その63
毎日があっという間に過ぎてゆく。柳と槇原さんの式が近づいた。
美香は僕がプレゼントした、ドレスをとても喜んでくれて・・・
そのドレスを着た美香が見られない事が残念だと思ったが、角野先生が、僕に日直だけで、2次会に間に合うように帰れといってくださって・・僕はそのお言葉に甘えさせていただく事にした。
式の当日、救急の待機室にいる僕に。同期の医師が不思議そうに聞いた。
「お前どうしてここにいるんだ?」
「・・なんで?」怪訝そうに聞き返す僕に続けて言った。
「だって、槇原先生の結婚式だろう?」
・・ああ・・と僕は返した。
「二次会には行く約束したよ?」
呆れた顔で彼は言った。
「何で!?教授陣が参加する絶好のチャンスだろう?顔つなぎになるのに勿体無い」
彼の言葉に、僕は続けた。
「・・・槇原先生や、上級医がいないって事は、救急は誰がまわすんだ?緊急OPEが入ったら誰がするんだ?」
僕の言葉に、もう一度彼が呆れた。
「僕らひよこが残ってたって、一緒だろう?」
「・・いや、俺の手伝いはしてもらえるな。」
後ろからの角野先生の声に、彼はびっくりする。
「槇原に、救急当直押し付けられた、迷惑な話だ。」
あんな若い嫁さんもらいやがって!!と続いたその言葉に僕は笑った。
「先生は、愛妻家だって伺っておりますが?」
角野先生は、少し考えて僕に言った。
「そうだな、少しとうは立ってるが、この世で一番良い女だよ?」
僕は、笑って返した。
「それ、槇原さんに言ったら、きっと一番は自分の奥さんだって言いますよ?」
・・・あいつも馬鹿だから・・・角野先生は笑った。
・・・僕は心の中で考える、いや、一番は、やっぱり美香だ・・・・
「遅くなってすみません」
僕は槇原さんの結婚式の、二次会の会場についた。
槇原さんに遅れたことのお詫びを告げて披露宴から参加してるはずの美香を探した。
槇原夫人がそんな僕を見て、笑いながら、会場の隅の集団を指す。
「あの中に美香ちゃんがいるわ、逢って驚かないでね・・?」
意味深な彼女の言葉になんだろうと思う。
僕はその集団に近づいた。
真ん中に美香らしき女の子がいた。
いろんな奴らに話しかけられて、困惑しているようだ。
・・・なんで美香は、あんなに男に囲まれてるんだ!?
僕は美香に近づいて驚いた、・・・化粧をしている・・・?
「とても中学生には見えないでしょう?」
柳・・・もとい、槇原婦人が僕にささやく。
でも僕は、声がでなかった。
・・・アレハダレダロウ・・・・・・
僕は何も言わず、美香の傍によってその腕をつかむ。
「おいで。」
いきなりの僕の行動に周りにいた美香を取り巻いていた奴らが、ブーイングした。
「中野!!何してるんだ!?」
「後から来てそれはないだろう!!」
僕は周りの奴らをゆっくりと見渡した。
「・・・なにか?」
僕の様子に周りの奴らが息を呑む。美香が小さな声で、僕に言った。
「優ちゃん痛いよ・・・?」
僕は美香をつかんでいる自分の手を思わず見た。そして美香に言った。
「・・・・出よう・・」
美香を引っ張って会場を後にした。
出掛けにすれ違った槇原さんが、僕にささやいた。
「お前と、美香ちゃんに部屋を取ってるから、後で連絡しろ。」
僕は、小さくうなづいて、ドアを開けた。
そして中庭を目指した。
中庭で美香と向き合った。
「・・・優ちゃん何怒ってるの?」
僕は黙っていた。冷静になってみれば僕の怒りは美香の行動とは関係がなく・・・。
単なる嫉妬だ・・・
美香はため息をついて、続けた。
「・・・優ちゃん、妹への独占欲も程ほどにしないと・・・・」
僕は、美香をにらみつけた。
「僕は、お前の兄か・・・?」
美香が怯えた目をした。
「・・優ちゃんどうしたの?なんかへんだよ?」
もう一度美香の顔を見つめる。
この子はいったい誰だろう、化粧をした美香はとても子供には見えず、僕が想像していた、大人になった美香よりももっと魅力的だった。
僕は、美香の頬を両手で包み込み、美香の目を見つめた・・。
「・・・僕は、お前の兄か・・・?」
僕の再度の問いに、美香は困ったような顔をした。
僕は、美香の顔に僕の顔を近づけてささやいた。
「・・僕は、お前を妹だと思った事は一度もない。」
そう言って、僕はゆっくりと美香に口付けた。




