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昨日見た夢  作者: 清水澄
57/185

その57

 翌日、同期に聞かれた。

「中野、お前槇原さんの助手をするって本当か?」


・・・・何の事だろう、雑用係なら確かにさせられてるが・・・・


怪訝な顔ををする僕に、彼は続ける。

「外科の角野先生のお嬢さんと結婚するんだったら、救急より外科のほうが良いだろうに。槇原さんが救急の教授を引き受ける条件にお前を下につけろって言ったんだってな?お前も振り回されて大変だな?」


・・・はぁ!?・・・・  


僕のあっけに取られた、表情に、そいつは呆れたように、とぼけるなよ・・・と言う。


「今、救急の教授に槇原さんが就任して、そのサポートに何で2年目の研修医が就くんだって噂ですごいことなってるぞ?」


・・・・なんで僕が知らないうちにそんなことになってるんだ?・・・・・


「おまえ、引く手あまただな。羨ましいよ。」


僕は、そいつの話を最後まで聞かずに、救急へ走っていた。


その事件を起こしたであろう当事者は婚約者と、昼ごはんを食べていた。


「どういうことですか?ぼくは救急にいくとは言ったけれどそれ以外の話は聞いていない。」


僕の剣幕にも驚かず、お茶を飲みながら、彼は言った。

「結構耳に入るの早かったな?」


優雅におにぎりをかじる彼を僕は睨んだ。

槇原さんは僕の表情など全く気にせずに淡々と続けた。


「・・・しょうがないだろう?ほかに良い方法を思いつかなかったんだから・・・。」

「・・・お前のすることは今までと同じ、名前が変わっただけ、でも俺なんか雑用増えまくりだぞ・・?」

  

  僕は槇原さんに言った、

「でも前代未聞でしょう?前期研修医ですよ僕は? 何考えてるんですか!?」

 

槇原さんがため息をつく、

「・・・お前が巻き込まれたのが、子供の喧嘩だったら、俺もほっといたんだけれどなぁ・・・」


食べていたから揚げを、柳に見せて、”陽子これ生だ・・・”と呟く。柳が慌てて受け取って、どこかでレンジにかけてくると走っていった。


「・・・柳は、料理下手なんですか?」


槇原さんは笑いながら、

「・・・お湯は沸かせるって言ってたぞ?・・美香ちゃんに時々教わってるらしい。から揚げは、この間教わったメニューらしいけれどもな・・?」


   ・・・・お湯を沸かすのは、料理とは言わないと思う・・・・・


僕の呆れた顔を見て、笑いながら僕に言った。

  

「教授が、体調が悪いのは知ってるだろう?」

僕は黙って聞く。


「だいぶ前から、次頼むって言われてたんだ。でも断っていた。俺は役職って柄でもないし、今いる準教授の誰かが引き受けるべきだと思ってな?」


「無理でしょう・・今の準教授方は、名誉欲ばかりの馬鹿ばかりだし。実質救急回してるのはあなたじゃないですか?」


槇原さんは返事をしない。


「あなたが教授をする事は妥当だとは思います。でもそれと、僕があなたのサポートをするって言うのは違うでしょう?」


「・・・お前なぁ・・・なんで俺がしたくもない仕事引き受けたと思う?」


槇原さんはもう一度お茶をすすった。


「・・・お前が巻き込まれたのが子供の喧嘩だったら、俺は傍観していたよ?あんまり角野準教授、甘く見ないほうが良いぞ。」


息を切らして戻ってきた柳を抱きしめて、ありがとうとお礼を言って、から揚げをおいしそうに食べる、槇原さんを見た。


”一つどうだ?”と言われて、味見に食べた。


・・・・あまり美味しくない・・・・


僕の複雑そうな顔を見て、槇原さんが眼光を飛ばす。

何も言わず、おにぎりを一つ食べた。


・・・・からい・・・・・・・


両方を一緒に食べたら良いかもしれない・・・。但し双方の立場は逆転しているが・・。


意見を聞きたそうにしている、柳の視線を何気にスルーして、槇原さんに聞いた。


「・・・僕の立場は、雑用係だって明言してくださいよ?」


黙って返事をしない槇原さんを見て溜息が出る。

思い出したように彼は言った。


「そうだ、お前に娘を何とかする策略を考えろって言ってたのどうなった?」


僕は、すっかり忘れていた事を思い出した。

「僕は、腹黒くないので思い浮かびませんでした。」

呆れた顔で槇原さんが呟く。



「・・・・・忘れてたんだろう・・」


・・・・・・そうとも言います・・・・・・・・



「・・・・もしこの縁談が美香ちゃんあてだったら、お前どうした・・?」


「ありとあらゆる手を使って、叩き潰します!!!」


即答した僕に、呆れた目を向けながら、・・・そうだった、お前のその悪知恵は、美香ちゃんがらみ限定だったな?・・と呟く。


何で自分の事にはそう無頓着なんだ?・・とも言った。



 槇原さんは、時々何気に失礼だと思う。

 僕が美香を他の誰にも渡したくないのは美香が僕のものだからだ。

 僕以外の人間が美香に触れる事は許されないことだ。


 それに僕は無頓着なのではなく、無駄な事に余分なエネルギーは使いたくないだけだ。


・・・・・何でわからないんだろう、全然違うのに・・・・。




どこをどう突っ込んだら良いのやら・・・・。


清水 澄 拝

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