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昨日見た夢  作者: 清水澄
53/185

その53

 外来患者と職員の注目の的になってる事にやがて気づいた二人は、早々にその場を後にした。


 人の少ない中庭に行き、二人で目を合わせて笑った。


 しかしどことなくぎこちない様子の槇原に柳が怪訝な顔を向けた。


いや・・と槇原は言いにくそうに口を開いた。

 「・・・中野のことが好きじゃなかったのか?」


柳は少し笑いながら言った。

 「好きだったし、欲しいとも思ったわ。」


そして、でもね・・・と続けた。

 「結局いつも、一番欲しいものは手に入らないんだって思ってたの。だから諦めるのが上手になったんだって。」


槇原が、少し顔をゆがめて柳の告白を聞いた。

柳はそんな槇原を見つめて、そして笑って言った。


「大事なのは、欲しいものじゃなくて、必要なものだっって気がついたの。」


槇原は、柳の顔を見つめる。


「中野君に振り向いてもらえないからって、その寂しさを埋めるために、救急にあなたの顔を見に行ってたの。」


槇原の頬を自分の両手で引き寄せながら、柳は続けた。

「その内に、寂しさを紛らわす事が目的でなく、あなたに合いに行く事が目的になってるのにきずいてなかったの。」


槇原が、目を見開いて何か言いたげにしていた。


「美香ちゃんと話してて、自分が欲しいものに目を奪われて、自分が必要としてるものに目を向けてない事に気づいたの。」


柳は槇原のおでこを自分のにくっつけて続けた。

「それに気がついて、考えてみたら、欲しいものでなくて、必要なものはいつも手に入れていたわ。」


ゆっくりと陽子は、槇原の唇に自分の唇を近づけてささやく。

「好きになってくれてありがとう。あなたを失いたくない。」


・・・そして、口付けた・・・・・・・




美香を送って、仕事を片付けて、僕は救急によった。

槇原さんに事の顛末を聞こうとしたらいきなり怒られた。

「おまえなぁ!!あんなとこに置いていくなよ。」

・・・・?何の事だろう・・・・?


僕のわけがわからないといった様子に、槇原さんが続けた。

 「せめて、人員整理をするとか?恥ずかしい状況になってる事にきずかせてくれるとか?」


「・・・あんなところでプロポーズしたのは、槇原さんでしょう?」

僕は呆れながら返した。

槇原さんは、それはそうなんだがとぶつぶつ言いながら、でも置いてかなくても・・・とまだ言ってる。


「槇原さん、TPOって知ってますか?」

 僕の言葉に、槇原さんはしかめっ面をした。


「・・・知ってる。」


僕は、追い討ちをかける。

 「その常識と照らし合わせて、病院玄関はプロポーズにふさわしい場所と思えますか?」


槇原さんが唸った。


僕は、ますますの追い討ちをかける。


「まあ、柳に嫌われたくないのなら、結婚式場はちゃんとした場所を選んでくださいよ?」


唸りながら、わかった、と呟く槇原さんを見てたら笑えて来た。



       ・・・・しあわせになってください。・・・・・・・








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