもん。でも不思議と次の日体調が良くてXにさらに搾られた。




