その88
その後、なぜかホールのケーキと、シャンパンと、おつまみを持って現れた僕らの親と、未成年の美香を入れて、宴会が始まった。
父は相変わらず、美香に僕が何かしたらすぐ自分に言うようにと言い含め。
・・・でも一番のんでいたのは父だと思う・・・・
・・・そんな父を見て母は、妊娠だけはさせないでねと、僕に四角い箱を握らせて・・。
・・・・・・叔父は何も言わず、黙って僕のグラスに酒を注ぎ・・。
・・・・・叔母は、僕の耳元で、・・ごめんね美香はお子様で・・・
と美香に聞こえないようにささやく・・
僕達をずっと見守ってくれた人たちを改めて見てみたら、美香の言っていた事が解かるような気がした。
・・・・・・優ちゃんもう少し、周りの人の気持ち考えたほうが良いと思う・・・。
何時の間にか僕にもたれて寝てしまった美香の横顔を見ながら、僕らは、まもられてるんだなと思う。
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週明けに救急に顔を出した僕に、槇原さんはまた無茶を言った。
「・・すまん!!中野!!」
・・・なんだろう?・・・・
「実は、今週末に俺、名古屋の出張が入ってな?」
・・・だからどうしたと言うんだろう?・・・・
「俺の代わりに当直してくれないか?」
!!!はあ!!!??
この人の頭のなかは、どうなってるのかと思う。
大体前期研修医2年目の僕を教授補佐につけることも論外なら、研修医として指導医がいないと何も出来ない僕に、当直を代われというのも論外だ!!
大体、忙しくなる前に美香をどうにかしろといったくせに、何で思いがやっと通じた最初の休みに当直なんだ!!
僕が色々と言いたいこと満載の顔で、彼を見てると彼が続けた。
「・・・すまん・・角野にも頼んであるから、補佐をしてもらってくれ・・・。・・な?」
・・・な?・・・じゃない!!!補佐は僕でしょう!!!!彼がメインだ!!!!
「おこってるよ・・・な?」
僕は憮然と伝えた。
「柳にお礼を言っといてください。」
怪訝な顔をしている槇原さんに続けた。
「何とかなったので、有り難う・・と」
それを聞いた槇原さんの顔が明るくなった。
「・・・・そして、その貸りは、両思いになった初めての週末を、あんたの旦那につぶされた事でおつりが来るでしょう・・・と」
僕の言葉に槇原さんが青くなる。
「・・それ、俺が陽子にいうんか・・・?」
僕はそんな彼に表情を無視していった。
「・・・はい。」
僕の憮然とした表情に、槇原さんはおどおどと続けた。
・・・・きっと陽子、怒るよな・・手配が悪いって・・・。
そんな彼に僕は言った。
「槇原さん、そろそろ当直したかったので、僕は嬉しいですよ?」
そうか・・と嬉しそうな顔で言う。そして思い出したように続けた。
「中野?うまく行ったんだったら来週、テーマパーク内のホテル予約してるんだが、変わりに泊まらないか?」
思いがけない申し出にびっくりする。
「実は、むこうの両親と、こっちと誘って行く予定だったんだけれども、家の親がぎっくり腰で、キャンセルしようと思っていたんだが、お前がうまく行ったんだったら、代りにどうだ?」
3部屋押さえてあると言うその申し出に僕は飛びついた。
今週の、予定がつぶれた事の埋め合わせが出来る。
「譲ってください、ありがとうございます。」
僕は即答していた。
美香に早速、今週末は一日しか帰れない事。
来週末の、お泊りの事を電話した。
『・・合える時間が短くなるのは寂しいけれど、みんなで旅行いけるのは嬉しいな。』
・・・とかわいい事を言う。
「週末帰った時に、詳しい予定を立てようか?父さんたちの予定聞いといてもらえる?」
『・・それは優ちゃんが、自分で言った方が良いと思う。だって、プレゼントするんでしょう?』
・・・初めてのボーナスが殆んどなくて、今回もらったボーナスで何かプレゼントしたいといっていた僕の言葉を覚えていてくれた・・・
たったそれだけの事で僕は嬉しくなり、美香の提案に僕は合意した。
「分かった自分で、メールするよ?それで良い?」
電話の向こうで美香がうなずいてる気配がした。
「それで部屋は3部屋、美香は僕と一緒で良いよね?」
電話の向こうで息を飲んでるのが分かった。
『・・優ちゃん、美香との約束覚えてるよね・・・・』
恐る恐るといった風情で繰り出されたであろう、その台詞に僕は思わず笑ってしまった。
「もちろん覚えてるよ?約束は守るよ?」
『じゃあ大丈夫・・?』
・・その、疑問系は・・・さすが長い付き合いだ・・僕の性格をよく心得てらっしゃる。
でも詰めが甘いよね・・・と僕は電話の向こうの人には言えない台詞を心の中で呟いた。
・・・・最後まではしないとは約束はするよ・・・・・
・・・・もうすこし・・はね・・・・・・・・・
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次の、週末帰宅した僕は、メールで告げていた来週末の予定を、叔父と叔母、両親に告げた。
両親はもちろん喜んでくれたが、叔父と叔母はもらう理由がない、行かないという。
僕は、叔父たちに今の気持ちを伝えた。
「この日に僕は美香にプロポーズしたいんです。おじさんたちにも是非許可をいただきたいと思って。」
僕の言葉に親たちはうろたえた。
「・・・いや、まだ早いんじゃないか?・・まだ、14歳だよ?」
親たちの当たり前の意見に僕は言った。
「美香の年で早いのは分かってます。でも僕の年では早くありません。」
「僕が忙しくなって、美香との接点が少なくなる前に、僕のわがままだとは思うのですが、形が欲しいんです。」
僕の真剣な表情に、叔父は考え込んだ。そして僕を見て、言った。
「・・・年は、関係無いだろうな・・・、たまたま美香が、14だったてことか・・・。」
父が、叔父の顔を見て言った。
「・・許してくれるのか?」
いつも反対してる父の意外な言葉に、僕らは思わず父の顔を見た。
父は続ける。
「自分の息子が非常識な申し出をしてしているのは解かる、でもこいつを見てると、確かに美香ちゃんが必要なんだと感じる、僕からもお願いしたい。優希の気持ちを認めて欲しい」
叔父に頭を下げる父がいた・・。
叔父は黙って僕らを見ていた。
暫く叔父に頭を下げた後、父は今度は僕の顔を見ていつもの調子で僕に言う。
「僕の一番は美香ちゃんだ!!」
僕は黙ってうなずく。
「あの子を泣かせたら承知しないからな!!」
相変わらずな父の台詞に、苦笑した。
「僕には、二人の舅がいるので、迂闊な事はしません。」
僕は叔父と父の顔を見ながら言った。
そして父の顔を改めてみる。
・・この人は僕の気持ちをずっと応援してくれてたんだろう・・・
明らかに反対されるだろうリスクを理解して、美香をかばってるふりをして、僕に考える時間をくれたんだろう。
”優ちゃんは、もうちょっと、周りの人の気持ち考えても良いかなって思う。・・”
・・・・・・美香の言葉が心に沁みる・・・。
・・・・そうだね、美香の言うとうり僕は回りの人の気持ちを知る必要があるのかもしれない。・・・
・・・・そしてそんな僕を知っていてくれる君・・
・・・・・・・・君とずっと歩いていきたい・・・・




