その56
読んで頂いてありがとうございます。
お気に入り登録ありがとうございます。
清水澄 拝
ある日、僕は柳に呼ばれた。
「中野君、話がある。」
僕は、昼休みに救急で、槇原さんと共に待っている柳の元へ向かった。
槇原さんは渋い顔をして僕に言った。
「お前この間、角野先生と食事に行っただろう。」
僕は、昼のおにぎりをかじりながら、槇原さんの言葉にうなずく。
柳がそんな僕の、お弁当のおかずを見て、”あ!美香ちゃんののから揚げ♪”と勝手にさらう。
止めろ僕のだ!!睨みつけて、お弁当を隠す僕を見て、槇原さんはため息をつく。
「そのお弁当を食べられる、幸せがいつまで続くんだろうな・・・・。」
・・・何の事だ・・・・
「これは美香が先週来た時に、一週間分おにぎりと共に冷凍してくれたので、あと、4日分は・・・・」
「・・誰がそんなこと言ってるんだ!!??お前はあほか!!」
槇原さんの剣幕に、僕はおにぎりをのどに詰め掛けた。
慌てた柳が、背中をたたき、お茶をくれた。
「・・・もう、気をつけてよ!!こんな所でハイムリッヒの実習なんてしたくないわ。」
柳にお礼を言って、僕は槇原さんに言った。
「何を怒ってるんですか?」
槇原さんは苦虫を噛み潰したような顔で僕に言う。
「角野先生が、お前は自分の娘の婚約者で、お前を外科に引き入れると言ってる。」
・・・・はい?・・・
「・・・その話だったら、断りましたよ?」
僕はあっけに取られて言った。
「・・・お前に、柳以外の、女の影が見えないから、何とかなると思ってるんだろう。」
・・・・はぁ・・?・・・
「・・・そんなのなんともなるわけないでしょう!!」
槇原さんは、ため息をついた。
「・・・おまえなぁ・・・一度断られたからって、引き下がるような人なら、こんな所で、準教なんてしてないって・・・。」
僕は憮然と答えた、
「でも無理なものは、無理なんで。」
槇原さんが頭を抱えて、呆れたように言った。
「・・・子供の喧嘩やわがままと違うんだぞ・・?」
僕は怒った。
「同じでしょう!!4っつの子供だって、駄目と嫌はわかります。子供よりもたちが悪いじゃあないですか。僕は断りました。」
槇原さんは、顔をあげて言った、
「そうだよ、子供じゃなくて、権力を持ってるから性質が悪いんだよ。」
そういって暫く何か考えた後、”お前本当に外科に行く気はないんだな?”と僕に聞いて、諦めたようにPHSで誰かと話をした。
「・・・はい、はい、先生が先日言われてたお話、前向きに考えてみようと思って、お願いできますか?」
・・・誰と話してるんだろう・・・?
「そうですね、一度時間を作って具体的なお話を伺います。」
PHSを切り、諦めたようにため息をつく。そして、”くそっ!!この忙しいのに雑用を増やしやがって・・と僕のほうを向いて毒ずく。
僕が、怪訝な顔をして槇原さんを見ると、槇原さんが言った。
「・・・外科への引き抜きは俺が何とかしてやる。お前救急に来るんだな?」
僕は、不思議そうに答える。
「そのつもりですが・・・・?」
「娘との縁談は、協力はしてやるから、お前のその腹黒い策略で何とかしろ。」
・・・・腹黒いですか?僕?・・・
僕の不服そうな顔に少し笑いこの貸しは高いぞ・・。と言う。
・・・・何を貸してくれたというんだ?・・・
気がつくと柳が僕のおにぎりと、おかずを何時の間にか平らげていた。
「・・・・おまえっ!!」
にっこり笑い、利子よ・・と言う。
・・・何がだ!!・・・・
槇原さんが、諦めたような表情で、明日になったらわかるよ・・・。と言う。
そして、柳を抱き寄せて、キスをおとし今夜は帰れないと思う、今から教授のところに行くから、昼は一人で食べろ・・。といって去っていった。
・・・柳の昼は、もう充分食べたと思う・・・・
僕が憮然として、何の利子だ?と聞くと、笑って彼女は言った。
「誰がなんと言っても、ずっと嫌がって逃げてた仕事を、あなたのために引き受けた事に対する、りし?」
・・・・意味がわからない・・・
笑ってもう一度続ける。
「あっちが、権力使って引き抜くんだったら、こっとはもっと上を行けば良いのよ?」
・・・ますます意味がわからない・・・・
僕の表情に柳は笑って、”明日わかるわ・・・”とまた言った。
・・・・とりあえず、食べ損ねたお昼を何とかしよう。・・・・
僕はそう考えた。
「カフェ行くけど、付き合う?」
「・・・また噂になるわよ・・」
僕は笑って続けた。
「美香は知ってるから良い。そんなことで友達減らさないといけない?」
僕の問いに、柳は笑う。
「じゃあ、利子の追加ってことで・・。」
「・・・・好きにしてください・・・」
僕らは二人でカフェに向かう。
・・・でも明日わかる事ってなんだろう・・・・
ハイムリッヒ法
大人、小児の窒息の解除の一般的な方法です。
窒息者の胸腔及び腹腔内圧をあげる事によって、気道異物を除去する方法です。
清水 澄 拝




