その82
鍋焼きうどんの下ごしらえしながら。陽子ちゃんと思い出話に花を咲かせた。
「初めて優ちゃんに作ったのがこれだったの。私が小学校に上がった年」
陽子ちゃんが驚いた顔をした。
「凄い美香ちゃん!!一年生でこんなの作ったんだ!!」
笑いながら、私は否定する。
「・・違うよ?おだしは、お母さんが作ってたし、つみれも出来てるのをいれるだけ。私は野菜を切っただけだよ」
「・・・それにね、実はつみれが生で、優ちゃんおなか壊したの・・・」
笑いながら言った私に、陽子ちゃんは呆れた顔で、”生食べたんだ・・・?”・・と
「そうなの・・・美香は、食べなかったの。」
・・・?不思議そうな顔をした陽子ちゃんに答えた。
「だって優ちゃんの、夜食だったんだもの。」
「次の日、テストは受けられず、追試を受けたのよ?」
呆気に取られる陽子に美香は笑いながら続けた。
「優ちゃんみんなに、馬鹿にされたみたいだけれど、私が泣きながら謝ったら”美香の作ったものは残せないって・・”」
・・・”ホント馬鹿だ・・”・・・思わず呟いた陽子ちゃんの台詞に笑がこみ上げる。
「その後何回かチャレンジしたけれど、つみれが煮えたら、野菜がぐだぐだで・・・」
「5回目で、やっと成功。」
「その時優ちゃんがお店で食べてるみたいだって、ほめてくれて・・・。」
陽子ちゃんが笑いながら言った。
「その頃から、美香ちゃんに対しては、馬鹿が付いてたんだ。」
「・・・うん、いつも優しかった。いつも傍に居てくれた。」
陽子ちゃんが私の顔を覗き込んで言った。
「・・中野君と何があったの?」
・・・・・ソレヲキイテホシカッタンダ・・・・・・
陽子ちゃんの顔を見てたら涙が出てきた。
「・・・・美香、どうしたら良いのかわからない。優ちゃんはどうしたいの?」
陽子ちゃんが抱きしめてくれた。
「・・・美香ちゃんはどうしたいの?」
陽子ちゃんの問いに答えた。
「・・・・・優ちゃんに嫌われたくないから、優ちゃんの言う事は聞きたいけれど、美香出来ることと出来ない事がある。」
陽子ちゃんが、美香を抱く力が強くなった。
中野君の部屋で、何があったのか聞きながら中野くんの夕食の下ごしらえをした。
「・・・・・優ちゃんに嫌われたくないから、優ちゃんの言う事は聞きたいけれど、美香出来ることと出来ない事がある。」
泣きながらそう訴える美香ちゃんに違和感を感じる。
ふと疑問に思い美香ちゃんに聞いてみた。
「・・・・美香ちゃん?美香ちゃんは中野君のことどう思ってるの?」
美香ちゃんが、おずおずと答える。
「・・・優ちゃんが美香のことなんとも思ってなくても、好き、嫌われたくない・・・」
「・・・・それはどういうことかな?」
思わず最初のフレーズが気になり聞き返した。だが美香ちゃんから帰ってきた言葉はもっと驚くことだった。
「・・・好きだから、優ちゃんが美香に希望する事は我慢しようと思ったけれども、美香優ちゃんの大人の事情まで受け止められない。」
私は頭を抱える。
「・・・・ええと、それは、中野が自分の欲望の処理を、美香ちゃんに求めてるってこと?」
美香ちゃんが目に涙を浮かべて、うなずいた。
・・・・なんでそうなってるんだろう???・・・・
・・・・・・・まあそれが全くないとは言わないが・・・なんでそこだけ?・・・・
「・・・美香ちゃん、中野君は美香ちゃんになんていってるのかな?」
美香ちゃんが、言いにくそうに、真っ赤になりながら答えてくれた。
「妹じゃない、抱きしめたい、・・・それと、美香を押し倒したり、キスしたり、・・いろんなとこ触ったり。」
「・・・美香ちゃんは、・・・それは・・・え~~と、愛情表現だとは思わない?」
きょとんとした顔をして、答えてくれた。
「だって陽子ちゃん美香中学生だよ?優ちゃんとつりあわないよ?それに美香、優ちゃんにそんなこと言われたことないもの・・。」
・・・・・頭が痛くなってきた・・・・
誤解する美香ちゃんも悪いが、誤解させる中野はもっと悪い、馬鹿じゃなかろうか?
さて、どうしようと思うが、中野君がまだ伝えていない言葉を、私が言うわけにも行かず・・・・。
暫く考えていたが、思い当たりに、美香ちゃんを寝室に誘った。
「いいもの見せてあげる」
陽子ちゃんが、美香の相談の内容に呆れた顔をした。
やっぱり美香が我慢するべきなんだろうか?
少し悩んだ顔をした後に、いいもの見せてあげると、寝室に誘われた・・・
・・・・なんだろう・・・・・・
陽子ちゃんは、ベッドの頭元にある本棚から、本を取り出してその後ろから、何か取り出した。
・・・・アルバム?・・・・・・
嬉しそうな顔をして、その5冊を和室の机に持っていってわたしを手招きする。
陽子ちゃんに促されてアルバムを開いた・・・私・・・?
「この間、みんなで泊めて貰った時に慌てて隠すし何かと思って、こっそり見たのよ。」
・・・陽子ちゃんそれは、ある意味犯罪です・・・・
「まあ、これを見たら、中野君の気持ちがわかると思うけれども?」
次々と開くページに、私の知ってる私、見たことのない私、寝顔、そして優ちゃんの横で笑ってる私。
何でこんなに沢山。
「ある意味、マニアックな一品だけれども?彼があなたを見つめだしたのは、最近始まったわけではない見たいよ?」
”美香ちゃんの気持ちはどうなのかな?”
次々と出てくる、幼い時の私から、ごく最近の私まで、
「・・・あ、これ、陽子ちゃんの結婚式の時。」
優ちゃんにプレゼントしてもらった、青いドレス。
優ちゃんが、マジックで書き込みをしてた・・・
”美香の花嫁姿いつ見られるのかな?”
・・・・ユウチャン、ドウイウ、イミナノ・・・・・・・・・
どう思った?・・と陽子ちゃんに聞かれて思わず答えた。
「・・・シスコン・・?」
突然、陽子ちゃんにほっぺたを両手でつままれた。
「み~~か~~ちゃ~~~~~~ん」
引きつっている笑顔が、妙に怖い・・・・。
「私の気持ちと浩平さんの気持ちは分かってくれたのに、中野君の気持ちをスルーするのは、わざとなの?狙ってるの?本当は好きでないの?」
私は思いっきり首を振った。
「だって陽子ちゃん、美香、14だよ?大人な優ちゃんとつりあわないよ?」
陽子ちゃんは首を振って聞いた。
「・・・美香ちゃんは、中野君のどこが好きなの?」
「頼れるところ?大人なところ?落ち着いたところ?」
陽子ちゃんの質問に私は笑う。
「陽子ちゃん、優ちゃんは私よりも年上だけれども、すぐにすねるし、甘えるし、子供だし、意地っ張りだし、素直じゃないし・・・。」
私の台詞に陽子ちゃんが笑った。
「じゃあどこがすきなの?」
陽子ちゃんの言葉に考える。
「強いて言えば、優ちゃんだから?」
陽子ちゃんは、美香の顔を見て言った。
「美香ちゃんに年のこだわりがないのに、どうして、中野君はあると思うの?」
私は陽子ちゃんの顔を思わず見つめた。




