その68
僕が、ベッドの上で父の言葉を反芻している時に、美香が僕の部屋にやってきた。
「優ちゃん?」
僕は、ベッドの上でうつぶせたまま顔も上げずに返事をした。
「・・・なに?勝手に入ってくるなってこの間約束したよね。・・父さんも嫌がると思うよ?」
不機嫌を隠さない僕の言葉に、ドアの前で美香が固まりながら言った。
「写真もらう約束してるって言ったら、叔父さんが部屋にいるから行ったら良いよ・・・って言ったから・・・。」
僕と美香を二人きりにしたくないんじゃなかったのか?父の行動に疑問を抱きつつ、僕は美香に顔だけ向けて、ベッドの横のかばんを見て言った。
「柳から預かった追加の写真ならそこにあるよ。」
美香はまだ入り口でためらっている。
僕はもう一度、体ごと横に向けてかばんを指差していった。
「・・自分でとって、持って行ってリビングで見て。」
美香はまだためらっている、仕方なく僕は起き上がり、かばんを引き寄せて中から写真の入った封筒を出して、美香に差し出した。
・・だけれども、美香は何故かそこから動かず、受け取りに来ようとしない。
「・・・みか?いらないの?」
僕が苛立ちを交えた口調で彼女に話しかけると、彼女はためらいがちに言った。
「・・優ちゃん、叔父さんと喧嘩したの?」
僕は返事をせずに、美香に封筒を差し出した。
美香はやはり動かず、僕にもう一度言う。
「・・・ごめん、美香のせいだ・・・。」
何の事だろう?
僕の怪訝な顔に、美香が続けた。
「陽子ちゃんが、アレルギーの話言っちゃ駄目って言ったのに、私がおばさんに相談したら、おばさんが叔父さんに言って・・・・」
僕はため息をつきつつ美香に伝えた。
「・・・・美香・・・・あれはアレルギーじゃない。」
僕が言い終わる前に美香が言葉をつなげた。
「・・知ってる・・・」
僕は思わず美香の顔を見た。
「キスマークだよね・・・」
美香がこちらを見て、泣きそうな顔でそう言った。
僕はそんな美香をじっと見つめる事しかできなかった。
・・・ソウダ、ゴマカセルハズナイジャナイカ・・・・・
読んでくださってありがとうございます。
清水 澄 拝




