その61
お読みいただきありがとうございます。
集合場所は、柳の店だった・・。
またここですか・・・僕のあらかさまに嫌がっている様子に、柳が何かご不満でも?という。
・・・・はい、どれもこれも、不満だらけです。美香とどうして二人きりでないんですか・・・
そんな僕に、美香も不機嫌になる。
「・・・優ちゃん大人気ない・・・」
はい、はい、僕はどうせ子供ですよ・・・?
柳がそんな僕と美香を見比べて、苦笑いする。
「美香ちゃん、早々にケーキ切って、お開きにする?」
「優ちゃん、いい加減にしないと、美香もう優ちゃんにご飯作んないよ?」
それは困ると、慌てて・・せっかく来たのだからと、柳に言ってみた。
柳がその会話を聞きながら、あなた本当に尻にしかれてるわね・・・と呟いた。
・・・・五月蠅いほっといてください・・・
槇原さんが到着し、美香が手作りしてくれたというケーキをみんなで囲む。
美香が、槇原さんと柳に二人で切り分けるように頼むと、槇原さんが柳に練習するか?とささやく。
ナイフがないので入ってきた店員にナイフを頼んだが・・・それが、あの店長だった。
美香がさすケーキの文字に彼が固まった。
「・・誰と誰が、結婚するんですか?」
「僕らだけれども?」
槇原さんが柳を抱き寄せていった。
柳が微笑みながら、そいつに追い討ちをかけた。
「なんかばたばたと決まって、報告するのを忘れてた。ごめんね、実は7月に結婚するのよ・・彼と。」
見る見る間に蒼白になっていく彼の顔を見ながら、柳の言葉をいつ止めようかと思う。
でも照れ隠しでマシンガンのように喋る柳を止めたのは美香だった。
僕に美香は言った。
「優ちゃん、ナイフ持ってきてもらうのも悪いし、優ちゃんがもらってきて?」
僕は彼を促して、部屋を出た。
「陽子さんの相手は、お前じゃなかったのか?」
彼は搾り出すように僕に言った。
「お前だったら、ほかに対象がありそうだと思って油断してたよ・・あいつの年は?」
もうすぐ、40・・と僕が答えると、彼が顔をゆがめて笑いながら、僕に打ち明け話を始めた。
「・・陽子さんを好きになったのが、高校の時。でも彼女が小学生だからと、待っていた。」
僕は黙って聞いた。
「大人になるまでまとうと思って、見守っていたら何時の間にか僕の位置づけは優しいお兄さんだ。」
言葉が出ない。
「その位置づけを壊すのが怖くて、嫌われたくなくて、チャンスを待っていたら・・・まさかそんな・・・俺よりずっと年上・・・」
言葉が出なかった。僕は間抜けにもそいつにかけた言葉は。
「・・・ナイフ・・貸してもらえるか?」
だった。そいつは、たった今僕の存在に気づいたかのように・・ああ・・といった後。
・・・・ナイフを貸してくれた・・・・・
僕は、ケーキを切る、槇原さんと柳をぼっと見ていた。
彼の言葉が、頭をぐるぐる回っていた。
”優しい兄の位置づけを壊したくなくて・・・嫌われたくなくて、チャンスを待っていたのに・・・”
僕はその言葉を、僕の今の立場と重ねてしまった。
美香が眠たそうにしたために、その店を出た。
そして向かった宿泊先は・・・僕のアパートだった。
美香をベッドに寝かして。
酔いつぶれた、槇原さんを和室に寝かせて。
ダイニングで、柳とグラスを傾ける。
柳が、時々槇原さんのほうを気にしていた。
僕はそんな柳のほうを見ながら、素朴な、でも聞いておきたい質問をぶつけた。
「・・・あそこの店長とは、いつからの付き合いなんだ?」
柳は僕の顔を見て、びっくりし・・・そして言った。
「彼が高校1年の時に、夏休みのバイトできてくれて、それからだから・・・14年?」
「・・・お前その時いくつだ?」
柳が考えながら答えた、
「・・・う~~ん、小学校5ねんだったかなぁ?・・なんで?」
・・・なんでってお前・・・・
僕は呆れながら、聞いた。
「・・・・あいつの気持ちに気づいてなかったのか?」
柳が笑いながら、ゆっくりと答えた。
「実は、高校までは好きだったんだ・・でも、ずっと一線引かれてたから、私もその気持ちを隠してたら、その内自分でも兄に対しての気持ちか、異性への気持ちかわからなくなって・・・・・」
僕は柳の思いと美香の思いを重ねながら聞いた。
「・・もし、その時打ち明けられてたらどうした?」
柳は、考えながら、答えてくれた。
「槇原と出会う前だったら、好きになってたと思う。そして、槇原とこうなる選択肢はなかったかもしれない・・・。」
僕は彼女の言葉の続きを待つ。
「でも、今は槇原とであったから、槇原のいない生活は考えられない。彼を失いたくない。」
そして彼女は言った。
「待ちすぎてると、とんびに油揚げ攫われるわよ?」
私も寝るね・・・・そういって彼女は美香の寝ている寝室へ向かう。
僕の美香の中での僕の位置づけは今どのあたりなんだろう・・・・・。
・・・何とかしないといけないかもしれない・・・・




