その89
美香に、思いを告げてから10日がたった。
でも僕と美香の時間が増えたかといえば・・そうでもなく・・・
美香は相変わらず、柳とはまめに連絡を取っているが僕の携帯にはかけてこない・・。
・・・世の、中学生は、彼が出来てもこんなものなのだろうか?・・・・
・・・・・付き合い始めの、彼女の行動にしてはどうかと思うぞ?・・・・
美香の淡白な様子に、僕は、がっかりすると共に、この状態で、今週末にプロポーズしても受け入れてもらえるんだろうか?・・と不安が胸をよぎる・・・。
そんなことを考えながら、廊下を歩いていたら、すれ違った柳に呆れたように言われた。
「何でそんなに、黒い霧背負ってるの?美香ちゃんに思いが通じてラブラブじゃないの?」
柳の問いに僕は今の心のうちを打ち明けてみた。
「お前のとこに美香、どのくらいのペースでメールくれてる?」
きょとんとした顔で、彼女は返した。
「う~~ん、一日2~3通?中学生って可愛いわね。日常のなんでもないことも送ってくるのね。ものすごく癒されるわ~~。」
僕は、その返事にますます暗くなる。そんな僕に気づかず柳が続けた。
「今日のお昼なんか友達と校庭で猫追いかけたって、シャメ入りよ?・・みた?」
僕はため息をつきつつ、彼女に言った。
「・・・僕にメールくれたのは昨日・・お休みなさいだけ・・・・。それも、一日一通のみ・・・。」
柳が、怪訝な顔で言った。
「・・・・?ねこの写真欲しかったの・・?」
僕は柳に視線だけ向けて答えた。
「・・・まさか・・。」
柳は呆れた顔で言った。
「・・・付き合い初めなんだから、もっとかまって欲しい・・・?」
思わず下を向いた僕に柳が呆れた声で言った。
「・・ばっかじゃないの? あなたどこの乙女よ!?」
「しかも、あなた、いくつなの?!!!美香ちゃんと何年の付き合い?!!」
・・・はいわかってますよ?頭ではね!!でも感情がついていかないんです!!・・・・
「美香ちゃんはあなたと違って忙しいのよきっと。」
・・・それは僕をかまってる余裕がないということか?・・・・
・・・・・僕って、美香にとってその程度なんだ・・・・・・・
僕が憮然とした表情をすると、
呆れた顔で僕に言う。
「きっと暇なのがいけないのよね・・・」
そういいつつ、柳はPHSを操作してどこかへ電話をかけた。
・・・いやな予感・・・・・・
「もしもし、あなたの弟子が、暇にしてるわよ?仕事欲しいって。」
PHSの向こうで、槇原さんの嬉しそうな声が聞こえた。そして、PHSを手渡された。
僕は、その後の美香との逢瀬まで、ネガティブな事を考える暇どころか寝るまもなく、とても有意義な時を過ごせた。
有り難う柳、君の友情に感謝する・・・。
______
殺人的な、槇原さんの用事をこなし。あっという間に約束の日が来た。
その日はとても天気が良かった。
ひさしぶりに見る美香は相変わらず可愛くて・・・。
思わず抱きしめたら、父親に怒られた。
「僕の美香にいたずらするな!!」
「これは僕の恋人です。触るぐらいいいでしょう!!」
そんな僕と、父のやり取りを無視して母と叔父たちは、パークに入っていく。
僕は父を無視して、美香と手をつなぐ。
「行こうか?」
にっこりと笑って僕を見る美香に、僕は昨日までの不安がなくなり・・・
「校庭で猫と遊んだの?」
古い話題を振った僕に、美香は
「え?優ちゃん、陽子ちゃんに聞いたの?めっちゃ可愛かったし、優ちゃんにシャメ送ろうと思ったんだけどうまく取れなくて止めたの。」
・・・・なんだ、送ろうとしてくれたんだ。・・・
「それ以外にもね、沢山送りたかったんだけど、優ちゃん忙しいかなと思って遅れてないのが沢山ある・・・。」
「送ってくれて良いのに。」
僕は美香の顔を覗き込んでいった。
「え~~いいの?そんなこと言ったら、美香休み時間のたびに送っちゃうよ?」
「いいよ?」
美香が僕の台詞に、にっこり笑った。
「嬉しい!!美香優ちゃんといっぱい話したいことあるのに、優ちゃんがいつ余裕があるのかわからないから困ってたの。」
・・・忘れられてたわけでなかったんだ・・・
美香を引き寄せて、美香の耳元でささやいた。
「僕も美香と沢山話したいけれど、美香にうるさがられると嫌だったから、かけられなかった・・。もっとかけて良い?」
そう聞くと、真っ赤な顔して、不思議そうに僕に聞いた。
「優ちゃんが?遠慮・・?」
・・・なんだ?その疑問系は?
「何で疑問系なの?」
僕が不機嫌に聞くと、美香が言う。
「・・・だって、優ちゃんだよ? 優ちゃんだよね?」
・・・美香、おまえは色々僕のことを誤解してると思う・・・ぞ・・・・
少しむかついた僕は美香に意地悪を言ってみた。
「・・美香、エッチな事したら駄目って言ったよね?」
にっこり笑った僕の顔を見て、美香が怪訝な顔をした・・。
「それはどこまでの事かな?一応すり合わせしておこうか?」
美香の体が、離れてゆく・・。それをもう一度僕は引き寄せた。
「僕が、遠慮って言葉を理解してないかどうか、すぐにわかると思うけど?」
美香が僕から逃げようとしながら言った。
「優ちゃんゴメンナサイ、優ちゃんはいろんなことを我慢してくれてる大人の男の人です。」
「美香が間違ってました、それに今は昼間なのでお願いだから止めてください。」
抱きしめる僕から逃げようともがきながら泣きそうになってる美香をにっこり微笑みながら見た。
僕の目の向こうで何か叫んでいる父が、叔父に引きずられて行くのが見えた。
・・・よし、邪魔者はいなくなった。・・・・
「じゃあ美香?今は!!やめておくね?」
ほっとした表情の美香の耳元でそっとささやく。
「・・夜は長いし・・二人きり・・だし・・ね?」
美香が、泣きそうな顔で僕を眺めた。
・・・・僕がどこまで我慢できるか、僕にもわからない・・よ・・・?・・・
僕はそんなこと思いながら、美香に微笑んでもう一度美香を抱きしめた。
・・・どの辺迄が、遠慮で我慢かはワタシニハワカリマセン・・。
清水 澄 拝




