その52
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清水澄 拜
美香の退院手続きを済ませて、朝食を食べるために美香の部屋に戻った。
おいしそうな、トーストのにおいとコーヒーのにおいがする。柳もいた。
入るなり空腹の我慢が出来ず、美香に聞いた。
「美香!!僕の分は!?」
黙って、トースターから、ピザトーストを出した美香からその皿を受け取って、コーヒーは?と聞いたら、柳が呆れた顔をした。
・・・・何か文句があるんだろうか?・・・・・
「美香ちゃん、色々ありがとう・・。」
柳の、含みのある発言に怪訝な表情で美香を見た。
美香は僕の顔を見て、にっこり笑い、”優ちゃんゆで卵も食べる?”と聞く。
食べる、と答えた僕に美香は卵をくれた、なんだか、柳の言葉の意味を聞こうとしたのに、食べ物でごまかされた気がするが、目の前でにこにこ笑う美香と、美味しい朝食にまあ良いか・・と思う。
・・・・・明日には、美香は帰ってしまうのか、これからご飯どうしよう・・・・・・
翌日、美香は午前中に退院する事になった。
見送りに正面玄関まで行った。聞きつけた柳も来ていた。
迎えに来た、叔父と僕の父に荷物を持ってもらって、美香は始終にこにこしている。
少し悔しかった。
「・・・美香は僕とはなれるの、悲しくないんだ・・・。」
すねたように僕が言うと、美香が呆れて返す。
「・・・だって、いつまでも入院なんて、退屈だし?また優ちゃんのアパートに通うよ?」
・・・でも、美香の寝ている顔を堪能したり、毎朝毎晩顔を見ることも出来ない。
美香にそういわれても膨れている僕に美香は呆れた。
「優ちゃん子供みたい・・・」
「・・・悪かったですね・・・」
空気の読めない、僕の父が美香を抱きしめて言う。
「美香!!!!良かった!!!生きて帰ってきてくれて!!!」
「・・・・それはどういう意味でしょうか?」
僕が低い声で言うと、父は続ける。
「医者になりたての研修医に任せて非常に不安だったって事だよ。」
「・・・僕の上には、槇原先生という大変年季の入った指導医がついてるんですが・・」
・・・ほぼ○投げでしたけれどもね・・・と心の中で続けた・・・
「・・・”大変年季”・・は余計だな・・・。」
後ろからいきなり声がした。
・・・・来なくて良いのに来た。僕はまだあなたの顔は見たくない・・・・・
僕がしかめっ面を向けると、彼は笑って、美香のほうを向いていった。
「次回受診の約束は出来てるよね。」
美香はにっこり笑ってはいと言う。
美香!!そんな奴に笑わなくて良い。
「美香ちゃんにも証人になってなってもらおうと思って、間に合ってよかったよ。」
また訳の分からないことを言い始めた槇原さんに、僕らは怪訝な顔を向けた。
槇原さんはそんな僕らを無視して、柳に向き合って言った。
「柳 陽子さん」
柳は突然自分に向けられた、槇原さんの言葉に驚きつつ、なんですか?と聞く。
槇原さんは続けた。
「僕はあなたが好きです。結婚を前提に付き合ってください。」
一瞬、僕らの時間は止まってしまった・・。
槇原さん、それってここで、この場で、言う事ですか?
一番最初に時を刻み始めたのは柳だった。
「私で、良いんですか?」
槇原さんは、自分の言葉に柳からそんな返事がもらえるとは思ってなかったらしく、全く彼女の話を聞かず、”返事は今すぐでなくても・・・”といいかけて、柳の言葉に、凍りついた。
「・・・・・えっ?・・・」
「・・自分の気持ちに、13歳の子供に諭されないと解らないような私で良いんですか?」
柳の言葉に槇原さんは再び固まった・・。そして言った。
「・・・えっと、すみません、ちょっと意味が解らないので・・・」
うろたえる槇原さんに呆れながら、僕は耳打ちした。
「・・ここは抱きしめるところでしょう、日本語わかりますか?」
ものすごく情けない顔をして、槇原さんは僕の顔を見る。
さっきの勢いはどこに行ったんだろう?呆れてため息をついた僕に美香がささやいた。
「優ちゃん、駐車場行こう。」
僕と、僕達の父親を促し、美香は先に歩き出した。
・・・え?、あの二人放っておくの・・・?
僕に、美香が二人を見るように合図を送った。
見ると槇原さんに、柳が抱きついていた。
そうだよな・・・後は二人の問題だ・・・。
美香の後ろを歩き始めた僕に美香が笑いながら言う。
「優ちゃん、ちょっと勿体無かったとか思わない?」
僕は笑いながら美香の腰に手を回し抱き寄せて言った。
「・・そういったら、美香は慰めてくれる・・?」
僕の言葉に美香は笑いながら、言った。
「優ちゃんが本当に、本気だったら、あそこに割り込んでるでしょう?」
・・・はい、そのとうりです。あれがもし美香だったらあそこにいたるまでに何とかしてます・・・
見抜かれている僕の行動パターンに美香のほうを向いて苦笑した。
父親が僕をみて、”優希離れろ!!僕の美香に引っ付くな!!”と怒鳴っていた。
叔父が、そんな父の口をふさぎ、さっさと歩けと引っ張っていた。
僕はその様子を美香と見ながら笑っていた。
でもふと考える・・・。
・・美香が、あんなふうに僕の想いを受け止めてくれるのは、いつなんだろう・・。
・・・・誰にもはばかることなく、君を抱きしめられるように早くなりたい・・・・・
予定では・・・もうすぐだと思います・・・。
清水澄 拝




