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昨日見た夢  作者: 清水澄
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その81

柳は美香と正門前で落ち合った。

久しぶりのその笑顔と、少し見ないうちに大人びた様子に、何があったのだろうかと思う。

美香が歩き出すのを見て柳が声をかけた。

「・・・中野君の顔、見てかないの?」


柳の提案に少し肩を震わせて、柳の顔を不安そうに見る。


「・・・まあ、最近はよく帰っているようだし、わざわざ合いに行く事もないか?」

美香はうつむいて下を見たままだまっていた。


柳はそんな美香の様子を見て、彼女を軽く抱きしめながら言った。

「・・買い物行こうか?」


美香のうなずく様子を見ながら、美香に気づかれないよう思わずため息をついた。




 救急で機械類の点検をしながら、柳の言った言葉を考える。

・・・私は美香ちゃんが、いやと言うものは強要しない。・・・・・


美香は僕の行動をどう思っているんだろうか?

でももう後にも引けない、いまさらなかった事になんてできない。


機材の前でぼっとしてたら、槇原さんに突然声をかけられた。

「・・・中野?今日は帰らないのか・・?」


槇原さんはいつ来たんだろう、気がつかなかった。


 僕は、今まで点検してた機材をみてる振りをしながら、槇原さんに返事をした。

「・・・今日は・・・柳に取られました・・・」


槇原さんは”ああ・・・・と言う顔をして、僕に返した。

「・・・でも誘ってきたのは、美香ちゃんだぞ?しかも本当は明日と言ったのを、陽子がお前が怒るからと、今日にしたんだぞ?」


・・・・なんでそんな言い訳をあなたがするんですか・・・・?


 槇原さんの言い方に僕は腹が立った。

「・・僕はそんなに心が狭いですか・・・?」


むっとした僕の口調に、槇原さんが恐る恐ると言った感じで返してくる。

「・・・心が狭いとは思わんが、余裕はなさそうに見えるな?」


・・余裕?そんなものあるわけがない!!

学ばないといけない事が山ほどあって時間がないのに、美香の気持ちがわからない・・・美香を他の奴に渡さないように接点を持つには僕の時間は少なすぎる。

逢うたびにどんどん綺麗になっていく彼女を、一時でも他の奴には渡したくない。


 黙って機材を再び点検しはじめた僕を見ながら、槇原さんはため息をついた。

「・・・まあ、お前の気持ちもわかるよ?」

「陽子は美香ちゃんを取ると思うが、俺は何があっても、おまえの味方だよ・・・。

せいてはことを仕損じる・・・ぞ?」


槇原さんはため息をつきつつ、医局へと移動した。




陽子ちゃんのマンションに近い大型スーパーで、食材を買った。

「・・浩平さんつくねが好きだし、つくねとか、鳥団子とかの作り方教え欲しい。」


 陽子ちゃんのリクエストに、レンコンのはさみ揚げ、しいたけの詰め物、などのバリエーションを伝えた。

「保存利くものは今日まとめて作って、冷凍できる?」


陽子ちゃんの台詞に、私は頭の中で、簡単にできてなおかつ豪華に見えるものを考える。

「・・・そもそも、つみれを大量に作って小分けしとけば良いと思う。」

「鳥が好きなら、蒸し鶏を朝作って、冷ましておけば、バンバンジーやにサラダになるし・・・」


私が言うと、陽子ちゃんがものすごく嬉しそうな顔をした。

「新婚だって言うのに、食生活が貧しくて、本当に悪いと思ってたの・・美香ちゃん大好き。」


陽子ちゃんの笑顔を見てると、自分も優ちゃんに喜んでもらうのが嬉しくて料理を覚えた頃の事を思い出す。

「ちょっと季節は違うけれど、鍋焼きうどん用の器を使って一人分で作ったら、簡単なのに豪華に見えるよ?」


陽子ちゃんが抱きついてきた。

「ホント、美香ちゃん有り難う。すべて教えて。」

にこにこ笑ってマッキーの喜ぶ顔が見たいと話す、陽子ちゃんを見てたら、優ちゃんに逢いたくなってきた。


そういえば、優ちゃんにはじめて作ったのはつみれの入った鍋焼きうどんだった。

今日は、家に帰るんだろうか?

やっぱり顔ぐらい覗けばよかったかもしれない。


「・・陽子ちゃん?優ちゃんちにも一度寄っても良い?」

私のお願いに、陽子ちゃんは笑ってうなずく。


「何か作ってあげるの?」

陽子ちゃんに聞かれて顔が上げられなかった。


「毎週帰ってるし、土日の分はいらないかもしれないけれど・・今日帰ったら、食べるものがあるようにしてあげたい・・・・。」


私のいった言葉に、陽子ちゃんは少し笑って、その気持ちわかるわ・・。と言う。


・・そうだ、陽子ちゃんの、マッキーに対する気持ちと、この気持ちは一緒なのだろう・・



 優ちゃんの部屋に久しぶりに入った。

 きちんと片付いている。和室とキッチンを見ると、帰ってないのかとも思う。

 洗濯物を見ても、置いていない・・・。


・・・・着替えを持って、病院に泊まっている・・・?


「・・あ~~あ・・中野君の悪い癖ね、また、病院で生活してる。」

思わず陽子ちゃんの顔を見た、私の顔を覗き込んで”知らなかった?”と聞いた。

私が首を振ると、陽子ちゃんは教えてくれた。


「・・下着とかは、学生用のコインランドリーで洗濯して、着替えは使い捨ての病院用のもの。シャワーは仮眠室にあるし・・。一応生活はできるわよ?」

・・そういえば、布のような紙でできた緑の服をよく着てた・・。


「食事は?」


私の質問に陽子ちゃんは簡単に答えた。

「コンビニ、院内食堂、食べない、選択肢は沢山あるわ。」


「・・・なんで病院に泊まるの?」

私の素朴な疑問に、陽子ちゃんが淡々と答えた。


「・・・まあ、かえっても、仕方がないというか・・・。それよりも、多分土日をあけるために時間を有効活用してるって言うか・・?」


陽子ちゃんを見ながらもう一度聞いた。

「・・でも優ちゃん、今は、落ち着いてるからって、言ってたよ?」


「・・・・たしかにね、だって、夜をつぶすだけで、土日開けられてるもの。」


私は陽子ちゃんに聞いてみた。

「何で、そこまでして急に家に帰ってくるようになったの?」


陽子ちゃんはため息をつきながら、答えてくれた。

「・・・・・・その必要が、あると思ったからでしょうね?」


陽子ちゃんの答えになってるような、なっていないような返答に・・・・・。


・・・ユウチャン、ミカ、ドウオモエバイイノ?・・・・・





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